369.話ししてみた②
船が視界に見える範囲で雲よりも高く飛ぶ。飛行メーターが減っていっているが、まぁ話す分は持つだろう。
「どうしたの急に?」
「いや、あそこだとどうも話し難くなって」
「あの2人ね・・・。まぁ分かるけど」
「それに、何かしないとユウさん今日もう止めそうだったし」
「・・・そうね。そう思ってた」
やる気が激減してた感じがしたのでそう思ったが当たりだったようだ。
「ごめん。あれ急に言うことじゃなかったね」
「ううん。言ってくれてありがと・・・」
「でも今言う話じゃなかったね」
少なくともプレイ中に注意するのは良くなかった。この点に関してはなまけものの方が正しかった。
まぁ違う時にしろという理由は違うだろうけど。
「注意しておいてなんだけど、僕的にはあまり気にしないで欲しいかな。正直ユウさんにゲーム止められる方が嫌だし」
「それは大丈夫。ちょっと自己嫌悪してただけだから。昔からの癖なのよね・・・」
「それは・・・日常的に暴りょーー」
「違うわよ!」
「ごめん」
ユウさん曰く、最初はそんなつもりなくても、繰り返すうちに頻度が増え、強要などをしてしまうことがあるそうだ。繰り返すたびに「前はこれで大丈夫だったから、もうちょっといいよね」と基準がどんどんずれてしまうのだそう。自身に影響することだけならまだいいが、時には他人を巻き込むことも過去にはあったらしい。
そういう経緯もあり普段は常に意識して押さえられているらしいのだが、ゲーム中など楽しい時とかはその意識が薄れてしまうと起こしてしまうとユウさんは苦笑いする。
しかしまぁ・・・
「ははっ」
「何か可笑しかったかしら?」
「あ、ううん。いやカイザーさんと似てるなと思っただけ。やっぱり兄妹だね」
「ウソでしょ!? 何処が!?」
「いろいろ。でも特に自制が効かないところとかよく似てるよね」
あの人もユウさんに関することだと、本人無視して好き勝手するし。違うと言えば嫌がられているのを分かってて行ってるのか気付かず行ってるのかというところか。
しかしこのカイザーさんと似ているという言葉はユウさんに思いっきり突き刺さったらしい。
「最・・・悪・・・」
「別にいいと思うけど・・・。兄妹だと似るところは似るしさ」
僕には兄弟が居ないが、親戚の2人を見るとよく分かる。
それを思いフォローしたが、しユウさんには効かなかった。
「嫌よ。あんな兄と似てるところがあるとか汚点でしかないわ。ああっ、考えただけで鳥肌出てきた」
腕をさするって温めるユウさん。
流石に可哀想すぎるが、元はと言えば本人の自業自得なのでフォロー出来ない。
とりあえず、
「・・・一応カイザーさんには言わないようにね。それ」
と言って、彼の耳に入らないようにすることしか出来なかった。
「決めた。私この癖完全に克服する!」
「それは・・・似たくないから?」
「うん!」
「・・・そう」
心の中でカイザーさんにすみませんと言っておく。謝る理由はないから直接は言わないが。あとこのことは秘密にしておこう。カイザーさんにバレると何し始めるか分からないし。
そう誓い、大きく頷いているとユウさんがチョンチョンと突いてきた。何かなと思うと、ユウさんは少し恥ずかしそうにしながら、
「それで・・・なんだけど・・・。ポンタも手伝ってくれないかしら? 治るまででいいから!」
「いいけど・・・何したらいいの?」
「私が暴走したら止めて欲しいの。注意したりとか、押さえつけるとか」
「押さえつけるのは無理かなぁ・・・」
逆にやられそう。というか注意でやめないのならもう手遅れだろう。
そう思ったが、流石に言うのはやめた。
次回更新は3日後の予定です