298.洞窟を進んでみた②
「酸欠になってんじゃねぇか!!」
「どへぇ!?」
死にそうになりながら浮上した矢先、真っ先に見たのは辺り一帯燃える景色。どうやらなまけものが戻る前につけておいた焚火の火が、周囲の苔に燃え移り周囲は火に包まれていた。それにより煙が滞留しており、折角の空気が吸いにくい。あと臭い。流石に酸欠にはなってないが、息苦しいという点では一緒だ。
急いでなまけものに消火を命じる。
「・・・折角暖まれるように着けといたのに・・・」
「いや燃えすぎだから! やるのはいいけど、せめて周りくらい苔取っとけよ・・・」
「いやほら、苔だし燃えても一瞬かなって思ってたわ」
「・・・確かに」
確かに苔ってそんなに燃え広がるイメージは無い。水辺にあるもので、濡れていることも多いので燃え広がるイメージが無い。ぶっちゃけさっき燃やしてたけど、「おー燃える燃える」と感心してたくらいだ。
「苔ってよく燃えるんだな」
「新たな発見。まぁ実際はここまで燃えないだろうけど」
「そんなことどうでもいいから早く消して!」
「ういっす! 『アクアx3』」
「あ、馬鹿っ!」
ドバシャァ!!
ユウさんがイライラする前にと思ったのだろう、なまけものがフルパワーで水の全体魔法を使いやがった。
僕らが居た空間そのものを覆い尽くすほどの水魔法が炸裂し、天井の苔まで燃え広がっていた火を全て消す。
火は消えたが僕らを含め水浸しになった。
「「・・・・・」」
「おっとすまん。でも元々濡れてたしいいだろ?」
まぁその通りだが、水をいきなりぶっかけられるのは嫌なんだけど・・・。あと背中のユウさんから殺気が凄い。後でなまけものは死ぬだろう。早よ逃げとけよ。
「ほれみろ、あそこから先進めるんだよ。ちょっと歩けば広くなるぞ」
と、そんな僕の気もユウさんの殺気も気付かないのか、なまけものは呑気な口調で奥へと続いている道を指す。多少狭そうだが、なまけものが言うにはすぐに広くなるとのことだ。
広くなるのか・・・となると、
「ボス?」
「は無いと思う。そんな雰囲気は無かったし」
となるとここで回復は不要か。
今のままだとユウさんが戦力外だからボス戦は避けたい。だがそうで無いのならここで待つ時間は無駄だ。既に結構時間を使っているから、急いでおきたい。
「今何時かな?」
「・・・12時は回ってんな」
「あ〜・・・、もうそんな時間か〜」
「急いだ方が良さそうか?」
「かな。朝起きんと親うるさいし」
「私は平気。起こされる事ないから」
「俺も」
「いいなぁ・・・」
ウチだと叩き起こされるから嫌なんだよな。特に今はあいつも居るし、何されるか分からん状態だ。
2人には悪いがそう言うわけなので僕急いで先へと進むことにした。
そして目の前に広がる大空間。
天井は一気に高くなり真ん中の大きな穴から空がよく見え、そこから差し込む光で洞窟内もよく見える。地面には窪みに多少の水溜りがあるが、問題はなさそう。
そしてその広場の中心に、何やら台座らしきものが。
「あれ何?」
「さぁ? まだ俺もよく見てねぇ」
遠目に見ても明らかな人工物。腰くらいまでの高さの上に金色の何かが光っている。
それは自然に出来たであろう周囲の景色からすごく浮いていた。
次回更新は明々後日の予定です