387.ネツィアの街に着いてみた
「魔法剣ゲットだぜー!」
なまけものは適当に戦った後、冒険者から奪った剣を天へ突き出す。しかし剣は直ぐに光となって消えた。ゲット失敗だ。
そもそもゲットなんて特殊な場合以外出来ないのでなまけものは特に悲しんだりはしない。悲しんだのはユウさんだけだ。
「消えちゃった・・・」
「いや当然だろ。何を今更」
「なまけが持った時もしかしてと思ったのに~」
「仮に消えなくてもお前にはやらんぞ。俺が使う!」
「それよかどうだった?」
「特には変わんねぇな。ちょっと魔法道具使う程度で強さは同じくらいだ。気にする程でもない」
「なら良かった」
どうやら懸念するほど厄介では無さそうだ。とはいえ魔法が使える道具は厄介だ。相手のランクによっては注意した方がよいだろうし、他にも種類があるかもしれない。
再度乗ってきたなまけものも頷きつつ、
「問題はあの魔法道具に属性があるかどうかだな・・・。今回は無かったが属性入れられると苦戦するぞ」
「属性か・・・」
「・・・2人して何でこっち見るのよ」
「言わないとダメか?」
「いらない。分かってるわよ・・・」
僕らの中でユウさんだけが極端すぎるんだよね。ココア似たようなものだけど・・・。
まぁそれは置いておいて。
「街見えてきたけどどうする? 速攻乗り込む?」
「乗り込ーー」
「様子見からだな。まず潜水艇あるか空から確認だ。とりあえず突っ込むなんて馬鹿なことするなよ? こんな広い街なんだ、迷子になって終わりだぞ」
「了解。じゃあとりあえず調べてくるからみんな降りてくれる? 多分門はあのプレイヤーが集まりだしてるあそこだろうし、開く時間見といてくれると助かる」
「分かった。時間までに戻って来いよ」
「うい」
全員を街の入口付近でおろして再度飛翔する。ここも前の港町と同じく街攻略はレイド制となっているようで、開く門の周辺にはプレイヤーが集まっていた。人数は前よりも多いが、街がそれ以上に大きいので次の門が開く時には入れるようだ。しかし時間は5分も無く、街をぐるっと旋回するだけしか出来なかった。
「あったか?」
「上から見えるところには無い。潜水艇だから海の中にあるのかも」
「となると何処かの建物内から行かなきゃならんか・・・。それっぽいところは?」
「ぱっと見でいいなら・・・」
僕は地図を見せながら可能性のある場所を指していく。
このネツィアの街を真上から見ると中心の大きな場所を基準に6方向へ通路が伸びており、その通路の先にそれぞれ区のように建物が密集している。それは今僕らが居る街の入口を除いて5か所あり、真上から見ると雪の結晶のような形をしていた。その中央部分と先端の区の部分の中心に大きな柱が海から出ていた。そしてその柱を取り囲むように船が停泊している。恐らくこの街の港なのだろう。
「あの港から察するに多分柱の中通れると思うんだよね」
「確かにな。ならそのまま海の中まで続いていてもおかしくないな」
ここからでも見える柱を見てなまけものも頷く。
「これくらいの街なら、海の中に施設とかあってもおかしくないわね。良いと思うわ」
「潜水艇はあたしが貰うけどいいよね? ね?」
「駄目と言っても取るでしょ・・・。好きにしたらいいよ」
しかしなまけものが「勝手にしたらいいよ」と言う僕に待ったをかける。
「その件で一つ問題出た」
「問題?」
「ああ。ここに居るプレイヤーの大半は潜水艇狙いなんだよ」
「・・・・・マジ?」
「マジ。他の人の話を盗み聞いた結果だ。みんな潜水艇の話してた」
「んじゃ急がないと」
基本船は早い者勝ちだ。なのでのんびり冒険者や守備騎士などを排除しながら進んでいたら他のプレイヤーに取られてしまう。そうなると潜水艇が復活するまで待たなければならない。流石に一度に1隻しかないことはないと思うが・・・どのみち数は少ないだろう。
「ああ。だから作戦立てた」
どうしようかと思った矢先、なまけものが親指を立ててニヤリと笑った。
この顔・・・ダメかもしれない。
次回更新は3日後の予定です