340.乱戦してみた④
「くっ・・・、思ったよりやるわね・・・」
スキルを使い出したロロに対し劣勢を強いられる。相手が持っているスキルは『鎌風』と『飛円斬り』どちらも斬撃が飛んでくるタイプのスキルで、『鎌風』は真っ直ぐ遠くまで飛んできて、『飛円斬り』は使用者を中心に円の斬撃が飛ぶ。こちらは全方位だが距離は短め。
ただこの二つのスキルのせいで近付くことが難しくなり、さっきの戦法ができなくなった。その上遠くにいれば『鎌風』が、接近したら『飛円斬り』を織り込んだ連撃が襲ってくるため、様子見もできない。
当然相手の回避能力はさっきまでと同じなので、こちらの攻撃は当たらない。
『『鎌風』ぇ!』
「痛っ! もうっ! 避けたでしょ!?」
あとこの魔物だと『鎌風』が異様に速く感じる。避けたつもりだが避けきれず掠るので、放たれる度にHPがちびちび減っていくのだ。打開策を考えるあまり時間はない。
「うおおおおっ!?」
『のわっ!?』
とそこへ滑って来るポンタと相手の冒険者。私とロロが慌てて下がると、私達の間を勢いよく滑っていく。あれが戦略? 遊んでいるだけじゃない!!
「何遊んでるのっ!?」
「遊んでるわけじゃ・・・」
「違います遊んでません」とか「泥のせいなんだ」とかなんとかポンタは否定しているがずっと聞いてる余裕はない。すぐにロロへと視線を戻し、戦闘に集中する。
と、その時地面についた泥に目がいった。さっきポンタが滑っていた場所に残った泥だ。少し踏んでみるとズルッと滑る。
「・・・使えそうね」
そう判断した私は『泥弾』をロロの足へ狙いを変えて放つ。足を泥だらけで滑りやすくしてしまえば、あの剣技やスキル、どちらも踏ん張れなければ狙いも定まらないだろう。
『っ!?』
当然ロロは躱す。が気にせずSGに注意しながらで打ち続ける。ものの1分程度で自身とロロの周辺は泥だらけになった。
だが・・・1発も当たらなかった。
『無駄撃ちも終わりか? 結局1発も当たらなかったな』
「けどもう動けないでしょ。」
確かに1発も当たらなかった。だが当たらなくてもいい。どちらにしろロロはもう動けない。
ロロを囲むように『泥弾』を着弾させ、一定範囲を泥だらけにしてやった。足に当たってくれれればそれでもよかったが、こうする事で移動することは不可能。一度でも泥の上に乗ったら最後、滑って隙だらけになるだろう。そうなれば残りの『泥弾』で泥んこにしてあげる。
我ながら悪いこと考えたもんだ。
『『鎌風』ぇ!』
「わっ!?」
内心笑ってたら『鎌風』がまともに当たった。
『泥だらけにして俺が攻撃出来ないと思ったか? 足場のとこさえあれば攻撃はできるんだぜ』
「ならその足場、無くしてあげようじゃないの。『泥弾』」
トドメの如く、唯一彼が立てる泥のない場所へ『泥弾』を撃ち込む。これでロロは泥の上に立つしかない。チェックメーー
『甘いわ! 『鎌風』!』
バァン! と音を立てて『泥弾』が弾け飛んだ。
まさか『鎌風』で相殺して来るとは・・・。全然して来ないから出来ないのかと思ってたのに!
こっちがムッとしたのに気付いたのか、ロロは上機嫌に笑う。
『フハハ! 甘かったなぁ!』
「・・・ならもう1発! これも止めてみなさいよ!」
正直なところではやりたいくないのだが、ばら撒いた泥は足止めの他にもう一つ使い道がある。それは最初にポンタがしてたこと、つまり自身が滑るための潤滑剤としてだ。
私は助走をつけ泥へとスライディング。泥に乗ると同時に一気に加速してロロへと突き進む。反撃してくれても構わない。一撃貰ったところで死にはしない。
『はぁ!? ちぃ!』
流石に虚をつかれたロロは慌てるも、すぐさまジャンプして滑ってきた私を躱す。だがそれも予定通り、私は空中のロロへと狙いを定めて『泥弾』を放った。
空中だと躱しようがないし、『鎌風』で撃ち返すにはもう遅い。
『ぬがぁ!?』
『泥弾』がロロへとぶつかり、反動で着地点がずれたロロは泥の上へと落ちた。
こうなればもう終わりだ。
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