379.【海難】と戦闘してみた①
「あ~・・・勿体ない・・・」
眼下で沈む船。結構よさげだったのに波に飲まれてあっさり壊れた。先に送還方法ちゃんと確認しておくべきだったよ。
しかし持ち主のユウさんはそれほど気にしていない様だ。
「だってポンタ居ればいいし」
「それは常に乗せて運べということかな?」
とはいえ今更なのでそれ以上はつっこまないが。
なまけもの達が動き出したので、合わせて【海難】へと動き始める。どうやらココアに教えた海上移動方法をうまく活用しているようだ。しかし教えたのはさっきなのに息ぴったりだな。
「ポンタ、前!!」
「おおっとぉ!?」
よそ見をしていて目の前に飛んで来た波に気付かなかった。ユウさんの声で気付き慌てて避ける。
「気を付けて! もう攻撃始まってるのよ」
「すみません・・・」
【海難】の攻撃はあの大きな波だけだと思ってたが、さっきみたいな槍のような波の攻撃と他にもバリエーションがあるようだ。波を使ったものに限定されていそうだが、過信はしない方が良さそう。普通に水系統の魔法を使ってくる可能性も高い。
「とりあえず相手の攻撃を見極めるわよ。周辺飛んで攻撃を誘発して」
「了解。基本回避するけどもしもの時は『蜃気楼』で避けてね」
「分かったわ」
初見なので、まずは相手の攻撃手段を調べる。あえて距離を縮め【海難】を様子見。ついでにこちらにヘイトが向くように適度に牽制も行う。
こうしておけば、なまけもの達も動きやすい筈。
「マーキングしたわ」
「ありがと」
名前:海難のレヴィア
職種:殺戮者
ランク:S
ランクはSになっていた。駄目なやつだ。同時に確認したであろうなまけものが移動しながら変な声を上げている。
一気に勝てる気がしなくなってきたが、今さら逃げるなんてユウさんが許さないだろう。
かといって適当に負けるのもバレる。普通に戦って負けるのが一番早そうだ。勝つ? その選択はほぼ無い。ランクSともなれば基本ステータスがこちらよりもかなり高いうえにAIの性能も最高。聞いた話では明らかにバランスが崩れているらしい・・・いや、船を一撃で破壊し、くらえばほぼ即死の魔法を連発してくる時点で崩れてるな。
幸いそのビッグウェーブ(勝手に命名)以外の魔法はまだぶっ壊れていないような感じなので、狙われている今もまだ生きていられている。
「ポンタ!」
「『スケイルショット』」
だが、防御面は壊れていた。
牽制に放った『スケイルショット』は海から現れた渦のドームに防がれる。そしてそのドームを貫通して相手の海の槍が飛んでくる。十数秒飛び回りつつ牽制し続けてみたが、このドームがまず壊せない。こちらの威力が弱いからってものあるが強度が硬すぎる。しかもこちらの攻撃に対しほぼノータイムで自動展開されるので、相手の攻撃中だろうが死角からだろうが確実に防がれる。それで相手の攻撃も防げたらいいのに、相手の攻撃には全く影響を与えない。
「ずるくない!?」
これにはユウさんも憤慨中だ。
ドームが海水、つまり水である以上、触れるだけで弱体化するユウさんは近づけないし、中距離攻撃手段も炎属性だけしかないので効きはしない。
つまりこのドームの所為でユウさんは無能と化してしまったからである。文字通り現在お荷物状態となってしまった。
ウチの攻撃の要が無力と化したことで、もとよりあるかどうかすら怪しい勝ち目がさらになくなった。
次回更新は3日後の予定です