384.盗み聞きしてみた②
折角のチャンスだったがやってしまったものは仕方ない。気を取り直して次の相手を探す。今度は4人組、戦闘にならないように気をつけて後ろをつける。
『そういやお前ら知ってっか? 海に沈んだ商船の秘宝の話』
秘宝!? これはもしかして良さげな情報!?
『それあれだろ? 転移魔法具の入った宝箱の話、だろ? 知ってる』
『で、大量の虹色の魚がいる付近に沈んでいる、だろ? 知ってる』
『船で通ると、その波で浮き上がってくる、だろ? 知ってる』
・・・なんか既視感のある噂だな。
強制転移の転移装置。虹色の魚。浮いてくる宝箱・・・いやあの時は浮いてこなかったけどさ。そういえばあの時に場所ってこの辺だっけ? よく覚えてないけど。
まぁいいや。とりあえず最後まで聴いておこう。もしかしたら違うかもしれんし。
『先に言うなよぉ・・・』
『何言ってんだ。メイン残してやったろ?』
『! 確かに! で、そのーー』
『『『その転移装置の先の試練を乗り越えたら強くなれる! だろ?』』』
『言うなよぉ! 言わせろよぉおお!』
楽しそうだなぁ。後ろに魔物(僕)が居るってのに・・・。
冒険者の1人が叫んだ直後、冒険者たちは少しして違う話を始める。どうやらこの話はあれで終わりらしい。完全に時間の無駄だった。いや情報としては隠しダンジョンのことなのでいいものなんだけど・・・、既にクリア済みのこと言われてもねえ・・・。
「はぁ・・・、次行こ」
しかし次もその次もその次の次も有益な情報は得られず、気付けば2時間近く経っていた。主に盗み聞きミスの戦闘時間が原因だけどね。そして何度目だろうかようやく、
『最近【海難】がこの辺に出没するそうだ』
『【海難】ってあの【海難】か?』
『ああ。片っ端から船を破壊するあの【海難】だ。先日から出没しているらしいから船の移動はやめておいた方がいい』
『リーダーそうは言うが、知ってて船出すバカなんていねぇよ』
『確かに』
どうやら【海難】は冒険者、というか人も襲っている完全な犯罪者のようだ。だが知りたいのはそこじゃない。
『疑問ですが、倒せば良いのでは? 確かに海戦・・・明らかに相手が有利な場所での戦闘を強いられますが人を集めれば勝てると思ーー』
『ああ、無理無理。今のあいつに俺らの攻撃効かないからな』
『?』
『よく分からないが、特殊な儀式で体を水化しているらしい。まぁ要は【海難】は【海難】の姿をした水ってこった。攻撃は全部無力化される』
どうやらあの攻撃無効化は特殊能力だったらしい。クソめ。
『儀式・・・ですか?』
『ああ、まぁ詳しいことは知らんがな。はっは』
教えろよ! そこを!!
『分からないのですか?』
『どこかの洞窟でそれを行い、その儀式で肉体を捨てたって話らしい』
『捨てるといっても肉体が死ぬと精神も死ぬらしい。だから正確には封印しているそうだ』
『そこまで分かっているのなら、その洞窟に行って肉体を倒せば良いのでは?』
『その洞窟が分からないし、そもそもこの話も聞いた話で信憑性も不明だ。実際は違うかもしれないし行われた洞窟が存在するかも分からない』
『それにあいつは海を渡っている奴しか狙わない。だから海に出なけりゃ害はない。だから現状信憑性の薄いそれを確認して対処する労力をかける必要はない』
『つまり海に出なけりゃ放っておいても問題ないから放置って事ですか?』
『だな。いっておくが色々考慮した上で、の放置だからな!』
『はぁ・・・』
色々聞けたがこれ以上の情報は出なかった。信憑性云々言っていたが本当なのだろう。つまり倒すということは本体を倒せばいいという事なのだろうが、なまけものが見せてくれた他の人が倒した画像は海の上だった。洞窟も分からないしまだ何かヒントがありそうだ。
次回更新は3日後の予定です