309.船を襲ってみた②
「掃除かんりょー!」
氷の壁で船員達を海へと押し出したココアがふぃーっと息を吐く。「いやまだ残ってんだけど・・・」と言わずに残りの船員達を咥えて海へと捨てる。前と同様だ、やはり船乗りは大したことない。
何故か彼らは全員泳げない為、落ちたら数秒後に即死してくれる。しかし今回も思うけど、軽装の鎧着ているとは言え、誰一人泳げないとか船乗りとしてどうなのよ・・・。
「 おっ船♪おっ船♪」
「舵輪触ればゲットできるぞ」
「だっりん♪ だっりん♪」
「待った!」
なまけものが舵輪の場所まで案内し、ココアが浮かれつつふらふらとついていくので慌てて二人を止める。どうやら2人は終わった気でいるようだがまだ終わっていない。
船乗りが前と同様なのだ、となると前の使用人に代わる何かがまだ居る筈だ。
「何だよ?」
「だよー?」
「まだ面倒なのが多分残ってる。ほらまだ船の主人を倒してないだろ?」
「・・・そうだったな」
なまけものも思い出したようで、案内を止める。
「で? ユウは何処行った?」
「? さあ?」
さっきまでその辺に居た筈だが、今見渡しても居ない。
「落ちたんじゃないかな~?」
「なら面白いんだがな。生きてるからそれは無いな、・・・恐らく船のどこかに居るはーー」
ドゴォォォン!!
キョロキョロと全員で見渡していると、船後方の船室が吹き飛んだ。びっくりしてそちらを見ると、船室だった物の破片と一緒にユウさんが吹き飛んでいる。
「おい、海へ落ちるぞ!」
なまけものの声を聞く前に『縮地』で先回りする。そして背中でユウさんをキャッチ・・・は失敗、思ったよりも飛距離が無かった。
すぐ横を落ちて行くユウさんを追い、海面すれすれで何とか左手を咥え着水を免れる。
「あたたっ、ごめんポンタ」
「何があったの?」
ユウさんを背中に載せて状況を聞く。どうやら船乗りを探しまわっている内に、船室にボスがいるのを見つけたらしい。で、そのまま戦闘を開始したそうだ。せめて一言くらい言ってからにして欲しい。
「ごめん。でもすぐ終わると思って・・・」
「終わったね。船室が」
マストも無いし、側面は大きく損傷、唯一の船室は消し飛んだ。ココアには悪いけど、もうあの船は諦めた方がいいのかもしれない。
「HPは?」
「ガードしたから大丈夫」
爆発に巻き込まれたので結構ダメージ受けたのかと思ったが、ガードはしたようでそれほどでもなかった。ただ爆風が余りにも強すぎるようで吹き飛ばされたらしい。
「動き遅いけどかなりパワーあるわ。当たらないようにね」
「了解」
今度はパワー系か。まぁ動き遅いのなら何とかなりそうだ。
と、そこになまけものからチャットが届く。
なまけもの :無事かー?
ポンタ :ギリね。そっちは大丈夫?
なまけもの :ああ、うん。もう終わった。いや終わってた、か
「「は?」」
終わった?
そう言われて船の方に顔を向ける。そこでなまけものの言葉の意味に気付く。ユウさんも気付いたようで天を仰いだ。
その後は無言でなまけものの横に移動。なまけものは本来であれば船の中心だった辺りで、折れて海に沈んだ船の後方を眺めていた。
視線の先に何かボスっぽい服装の人間が浮いている。
「落ちたのか?」
「ああ、船の半分と一緒にな。後は他と一緒だ」
奴も泳げなかったらしい。
「ココアは?」
「そこ」
そしてなまけものが指差す先に氷の彫像のようにピクリとも動かないココアが居た。
「なんかごめん」
取り敢えず謝った。
次回更新は3日後の予定です。