351. 逃げつつ戦ってみた④
「一応確認するけど、現状勝てそう?」
「勝ち目は薄いなぁ。死神がお荷物状態だったらまだ可能性あったが・・」
あっさり勝てないと判断したなまけもの。
こちらも同様の認識だ。勝てると思ったけどやはり無理だったか。
「かといって逃げれる気もしないがなー。逃げ道ないし、追いつかれそうだし」
「逃げ道なら多分だけどある。あとなまけものが降りれば逃げきれる」
「何処に? あ、降りはしないからな」
「チッ! あの穴。かなり深そうだから入れれば逃げられるかも」
「入れればねぇ・・・。ダイエット間に合うか? あと露骨な舌打ちやめろ」
なまけものが僕の横腹をポンポンと叩く。どうやら僕の胴体では通れないのじゃないかと言いたいらしい。確かに入れるか怪しいが、パッと見た感じではギリギリいけるだろう。
「1人で入る分には問題ない筈の大きさだからダイエットはいらない」
「待て。1人だと? 俺は?」
「降りるしかないね」
「なら俺は穴に落ちろと? どのみち死ぬじゃんか!」
「知らない。じゃあ僕はそこから逃げるからあと宜しく」
「残念だがその作戦俺は許可しないことにした」
「許可を求めてないから。というかまだ問題あるし」
「問題?」
「あの穴入るにはまたUターンしないといけない。つまりあのドラゴンたちと一旦すれ違わないといけない」
「他の穴探せばいいだけだろ?」
「逃げ回りながら探せればね。この状況では流石に無理」
底の見えない穴自体はちょこちょこ見かけるが、僕らが入れる大きさの穴は、今移動している範囲では大鎌を捨てたあそこしかない。探せば他にもあるだろうが、今にも追いつきそうな後ろを気にしながら探すのはまず無理だ。それに仮に見つかったとしても、入れると判断した時には既にその穴の横を通り過ぎる。つまりどちらにせよUターンは必要なのだ。
「どこかで隙を突くしかないな。あんまりSG消費をしたくないが・・・」
「ん? この作戦は許可しないんじゃなかったのか?」
「どの道お前はするんだろう? なら嫌がったところで1人になって死ぬだけじゃん」
「そうなるね」
「ならフォローするさ。だから落ちる際はフォローしてくれ」
「分かってるよ」
最初からそのつもりではある。方法もまぁ無くはない。
頭の中でシミュレーションした限りでは多分いけるだろう。失敗してもなまけものが落ちきる前に拾えばいいだけだ。
「・・・待て。どういうフォローするつもりだ?」
「あとあと! ほら追いつかれるから牽制してくれ!」
「・・・分かったよ! 『アクア』!」
「ちぃい!?」
既に射程圏内で大鎌を振り上げていた死神へなまけものは『アクア』を放って邪魔をする。さらに追加で撃ち続けドラゴンの行く手を阻んだ。
「ここに来て魔法連打か・・・」
「相手切羽詰まってるからじゃないか。さっさと追い詰めてやっちまおう」
「そうしたいが水飛沫が地味に邪まぶっ!?」
そのうちの一つがドラゴンの頭に当たった。同時にドラゴンがその場に止まった。
目をしぱしぱしてるところ見るに、水が目に入ったのだろう。狙ってたのかなまけものがドヤ顔をしている。
「今の内だ、ポンタ! さっさとあの場所戻るぞ」
「あ、Uターンか!」
今の内に距離を離しておこうかと思ったのだが、確かに今Uターン方が早いな。
すぐさまその場で回れを右をして来た道を逆走し始める。と、その時死神が僕の直前まで迫っていた。
次回更新は3日後の予定です