300.台座を満たしてみた
[力を欲する者、台座を満たせ]
「どう言うこと?」
「そのまんまだろ。要はパワーアップしたけりゃ台座に何かしたらいいんだろ」
「[満たせ]った書いてあるから一杯になるまで何か入れたら良いのかな」
「入れるって言ってもこの辺水しかないわよ?」
「水でいいんじゃね?」
「でもさ、どこ入れるの?」
台座は四角柱で何かを入れるところなどない。模様がある以外は、宝玉が嵌っていた窪みしかないのだ。
まさかとは思うが、この窪みに入れろと?
「しかないだろ。ほらユウ、汲んで入れてくれ」
「あんたが汲みなさいよ。手でも濡れると弱体化するし嫌よ」
「お前、このホネッホネの手で水が汲めるとでも?」
「頭蓋骨で汲めるでしょ? ほら脳の位置なら少し溜められるわ」
「それは何か? 俺に逆立ちしてまで汲めと?」
「出来ないの?」
「出来るわぁ!」
そう言った直後、何の躊躇いもなくその場で逆立ちするなまけもの。
無理だろなと思った矢先、ドシンッと音を立てて地面に転がった。羽があって重心バランスが現実とは違うのだ、予想通り逆立ちしたものの背中から地面へと叩きつけられていた。
なまけものは僕らの視線に赤面しつつ、
「じ、実際は出来るんだぞ!」
「はいはい」
「どっちでもいいから魔法で水出して」
「確かに!」
要は満たせばいいのなら、わざわざ汲む必要なんてない。なまけものなら知っててやらなかった気がしてたのだが、そこまで頭が回っていなかったようだ。行動も単純だし恐らくもう眠気が限界なのだろう。
夜中までやってるとたまに今のようななまけものが出てくる。ハイテンションで好き勝手やりまくり、急に寝落ちするのだ。
「言っておくけどフルパワーでやるなよ?」
窪みはお椀程度だ。『アクア』1発で十分すぎる。
忠告すると、なまけものはふふふ、と笑い出した。
「俺だって馬鹿じゃねぇ、とっておきのフルパワーなんぞ滅多に使うわけないだろ」
「さっき無駄打撃ちしてたよね?」
「そうだっけ?」
十数分前のことすら忘れたか。
ダメだこいつ、早く寝させないと。
「ゲヘヘ、満たしてやるぜぇ・・・」
その本人は悪い顔をしながら『ファイア』を窪みに放っている。水って言ったのに・・・。
流石におかしいと感じたのか、ユウさんも心配そうな顔で聞いてきた。
「ね、ねぇ? なまけはどうしたの? さっきの逆立ちで頭打った?」
「多分ほぼ眠ってると思う」
「ああ〜・・・、眠くなると何してるか分からないアレの状態ね」
「多分急に寝て動かなくなるからその時はフォローお願い。こっちも気にしとく」
「分かったわ」
寝たら勝手にログアウトされる仕組みではあるが、直後ではない。その間に死ぬ可能性もあるので注意が必要なのだ。普段なら放置して行くが、この後恐らく戦闘になりそうなので下手したら死ぬだろう。
「あれ? ボス戦ないって言ってなかったっけ?」
「いやどう見てもボス戦でしょ・・・」
なまけものは雰囲気的に無いとか言ってたが、今まで通り何かを得る時には必ずボスがいた。なので今回もそうだろう。
その僕の予測を裏付けるかのように、目の前で火柱が立ち昇った。
次回更新は明々後日の予定です