339.乱戦してみた③
ユウさん視点
「くっ、『泥弾』!」
相手の攻撃を躱しつつ『泥弾』を放つ。しかし至近距離にも関わらず相手は見切って避けてくる。攻撃直後を狙っているのだが、自身の攻撃したいタイミングに対して『泥弾』が発動から気持ち少し遅いせいだ。
このワンテンポずれる仕様、今までは気にならなかったけど動きが速い相手だと意外と困る。
『次行くぞ!』
「っ!?」
一気に距離を詰められての横薙ぎ。かがんで回避しつつ『泥弾』で反撃。しかしバックステップで簡単に避けられる。
さっきからこのようなどちらも一撃も当てられない状況が延々と続いている。こうも当てられないとストレスが溜まる。
「ははははぁ、追いついてみろぉ!」
『く、くそぉ!』
『・・・も、無理・・・』
ついでにポンタが楽しそうに遊んでいる(ように見えるだけ)のも納得いかない。まぁポンタだからあれも戦略なんだろうけどね。
私もちょっと戦略考えないと・・・。
泥人形の動く速度はそこそこ遅い。少なくとも相手の冒険者ロロ(ランクD)よりは遅い。
だから『泥弾』のカウンター狙いで対応していたが、当たらないし、このまま続ければSGが尽きて負けるだけだろう。
だからと言って突っ込んで近接戦闘というわけにはいかない。軽く躱され、攻撃直後の硬直中に斬られるだけだ。そうなるとあっさり死ぬだろう。
『ちっ、たかが泥の塊のくせにしぶてぇ。ただでさえ剣とか汚れる上にダメージ通りにくくて嫌だっていうのによ・・・』
「え? そう?」
しかし、相手の独り言ではそうではないらしい。よく分からないがこの魔物、普通にしぶといようだ。今日一度もダメージ受けてないからどれくらいかは分からないけど、相手が嫌がる程度には防御力が高いらしい。
「・・・そうね」
少し危険だけど、気になったので少し試すことにした。炎鬼の時と同じように、一気に相手の懐へと突撃し殴る。いつもの速度だったら当てられただろうが、今回のスローパンチ(当事者比)は当然のごとく躱される。そして当然の反撃。左肩からザックリと斜めに斬られる。・・・HPが1割減った。
「・・・あ、これだけなんだ」
防御力が低い炎鬼だと同じ攻撃を受けたら3割は確実な傷なのに、以外にもダメージはあまり無い。流動体である泥の塊だからだろうか。
『!? クソッ!』
「あら、抜けないの?」
そして面白い?ことに剣が泥に埋まって抜けなくなった。引き抜こうとするロロには焦っている。私は目線が剣へ向いている間に、左腕でロロの胸倉をつかんだ。それに気付いたロロと目が合う。伝わっているか知らないが、ニコリと笑い右手を顔に向けた。
『っ!? おい待てっ! やめろ!!』
「『泥弾』」
言うのが遅い。
ロロにゼロ距離泥パックをプレゼントした。多分イケメンの顔が一気に泥人形と同じになり、左手を同時に離したのでそのまま吹っ飛んだ。
「良かったわね、剣抜けたじゃない」
『ぺっペっ、この泥風情がよくも・・・』
顔の泥を払い、こちらを睨みつけるロロ。
嫌な予感がして少し下がるとさっきまでいたところの地面が抉れた。
「『鎌風』ね。何よ遠距離攻撃あるじゃない」
というかスキル持ってたのね。もしかしてさっきまでわざと使わなかったのかしら?
設定なのか知らないけど手加減されていたみたいで気分悪いわね・・・。
~その頃~
目の前に数人の冒険者。
姉のレンゲと共に殲滅する。数に手こずりはするが、コイツらはいつも倒せるので大丈夫だ。勝てない3人が既に出てきているが師匠とポンタ君が相手しているので現状何とかなっている。
「ショウ~、そっちどう?」
「もうすぐ終わる」
と言っている間に終わった。冒険者も師匠らが殆ど蹴散らしたので何か物足りない気分だ。いつもは苦戦するのに4人になった瞬間これだ。もう少し戦いたい気分。
「じゃあ援護しに行こうよ」
「いや、それはやめとく」
「酷っ、見捨てるの?』
「邪魔したくないの。というか大体姉貴も行く気ないくせに」
「ありゃバレてた~」
まぁ邪魔したくないのは建前だ。本音は勝てる気がしないから。
あの3人とは戦いたくない。何度もやる内に苦手意識が出来てしまった。
というわけでレンゲと2人で観戦し始めた。
次回更新は3日後の予定です