318.海戦してみた⑨
~所変わって、船の上~
「これはあたしの船にするの。だからさっさと頂戴!」
「い~や~だ~ね~! 馬鹿だろお前!」
「馬鹿はそっちでしょ! ばーかっばーかっ」
「馬鹿と行ったほうが馬鹿なんだぞっ!」
「先に言ったのそっちじゃん。馬鹿じゃないの?」
「・・・・・」
目の前の子供の喧嘩のような光景。どうしていいのか分からない。
KASUTAROUとの戦闘に入ったが、ずっと口うるさくこっちを罵倒してくるのでココアが言い返した途端これだ。
因みにこいつ物凄く弱い。攻撃はワンパターン、回避はバリア頼みで避けもしない。なので適当に相手の攻撃を躱しつつ、バリア間に合わない程速い魔法を撃ってたらもう虫の息だ。最初「お前ら雑魚ざーこっ」とか言ってたし、多少は強いのかと思ったがそうじゃなかった。
ぶっちゃけ、ココアとタイマンしてもこいつ負けるぞ。
「口だけだね~」
「はぁ? 何もできないクソ雑魚のくせによく言うよっ」
「はぁ!?」
んで、それを煽ったココアとの口喧嘩が今まで続いている。待つ必要ないのだが、相手の中身は恐らく子供なので様子を見ている最中なのだ。
まぁぶっちゃけ攻撃するタイミングを見失っているだけなんだが・・・。
「おいココア。お前いい加減しとけ。子供なんだから言わせとけば良いだろ・・・」
「うっさい! おっさんが!」
「!?」
何故俺に口撃が? というかそれ言ったらおまえおばさんだぞ。
「おっさん! おっさん!」
「うっせぇ!!」
KASUTAOUは黙ってろ!
しかしコイツは弟達を相手にしてる感じがして疲れる。まぁアイツらで慣れている分それほどイライラしないのは救いか。
「クソ親父~」
「ハゲー、クソハゲー」
「喧嘩はどうしたんだよ・・・」
そしていつの間にか罵倒の標的がこっちに切り替わった。面倒な・・・。
しかし俺はおっさん・・・つまり大人だ。いちいちガキの言葉で怒ることはない。丁度いいしここは大人の対応を披露しようではないか。
なまけには無理だって? 簡単さ、KASUTAROUを魔法でオーバーキルし、頭に乗っていたココアを海へと投げ捨てるだけなのだから。
「ふっ、ミッションコンプリート」
静かになった船に上で1人決めポーズ。
怒らず冷静に対処、これが大人の完璧な対応だ。たとえ過程に多少の攻撃があったとしてもそれはそれ。まぁ躾ということで問題はなし!
「それ暴力振るう大人の言い訳じゃない」
「・・・真面目に返すんじゃない。あと蹴るな」
いつの間にやら海から戻り、連打を繰り出してくるココアをあしらう。本人は海へと投げ捨てられたのが気に入らないのだろうが、今回はおまえが悪いぞ。
「というかほら船空いたぞ。敵が誰も乗っていないのが奪う条件の一つだからな、欲しいなら早くしろよ」
「あっ! うん!!」
船が残っているのは持ち主のKASUTAROUが消えて数分程度、そのうちに奪わないといけないのでココアを急かす。
ココアはすぐさま舵へと移動してようやく船をゲット・・・しないな。なんか舵の周りでウロチョロしてる。
時間も無いので直ぐに側に寄り、
「どうした?」
「持ってもあたしのにならない・・・」
「持ち続けろ。ならゲージが出るだろ? それがいっぱいになるまでな」
「出ないよ?」
「出ない? 何で?」
「知らない」
出ない理由をすぐさま考える。
持ち主は倒した。敵のチームプレイヤー達はポンタ達と空の上で誰も居ない。持ち主不在で船が消えているわけでもないし、時間も余裕がある。
それ以外の条件として、こっちが船持ち過ぎとかあるけど、どれもココアには当てはまらない。
となると、
「『猛毒液』!」
「!?」
気付いた時、マストの上から濃い紫色の液体が俺らの上にばら撒かれた。
次回更新は三日後の予定です。




