390.ネツィアの街へ入ってみた③
遅くなってすみません。
本日より再開します。
「ポンタ!」
「うん! 分かってる!」
ユウさんの指示と同時に僕は大きくジャンプし降下しだす前のエレベーターへと飛び乗る。はははそのまま行かせるかよ。ちゃんと乗せてもらうぜ。天井を平坦な形状に設計にした事を恨むがいい。
ビー! ビー! ビー!
しかし飛び乗ったことに腹を立てた、もしくは壊れたのか、エレベーターは赤く発光し警報を周りに響かせる。だが当然無視だ。
幸いエレベーターは止まらず降りてくれている。煩いのを我慢すればこのまま安全に下までいけるだろう。
ただ、
「遅っそ・・・」
スーッと高速で上がってきた時とは打って変わって凄い遅い。時間稼ぎするなと訴えたいところだが、小突いたりして落ちるのも嫌なのでどうしようか悩む。このまま降りる方が楽できるが、このままではただの下へ動く的だ。
「走った方が早くつかない?」
「・・・やっぱり? というかそうしないと撃ち抜かれて終わりそう」
周囲にワラワラと集まってくる守護騎士達。全員が大きな宝石のようなものが先端についた杖のようなものを持っている。言われなくてもあれで魔法の弾を撃ってくるのだと容易に想像できた。回避したいが全方位をガードする術などないし、避けるにも足場がこのエレベーターしかない。なので下に降りる頃にはハチの巣確定だ。
「どうするの?」
「降りるしかないね。はぁ・・・、このポンコツがもう少し早く下りてくれればよかったのに」
「叩けば直るんじゃない? こんな感じで」
「え?」
文句を言ったのが悪かった。
ユウさんは僕から身を乗り出すと、剣でエレベーター側面を叩く。本人は軽く叩いたつもりなのだろうが、エレベーターは大きく揺れ、元の正常な青色に戻る。
「おおぅ・・・直った」
「でしょ? 困ったときは叩けばいいのよ」
何時の時代の対処法なのだろう? しかしユウさんは鼻高々なので言わないでおく。とりあえずユウさんに精密機械は合わないことだけは確かだろう。
それを裏付けるかのようにエレベーターが反応した。
「ん?」
「あ・・・」
軽い浮遊感とともにエレベーターの青い色が消えた。そして落下速度が上がった。
「ユウさん・・・」
「ワザとじゃないわよぉおお!」
ユウさんの大声とともに僕らは下へと落ちて行った。
ーーーーーーーーーー
「ん? なんか聞こえたか?」
「知らない! それよりもなまけも手伝ってよー!!」
「じゃあ中から湧いてくるやつ倒すの手伝ってくれよ!」
『アイスウォール』を通路めいっぱいに展開するココアが叫ぶ。そう言われてもこちらも内部から出てくる守護騎士達の相手で必死だ。範囲攻撃で押し返しているものの、ダメージはそれほどないので苦戦している。強いわけではないが弱くも無いので、こう物量で攻められると流石にキツイ。
今俺達がやっているのは足止めだ。
ポンタ達が潜水艇を回収する時間を少しでも稼ぐために、後続をここで止めるのが今回の作戦の役目だ。現在後ろから追って来たプレイヤーや入口を守っていた守護騎士達はココアの『アイスウォール』で入れないように止めている。
自分でもいい作戦だと思ってたのだが、内部からこうも湧いてくる量が想定外だった。あと追って来たプレイヤーが強いという点も現状の悩みの種だ。
守護騎士達だとある程度耐えてくれるであろう『アイスウォール』をあっさり破壊してくる為、思った以
上に足止めが出来ないのだ。
そして今また『アイスウォール』が中央から粉々に砕ける。
「また割られたぁ!」
「ちぃぃ! 移動するぞココア」
距離を取って再度『アイスウォール』を張り直す為に、俺は『縮地』を使って移動を始めた。
次回更新は3日後の予定です。