349. 逃げつつ戦ってみた②
「目が、目がぁああ!!」
「絶対やると思った」
「色んなところで効き飽きたそれ。もうちょっと捻り無いの?」
「・・・もうちょっと心配してくれないか? なぁ? マジで目潰れてんだけど」
距離を取り、反撃に備えた僕らの前で何か話している。どうやら反撃は無さそうなので一安心だ。あの『ビッグバン』をもう一発でも貰えば、もう死にかけになるし、他のダメージ後だとその時点で負けだ。
なのでこれ以上はダメージを受ける訳にはいかない。
「相手はゴリラが残り2割、他はほぼノーダメってとこか」
「こっちは両方ほぼ半分・・・。無理かな?」
「ゴリラ倒せばワンチャンってとこか。でもそうなるとドラゴンの重りが無くなるんだよなぁ」
「赤い球先に倒すのが一番いいけど・・・」
「ゴリラの手にあるアレを狙うのは無理だろ。やっぱりドラゴン、ゴリラ、赤い球の順じゃね?」
「だよなぁ。はぁ、さっきミスったのが痛い」
「まぁ奇襲自体は成功してたんだ。次は決めようぜ! 早く終わらせないとあいつ来るぞ」
「切り替えろ」というなまけものに同意し、移動を開始。相手はまだ追ってこれる状態じゃない。今の内に隠れることにした。さっきのような奇襲もいいけど、こっちを見失わせた方が成功率は上がるからね。
死神も味方のHP減少に気付いてこっちに寄ってきてるかもしれなーー
「なぁ? 今のうちに死神狙った方が良くない?」
「・・・確かに」
状況的に死神今一人だということに気付く。場所は分からないが迷路のような洞窟では無いので、今の僕らの位置に来るためのルートは少ないので、予測もしやすい。
なまけものと頷き合い、すぐさまトップスピードで探し始める。
そして移動を開始して最初の曲がり角、
「「あ」」
「な!?」
居た。そしてぶつかった。
正確には岩陰から出てきた死神に僕が体当たりした形になったが、こっちも予想外の為、ぶつかった反動でバランスを崩す。幸いなまけものが落ちる程度ですんだ。
「くそっ!」
死神はすぐさま態勢を整え、落ちて地面に転がったままのなまけものへ持っている鎌を振り下ろす。対しなまけものは白刃取りの構えをし・・・失敗。右胸下辺りに突き刺さる。
「痛っ・・・」
「もういっぱーー」
流石にもう一発は当てさせない。思いっきり全体重でプレスした。
「ぐぇ!」
「なまけっ!!」
「待て、待って。まだ起き上がれてねぇ」
「早くしろっ!」
なまけものが起きるのにもたついている間に死神の鎌は右首で取り上げておきつつ、地団駄攻撃。ダメージは少ないが、やらないよりはましだしもう時間もない。
索敵している左首が、こちらに気付いて向かってくる3人組をとらえている。
「よ、よしっ、立ち上がったぜぇ・・・。今からーー」
「時間切れ」
「え? ああ・・マジかぁ・・・」
3人の位置を確認し、諦めのため息を吐きながら乗るなまけもの。飛び乗った瞬間下からくぐもった声が聞こえた。それはなまけものの体重で更なるダメージを受けた死神のものだった。
「「あ、ごめん」」
死神を蹴飛ばしつつ逃げる。ついでになまけものが魔法のプレゼントをして置いた。これで死神も半分近くまでHPを削れた。
しかしこちらも無傷では無い。折れて無くなったなまけものの肋骨部分を見つつ、
「HPどう?」
「まぁ良くはなーー」
「待てやぁあああああ!!」
「「うわっ!!」」
なまけものの声を消すかのような怒号が洞窟内にこだました。
次回更新は3日後の予定です