381.【海難】と戦闘してみた③
的確に狙ってくる波の槍を躱しつつ接近する。
この槍、威力も高い癖に、速度、射程、精度、連射速度どれもかなり高い。ついでに少しホーミングしてきて腹が立つ。
ただ直線的な攻撃なので、それなりの速度で動き続けていれば当たらないのが救いだ。
「ねぇポンタ・・・。私の剣・・・」
「『炎撃』使えば戻ると思う! 濡れただけでしょ!?」
「飛んでくる海水って蒸発させられるんじゃない?」と僕が避けた攻撃に剣をぶつけたユウさんの剣は、一部が炭化した湿った木のようになっていた。同じように消沈するユウさんがどうすればいいか聞いてくるが今それどころではない。
『『ウェイブスピア』ぁ・・・』
「また来た!」
【海難】の波の槍、『ウェイブスピア』が大量に飛んでくる。一度の使用で【海難】の任意の量を連射出来るようで、避けるだけでもかなり大変だ。正直ユウさんの剣に気を配る余裕はない。どうせ濡れてるだけなんだから乾けば元に戻るだろう。
しかしこの『ウェイブスピア』、大量に飛ばせるスキルの癖に1発の威力がおかしい。近づく途中一撃を貰ったが、なまけものと同様 僕も3~4発受ければ死ぬレベルの威力だ。ユウさんに至っては弱点も考慮すると1発で即死もしくは瀕死だろう。
「はわわわわぁ! ポンタもっと早く動かないとと死ぬよ」
「分かってるけどこれ以上飛ばすと2人とも落ちるでしょ!」
「大丈夫。ポンタに氷で張り付いているから平気」
「さっきから冷たいと思ったらそれか!」
中央頭の首の付け根がやたらと冷たいと思えば・・・。
因みに『ウェイブスピア』のダメージを受けた原因はこのココアを拾ったせいだ。【海難】が急に攻撃方向を変えるから何事かと思えば、フラフラと飛んでいたので拾った。ダメージは痛かったが、ココアの回復のおかげで今はなんともないし、ココアが居てくれることで更に無茶ができるようになった。
「ポンタ気を逸らしちゃだめ!」
「へ?」
ココアの冷たさに気を取られたようで、ユウさんの言葉で攻撃に意識を戻すと、『ウェイブスピア』が間近に迫っていた。移動での回避は不可、咄嗟に『蜃気楼』を使う。そして【海難】の真後ろ0距離の位置へワープ。
『!?』
「ドームは常に展開しておくべきだったな」
こっちが一定時間攻撃をやめていたため、【海難】は海水のドームを解除していた。お陰で真後ろに移動できた。
が、時間は無い。海水のドームはほぼノータイムで展開されるし、展開されるとこの位置ではドームに触れることになる。触れた場合どのような影響があるか不明だが、こっちに都合のいい結果にはならないだろう。ダメージが無ければいい方だ。
僕はそうならないように少しでも早く0距離の『火炎』を放った。焦って属性のチョイスをミスったが、今回は勝ちを狙っていないので、ダメージが入ればいい。
「なっ!?」
しかし実際はそうならなかった。
パァン! と『火炎』を当てた【海難】の上半身が弾け飛んだのだ。まさかの状態に全員が驚く。
「吹き飛んだよ!?」
「えっ!? え? 倒した?」
「・・・いや、そうじゃない!」
断面が水になっているのと、【海難】のHPが一切減っていない。これは【海難】のスキルか特殊能力のどちらかだろう。どちらでもいい、どっちにしろ効いていない。
そう気付き、慌てて離れようとしたが、
『『ウェイブブレイク』ぅ・・・』
どこからか聞こえてきた【海難】の声とともに視界が暗転した。
次回更新は3日後の予定です