307.船に乗ってみた
「いいなぁ~いいなぁ~!」
船をぐるぐる見て回るココアを眺めながらなまけものが説明する。
「俺あの時所有者になったろ? どうやら所有者になると『呼出』スキルが付与されるらしいんだ。で必要な時に呼び出せるようになる。・・・SGいるけどな」
「なるほどね。流石にログインの度に奪えは無かったか。まぁ面倒だもんな」
「ああ。ただ奪われるということもある。どうやら冒険者や他のプレイヤーに負けると奪われて消えるらしいから気をつけろよ」
「じゃあ今なまけ倒したらこの船僕のになるのか」
「いいわねそれ」
「じゃあなまけ死んで」
「パーティメンバーじゃ奪取は無理だから船から落とそうとすんな! 大体落ちても死なんから時間無駄にするだけだろが!」
残念。
しょうがないので他にある船にするか。
「あれって全部プレイヤーか?」
「中央マスト天辺の旗の縁で確認できるぞ。白いのが冒険者、赤はプレイヤーな」
成程旗で確認するのか。
「じゃあ見える範囲ではほとんど冒険者のようね」
見渡す範囲で確認できた10隻近くはほぼ縁が白色なので冒険者の船のようだ。
ただ旗以外でも動きで大方どっちか分かる。冒険者の船は何をすることも無くただ漂っているようにゆっくりしているが、プレイヤーの船は基本全速力。目に見えて動きが違う。
「どっち狙う?」
「とりま冒険者で。プレイヤーの奪ったら後が面倒そうだし」
「じゃあ私たちの分、それぞれ一隻ずつ奪っておきましょ。そうすればなまけいなくても海渡れるわ」
「そうだね」
まぁ僕飛べるから海渡る為だけなら船要らないんだけどね。
「で、3人はどの船が良いんだよ」
「「「あれ」」」
全員同じのを指した。一番装飾が凝った感じの大きな船を。
そしてそれぞれが顔を見合わせ、
「ポンタ、ここは譲ってくれるわよね?」
「いやいや、なまけにこの船取られたしあれは譲ってほしいかな」
「ダメだよ! あれはあたしの!」
「「「むぅ・・・」」」
にらみ合いが続く。誰も譲ろうとしない。
しかし十数秒続けた後、このままだと終わらないと悟り大きくため息を吐いて僕は辞退した。
どうせ持っててもそうそう使わないだろうし。
「・・・なら私も降りるわ。実際持っててもあまり使わなさそうだから」
「ほんと? ありがとー」
喜ぶココアを見て僕らはやれやれと首を振る。
「お? 終わったか? なら突撃するけど準備いいか?」
「ああいいよ」
「もちろん」
「はいはーい」
「よっしゃ! じゃああの船に横付けするから乗り込め!」
なまけものは船の速度を加速させた。
次回更新は3日後の予定です。