323.上陸してみた①
「ふっふーん♪、ふっふーん♪」
一人陽気に鼻歌を歌いながら船を走らせるココア。目的地は彼女の気分次第なのでどこに向かっているか分からない。
どこに向かっているか聞くだけ無駄なので、ボーッと空を眺める。
どうせそれしか出来ないし。
「そろそろ下ろそうか?」
「おー、頼むわ」
罰として吊し上げられた僕をなまけものが下す。罰と言っても数分なのでそれほど意味はない。ただの遊びみたいなものだ。
「ありがと」
「おうよ。まぁ今回はこれで済んでよかったな」
「聞くけど僕ってそんなに分かりやすい? ユウさんにすぐバレんだけど」
「さぁ? 俺らとは見てる時間・・・いや見方が違うんじゃね?」
「見方?」
「ほら、ユウって剣道してるだろ。だから相手の癖というか、ちょっとした動きとかを見抜くのが上手いとかさ」
「ああ、成程ね」
「・・・まぁお前に関してはプラスアルファがあるだろうけどな」
「何だよプラスアルファって?」
「さぁな。本人に聞いてみたらどうだ?」
「今は無理」
まだユウさんの機嫌が直ってない気がするし、下手に近づかない方が良さげだ。
謝れば済む話ではあるけど、とりあえず今はちょっと声をかけずらい。
「ふーん・・・。まぁ本人今落ち着く為に始めた釣りで釣れなくてイライラしてるし、その方が良いかもな」
そんな危険度MAXに聞けと言ったのか? なんて危ないことを。
「まぁお前は今後を考えてアイツのご機嫌とりの方法を考えといた方が良いかもな」
「え? うーん・・・確かにそうかも。何かある度にこうなると戦闘に影響出るしなぁ」
「・・・・・まぁ、そうだな」
「島はっけーん!」
なまけものが何言ってんだこいつと言いたげな顔をしたので、一瞬間違ったかと思ったが、ココアの言葉に頭を切り替える。
急いで船の前へ移動し前を見ると、すぐ目の前に島があった。発見どころかもうすぐに上陸できる距離だ。出来ればもう少し早く言ってほしいね。
「あの島に行くのか?」
「ボーケンの匂いがする!」
「あっそ。まぁ何かありそうな大きさではあるな」
島自体は、一周ぐるっと走っても1時間そこらで行けそうな大きさかな。真ん中が少し小高くなっており、全体的に木が生い茂っている。ぱっと見は特に何もなさそうではあるが、何かはありそうな気がする。
さて上陸の準備をと思ったら、船が大きく揺れた。
「じょーりーっく!!」
「おいコラ、ココア! 座礁してんぞ!!」
ガガガガガッ!っと船底を擦るような音と共に船が揺れ続ける。船の後ろからユウさんの驚く声が聞こえるがそれどころじゃない。急いで船を降り、潜って船底を見ると、案の定浸水していた。
「ココア浸水してる!」
「うっそー!? 何で!?」
「いや当然だろがっ!」
「じゃあ壊れる前に消さなきゃ!!」
「おい待てっ! もうちょっと待てぇ!!」
慌てているのか、ワザとなのか、ココアは何のためらいもなく船を送還した。当然乗っていたなまけ達は全員空中へと投げ出される。
しかし落ちるのは、なまけものとユウさんだけだ。
「あー! ユウさん!!」
座礁するほどの浅瀬とは言え、足がつくほどの深さではない。
慌ててユウさんを拾いに向かった。
次回更新は3日後の予定です