355.和解してみた①
さっきまで追って来た相手全員を前になまけものが悟った顔をする。
「終わったな」
「諦め早っ!? ・・・まぁ無理か」
逃げ道は今来た道しかない。が、突き当りに穴が開いているだけの行き止まり。逃げれないことは無いが、逃げ切れる可能性は低い。一応彼ら4人の前にもあるっちゃあるが、現状のHPでは躱しきって抜けるのはほぼ不可能だろう。
つまり詰んだ。
「あれ? 逃げないのか?」
「逃がしてくれるなら逃げるけど? んなわけーー」
「いいけど?」
「ねぇよ・・・はっ?」
彼らは仲間内で何か話した後、話しかけてきた隻眼のゴリラはあっさりと言った。
さっきまでああも鬼気迫る調子て追ってきてた割には軽すぎないか? 罠か? さっき話してたのもどう嫌がらせするか決めていたのではなかろうか? もしそうなら後でなまけものと全面戦争だ。
そんなことを考えていると、ゴリラは「まぁそうか・・・」と呟き、
「まぁ倒してもいいんだがな。折角面白いもの見つけたんだ、倒そうと戦って一人でも死ぬ方が後々面倒なんだよ」
「殺してやる!」
「って言ってる奴居るけど?」
「ああ、あいつはほっとけ。馬鹿だからダンジョン入ったらすぐ忘れる」
信用していいのかどうか不明だが、まだ戦闘中の表示がある以上鵜呑みには出来ない。とそこへドラゴンが話に入ってきた。
「あんたらも偶然だろうが、おかげで隠しダンジョン見つけたんだ。見逃すのはそのお礼ってことで。なんなら先に行かせてくれる権利もくれればこの場で戦闘破棄してもいい」
戦闘破棄・・・、用は互いの合意によって戦闘を中断させるシステムだ。しかしプレイヤー同士の戦闘ではほぼ使われない。ウチでも相手は絶対倒す主義者がいるから使ったことは無い。
「理由は分かった。やめてくれるんならこちらとしても助かるし、戦闘破棄してくれるなら安心できる」
戦闘破棄すれば、その後半日は同じパーティでの戦闘が出来なくなる仕様だ。だから彼らから倒されることはまずなくなる。しかしお礼ってだけで戦闘を本当にやめてくれるのだろうか?
「疑い深いな・・・。まぁ本音言うと実は俺ら隠しダンジョン初めてでさ、目の前の戦闘よりも早く入りたいんだよ。なのに戦闘中だろ? 何故か知らないけど戦闘中だと入れないんだよここ」
「あ、そうなの?」
向こうの思いは大体見えてきた。要は確実に全員で早くダンジョンに入りたいだけらしい。倒した方が早いと思うが、こっちも負けようが1人くらいは道連れするつもりだ。しかしそれは彼らにとって不都合、だから戦闘自体を止めたいのだろう。
「分かった。こっちも死にたくないしその提案に乗ろう。出来れば申請はそっちで頼む」
「いいぞ、すぐ送る」
実を言うとやり方よく分からなかったから助かった。
僕は彼らからの不意打ちを避けるために少し距離をとり、申請が来るのを待つ。
・・・しかし一向に申請が来ない。
ゴリラとドラゴンは目の前で何やら四苦八苦している。まさかとは思うが・・・
「「やり方分からん!」」
「・・・やっぱり」
向こうも同じだった。
次回更新は3日後の予定です