295.魚釣りを始めてみた③
「「ちっさ!」」
「いよねぇ。やっぱり」
結局タモは見つからず、地引網でもするのかと言いたいくらいの大きな網を持って来た2人は僕の釣った魚を見て声を合わせる。
僕はそんな2人に、「それ使うくらいなら樽で良くね?」と言い返したい。とりあえず釣った魚は近場に残っていた小さな樽に水を入れて泳がしている。
「あーはははは!! こりゃ勝負決まったな!」
「ふふっ、そうね」
「釣った僕の勝ちと言うことかな」
「な訳あるか! そんなちっさいんだぞ、お前の負けだ!」
まだ釣れていない分際でよく言えるね。まぁいうのはタダだしいいけど。
なまけものは一通り笑うと、まじまじと釣った魚を見る。
「・・・でもレア度的にはかなりヤバそうだがな。気色悪いくらい綺麗な虹色だしよ」
「魚にレアリティとかあるの?」
「さぁな、そう思っただけだ。まぁ毒魚なのは確かだが」
「それはわかる」
鮮やかすぎるからね。毒の経験値稼ぎの為に後で頂こう。
それよりもさっきから気になっているのだが、
「ところで二人ともさーー」
「うん?」
「何?」
「自分の釣り竿大丈夫?」
「「!? しまったぁ!!」」
手伝いに来てくれたのは知っているが、2人は結構な時間放置している。僕の質問で慌てて2人は自身の竿の所へ戻っていった直後、
「食われてるー!」
なまけものの絶叫。まぁ奴はそうなると思ってたので特に驚きはしない。後はユウさんだが、
「あれ? 掛かってない?」
「と思ったんだけど・・・なんか動かない」
「え? そうなの?」
凄くしなっているユウさんの竿。借りて引き上げようとリールを巻いてみたが、全くリールが動かない。糸は残っていて、出す方分には動くが巻きとれない。
「竿先が動いてないから魚じゃないわね。根掛かりかしら?」
「そうかも。ちょっと見てこようか?」
「お願い」
根掛かりがいまいち何か分からないけど、言葉的に海底の海藻とかに引っかかったということだろう。
リールに残る糸の量的にそれほど深くないのじゃないかと勝手に判断し、海へと飛び込む。まだゲーム内は昼の為、海の中は思った以上に明るく、ユウさんの釣り糸を辿りながら潜っていく。しかし潜水時間のメーター的にあまり深くは潜れなさそうだ。思った以上に減りが速い。
(ん? 何あれ?)
潜水メーターが残り半分手前になったところでユウさんの釣り糸の先に何かが引っかかっているのが見えた。海藻ではない、何か四角い箱のようなものだ。海底が隆起した部分にポツンとひとつある。いや、これはゲームなので置いてあると言った方がいいのだろうか。その箱の角の部分でエサのミミズがここだと言わんばかりにゆらゆらと揺れている。よくもまぁあんな出っ張りのない角によく引っかかったものだ。
急いでその箱のすぐ側まで寄り持ち上げる。大きさは一辺1m程のほぼ立方体。
中に何か入っているのだろう、そこそこ重い。とはいえこのまま持ち上げて行けそうなので、左右の首でホールドしてそのまま浮上。ユウさんらの手を借りて船の上に引き上げる。
「ふぅ、疲れた」
「お疲れ様。これ何?」
「ユウさんの釣針、これに引っかかってた」
「宝箱か!?」
「さぁ? でもここ見て、鍵ついてる」
「「おおっ!」」
全く気付かなかったがユウさんが指さすところに錆びた南京錠がついている。
全員でそれを確認した後、互いに顔を見合わせる。
「一応聞くけど・・・開ける?」
「「当然!!」」
その瞬間、全員釣り大会のことは完全に頭から消えた。
ついでに虹色の魚についても頭から消えた。
次回更新は明々後日の予定です