315.海戦してみた⑥
「ふげぇ!?」
突如消えたユウさんを探そうと周囲を見渡した直後、背中にユウさんが着地。今日一の痛みが体中を駆け巡る。
不意の衝撃程ダメージのデカいものは無い。
「あ、ごめん」
「・・・い、いいよ」
「じゃあ合わせてごめんだけど、直ぐここから離れて。というか止まっちゃダメ」
「・・・う、うい」
言われた通り急いでその場から移動する。こちらが逃げたと判断したのだろう、すぐさま・H・が追ってくる。とはいえ速度はこっちの方が速いので追いつかれはしない。
「さっきの何?」
「こころんの超高速移動の突進攻撃。回避できなくて『蜃気楼』使っちゃった」
「それで落ちてきたんだ」
咄嗟の『蜃気楼』で移動先の設定が間に合わなかったそう。結果真上に移動したため僕に落下ダメージがきたようだ。しかし横に移動していたらそのまま落下してユウさんは海に落ちていただろう。
「それでこころんは?」
1人突進してきたということは、乗っていたノリタマスケから降りたということだ。攻撃外してそのまま落ちたか?
「ううん、まだ飛んでる」
「えっ? 飛んでる?」
ユウさんは一点を見ながらそう返す。
何言ってるのかと思い、思わず止まってしまった。
「!? ダメ、ポンタ下っ!!」
「っ!?」
慌てたユウさんに思いっきり踏みつけられ、反動で少し降下、ユウさんは即座にしゃがみ込む。
直後ユウさんの頭上を黒い何かが通り抜けた。デカい砲弾のように見えたそれは大きく弧を描きながら後ろから迫っているノリタマスケに着地した。
「な、何あれ・・?」
「こころんよ。よく分からないけど高速で飛べるスキルのようね」
「ミサイルじゃんあれ」
アイツ水関係の魔物だろうに、飛べるとかずるくない?
しかも物凄く速いとかおかしくない?
「『魚雷突き』だっけ? 名前から本来は海の中を高速で動くスキルなんだと思うわ」
なら空中での使用は禁止にしておいて欲しいところだ。まぁ恐らく運営としても想定外の使用方法だろうし、取り敢えず文句言って直してもらう。
今のところこころんは再度飛んでくる様子はない。タイミングを見計らっているのか、SGの余裕がないのどちらかだが、さっきの使用タイミングからして前者な気がする。あまり不用意に近付かない方が良さそうだ。近距離だと反応できん。
しかしその考えをユウさんは否定した。
「いいえ、近付きましょ」
「いや、死ぬから」
「大丈夫よ。注意してればカウンターできる」
「マジで!?」
「だって『雷斬』や『縮地』と比べたら遅いもん」
「あ、そうですか」
遅いとは言うが僕は目で追える程度で、距離にもよるけど反応出来ても対応は出来ない。
確かに目で追える分、消えたように見えるほど速い『縮地』などと比べると確かに遅いが、対応できるか否かで聞かれると大して変わらない。
ただユウさんは自信ありげなので、ここはユウさんの意見を採用しよう。
「じゃあさっきと同じくらいの距離までお願い。あの距離なら対処できるわ」
「分かった。ところで他のプレイヤーはどうするの?」
近付くのはいい、でも相手は4人いる。ユウさんがくくるんの対処するとして残りは?
「ある程度は対処するけど・・・宜しくね」
「・・・ですよね~」
そんな気はしてた。さて、どうしようか。
次回更新は三日後の予定です