359.追いかけられてみた
『『『・・・カエセ、カエセ、カエセ・・・』』』
更に不気味な声を発し出した石像たちは、呪うような言い方でそう繰り返し、石像ではあり得ない速度で追ってくる。
というか、ダンジョン入る前とやってることく変わらないじゃないか。
「返せって何を!?」
「これだろ? どう考えても」
なまけものが松明を動かす。そう言われて気付いたが、確かに石像は松明を持っていない。
「つまり暗いからと松明を取ると襲ってくるトラップということだな」
「ならさっさと返せよ!」
「返したらマジで見えなくなるぞ? 気付いているのか?」
確かに周囲は既に真っ暗だ。今松明を手放すと本当に何も見えなくなる。
闇が深いのか石像の松明はさっきと同じくらい燃えているのに、不自然なほど照らしている範囲が狭くなってる。
しかし持ってる松明に変わりないので、手に取れば本来の明るさになるのだろう。
周りを見たかったら取れと言う事だ。
「分かってるけど一旦返して状況を整理しようよ! 返したら追われないだろうし」
「む・・・確かに」
僕らは石像へ松明を放り捨てる。すると捨てた松明は地面に落ちると同時に消え、石像の手へ現れる。同時に石像は何事もなかったかのようにその場に固定された。どうやらその場に止まるだけで元の位置には戻ってくれないらしい。
圧迫感が凄いな・・・。
「ふぅ・・・。ちょい休憩」
一気に静けさと暗闇が僕らを覆う中、その場に座り込む。いきなりの全力移動で疲れた。
「うわ暗ぁ! ここまで暗くなってたのか」
「確かにね。追われて一気に進んじゃったなぁ」
「まぁしょうがねぇよ。よし、これからどうすっか考えようぜ」
暗闇の中、2人でどうするか思案する。まずこのダンジョンはどうすればクリア出来るかだ。最終的にボス戦があるのは確定として、そこまでただ進んでいけばいいだけなのか、何かしらの仕掛けを解く必要があるのか、だ。
「結構奥まで来てる以上、俺は後者だと思うな」
「同じく。けど深いダンジョンってあるから前者の可能性もまだ有るんじゃないかな」
「その場合はさ、こんな直線ダンジョンにしないだろ普通」
「言われてみれば・・・」
ゴールまで直線だと分かっていれば、松明石像のトラップなんて不要だ。真っ直ぐ進めばいいだけなので、余程暗いのが嫌な人以外であれば取らずに進めば辿り着ける。
わざわざこんなに暗くし、石像トラップまで用意しているこの状況だ、クリアするには松明で照らさないと見つからない道なり仕掛けがあるのだろう。
ではそれは何なのか。
「隠し道か?」
「違う壁画を見つけろとか?」
「あの疾走中に見つけろと? 無理無理」
「思うんだが、天井ギリギリまで飛んだら逃げなくても良くないか?」
「・・・確かに」
石像の大きさ的に天井スレスレであれば確かに届かない。試しに少し飛んでみたが、石像が仮に手を上に伸ばしてもまだ余裕があった。ジャンプさえされなければこれで逃げる必要はない。
だが、
「ジャンプするよなコイツら」
「するだろうな。石像っぽい動きしないもんな。それに飛ぶ前提の仕掛けなんてないだろうから、やはり下か側面にあるんじゃないか?」
「後は石像の裏とかね。動かさないと見えないとか」
「そうそう、石像がスイッチ踏んでて、一旦動かさないといけないと・・・か・・・」
「・・・・・」
なまけものと顔を見合わせ、石像の周囲を調べる。
裏には何も無かったし、一瞬動いてもらった石像の下にも何も無かった。
「クソが、期待させやがって」
「これだけあるんだから他の石像下にあるのかな?」
「・・・全部移動させて探すのか? 俺嫌なんだが?」
「何か手がかりあるだろ。それ探すしかないね」
しかしこの暗闇で探すのは無理。松明が必須だ。
と言うことは・・・。
次回更新は3日後の予定です