354.逃げきってみた(気がした)
「ん゛っ!!?」
「ん?」
何とか縦穴から曲がり切ってやったぜと思った矢先、なまけものがものすごい衝撃を受けた声を発する。しかし追われている以上、止まってはいられない。無視してそのまま直進。しかし急になまけものが重くなった。
「のおおおおっ!!?」
「あれ? 地面ある?」
同時になまけものが声を上げ、ズザザザザッと何かを引きずる音。一旦止まりゆっくりと降下してみると、そこには地面があった。どうやらここはあの縦穴対し空いていた横向きの穴だったようだ。てっきり下方向はまだ同じだと思っていた。一旦なまけものを降ろすと、なまけものはその場でピクピクと震える。
「どした?」
「お前・・・俺の息子削り取る気か?」
「・・・あ、そこ擦ってたのね。ごめん地面あると思ってなかった」
なんせ暗いからじめんすらよく見えないし、なまけものすら薄っすら見えている程度だ。まぁそもそもリアルじゃないから削り取ったところで問題ないだろう。というかそもそも息子なんて無い。
「無くてもそれっぽいところにダメージ来るんだよ!」
「分かったから早く移動するぞ。追われてるんだから。ここなら飛べるから早く乗って」
「分かってるよ!」
なまけものはまだダメージがあるのか、若干の震えつつ僕に乗る。微妙なタイムロスだが、幸い相手は追ってこなかった。この横穴に気付かなかったか、向こうも何かしらでもたついているのかもしれない。
「ふぅ、大分落ち着いてきた」
「ならよかった」
「お前な、せめて曲がる前に言ってくれないか? 曲がった直後のクリティカルヒットはマジ死んだかと思ったぞ」
どうやら曲がった直後、地面が直撃したらしい。クソッ、絶対面白い顔してただろうに見逃した。
「そしたら1人でのんびり探索できたんだけどね。残念」
「ワザとか? ワザとなのか? なぁ?」
「いやたまたまーー」
「玉だけにか?」
「・・・・・」
一気に白けた。
振り落としてやろうかとも考えたが、まだ戦闘中なのでやめておこう。
スルーして走りながら現在の状況を整理する。
戦闘中だから戦闘フィールドからは脱出できていない。結構下まで落ちたと思ったのだがまだ範囲内のようだ。もっと小さかった気がするのだが・・・。
「洞窟だからな。距離感が地上と違うんだろ」
「そうかなぁ? まぁどっちでもいいけど。出来ればさっさとフィールドから抜けて一旦オアシスで全回復したいところなんだけどなぁ」
「それは俺も賛成だな。このHPじゃ安心できん。戦闘中は自己回復もしないしさ」
「だよねぇ・・・ただ」
この先何があるか分からない以上、できれば全回復して臨みたい。だが一度オアシスに転移してまたこの場所に入れるかどうかは分からない。今回はたまたま・・・いや、運よく入れただけなのだ。
くそっ、こいつが変なこと言うから意識してしまう。とりあえずシバいておこう。
「った!? おい何すんだ!?」
「何でもない。イラっとしただけだ」
「何でだよっ!?」
「おっ、明るくなってきた」
「聞けよっ!」
2分くらい走った辺りで急に前が明るくなってきた。そして道が徐々に広がる。あんな隠し場所の奥だ、場所や行き方などを考えるとワクワクせずにはいられない。
「隠しダンジョンー!!」
「来たー!」
興味が変わると今までのことを忘れるようで、僕らは叫びながら明るい場所の下へと足を踏み入れた。
そこには、
「「「「あ」」」」
「「あ・・・」」
奴らが居た。
次回更新は3日後の予定です