347.襲われてみた
衝撃とともに転がる。
痛みがあるので、ダメージを受けたと咄嗟に理解した。そしてその前の知らない声。恐らく誰かが攻撃したのだろう。
「ポンタ!」
「大丈夫、それほどダメージ無い」
直撃した割には大したダメージではない。僕を守るように立つなまけものに「心配無用」と伝えて立ち上がる。
目の前には3体の魔物が立っていた。ぱっと見の印象ではゴリラとドラゴンと赤い球。
「あんまりダメージ無いだろ? 挨拶だし軽めにしておいたからな」
真中のゴリラが腕を組みながら話し出した。筋骨隆々でパワー大好きと言わんばかりの見た目だが、足がかなりの短足。恐らくスピードはなまけものよりも遅そうだ。逆にドラゴンは細くスピード重視のような見た目で、赤い球はココアに似ている。火系統の同種かな?
「おいおい、いきなり殴るとかマナーがなってねぇな」
「奇襲されるのが嫌なら道のど真ん中で転がってんじゃねぇよ」
「そりゃそうだが、転がっている人を見つけたらまずは「大丈夫ですか?」と聞くのが和の心だろ?」
「悪いがゲーム内に和の心は持ち込まない主義なんだ」
「「同じく」」
まぁゲームだし、そんな心持ってる人は少数だろう。というか和の心ってなんだよ・・・。
「そもそも、その心はなまけも持ってるのか?」
「あ? あるわけねぇだろ。俺が転がっている隙だらけのプレイヤーを見かけたら、反撃される前に全力で攻撃するわ」
最低だ。ん?
なまけもの :話している間に逃げる準備しとけ
どうやらなまけものは勝ち目が薄いと考えたのだろう。同意だ。
「んで? その和の心を持ちこまないクソ野郎どもが何か用か? こっちはこれから冒険者を倒しに行きたいんだが?」
「お前の方がクソだろ・・・。まぁいい、用なんて言わなくても分かるだろ?」
「まぁな、あれ、フレンド申請をしたいのだろ? 俺ら強いからな。だが悪いな、あいにくリアルの知り合いとしかしない主義なんだ」
「違うわっ!」
「おい、あんまり怒らせるなよ・・・」
恐らくそれも作戦なんだろうが、相手が粘着質だったら面倒だぞ。
「それ以上はやめとけ」と伝えると、なまけものは大きくため息をついた。そしてやれやれといった感じで僕に跨る。
「わかったよ。戦闘だろ? したいのは」
「そうだよ。いい加減にしろよ」
「悪いけど面倒な戦闘はしない主義なんだ。じゃな!」
そう言うと同時になまけものが僕を叩いた。合図だと認識し発進し逃げる。
「「「なぁ!?」」」
「はははははっ!」
驚愕の相手に対し、してやったと上機嫌ななまけもの。怒らせるのも悟られないようにするための作戦なんだろうが、怒らせて逃げる嫌がらせみたいで嫌な感じーー
「・・・なんてなっ」
「!?」
そんな声が聞こえたと同時に、目の前に大きな鎌が襲って来た。大きく左に体を傾けて避けはしたものの、右側の首がちょんぱされる。何とかバランスを取りつつ、そのまま逃走。残った左首で後ろを見ると、死神のような見た目の魔物が岩陰近くに居た。
「ポンタッ!」
「いい。このまま逃げるでいいんだよな?」
「ああ。クソッ、4体目・・・俺らが逃げるのも想定済みだったか」
「みたいだね。追ってくるぞ」
当然ここまでされて逃がす訳が無いだろう。後ろから浮いた死神とドラゴンに乗ったゴリラ達がこっちに向かって来た。
「鬼ごっこか? いいぜ、何処まで持つか試してやんよ!!」
地下世界でいきなり鬼ごっこが始まった。
次回更新は3日後の予定ですが少し遅れるかもしれません
すみません