333.襲われてみた①
「ちょっと! しっかりしなさいよ」
「反撃されると思ってなかったのよ! いちいち言わないでくれる?」
「後でいいでしょそんなこと!」
うわぁ・・・・。
相手は仲が悪いのかこちらと向き合っているものの、口ではケンカしている。唯一1人後ろで待機している木の魔物だけが無言でダメージを受けたプレイヤーへ回復を行なっていた。
「何あれ? まとまりないわね。私達がマシに見えるわ」
「いや、僕らはマトモでしょ。みんなが馬鹿やってるだけで」
「・・・待って? それ私?」
「全員」
「・・・それならいいわ」
それでいいんだ・・・。
まぁ僕らはいざってときはちゃんと連携出来てる筈だからアレよりは酷くない。
「と、それは置いといて今チャンスかな?」
「ではないわね。ああやってるけど、顔はこっち向いてるから攻めたら反撃されるわ。敵の強さ次第だけど逃げるほうが良いかもね」
相手から攻撃してきたので、レベルシンクで相手はかなり弱体化してる筈。とはいえウチの2人はPvP未経験、相手の力量にもよるけど逃げる方がベストだろう。しかしユウさんからいきなり逃げる選択が出るとは思わなかった。
ただ・・・、
「でもユウさんは戦るよね?」
「当たり前じゃない」
「・・・ですよね」
まぁそんなことだろうと思ってた。やはりユウさん自身が逃げる気はさらさら無いようだ。
「なら僕も逃げるわけにはいかないかな」
「あら? 手伝ってくれるの?」
「できる範囲でね。あ、乗るのは無しで」
「えー!?」
今はね。乗せるかどうかは相手次第だ。
相手の動きで判断しよう。といってもさっき反撃を普通に受けているところを見るに、ユウさん1人でも何とかなりそうだ。相手の1人を除いたら、だけど。
「じゃああの後ろの木。任せていいかしら?」
「いいよ。何とか回復しないようにする」
「助かるわ。じゃあ始めるわよ」
「うい」
ユウさんが『泥弾』を発射したと同時に、僕は前衛の3人を大きく迂回するように走り出す。前衛の3匹が反応したが、ユウさんが『泥弾』で牽制している間に『加速』を使って急ぎ回り込む。
後ろを取ると、木の魔物が嫌そうな顔をしつつこっちを向いた。
「・・・戦闘力無いので見逃してくれませんか?」
「えっ? いや無理」
襲ってきておいて何言ってんだこいつは。というかやる気あるのかな? 見るからにテンションが低い。嫌々やっている感じがもの凄くする。
さっきのやり取り見たら何となく分かるが、居心地悪いんだろうな。
「何となく察したけど、襲って来たのそっちだしさ。諦めて」
「ですよねぇ・・・」
そう言いつつ木の魔物は、枝先をこちらに向ける。どうやら避けられないと判断して戦闘態勢になったみたいだ。
「行くぞ?」
それを見た僕は一応攻撃するぞと伝えつつ、突撃する。相手は木だ、馬である僕がスピードで負ける訳が無い。一気に距離を詰めて体当たりを決めようとする。
「・・・『ブランチ・スタブ』」
「!?」
いきなり枝が降ってきた。
小さい声だったので反応が遅れたが、咄嗟の回避で何とか躱す。そのまま彼の横へ回り込み『突進』を当てる。しかし重いのか根を張っているからか知らないが、相手は吹っ飛ばないどころか転びすらしない。
「・・・『ヒーリス』」
それどころか堂々と回復してくる。結局HPは全回復されまた削り直しだ。
腹が立つが自分も回復しまくっている身なので文句は言えない。
「あーあっ、『火炎』とか『溶解液』があったらなぁ・・・」
少しは楽できたのに。
そう思いつつひたすら木に蹴りや体当たりをし続けた。
次回更新は3日後の予定です