294.魚釣りを始めてみた②
「すまんユウ。また食われたからエサ頼む」
「また!?」
船をAUTOにしてなまけものも釣りに参加。よくそんなこと知ってたなと思ったら、自分も参加したくて必死に探したようだ。
よくよく考えれば、長時間舵から離れられない、それ以外何もできないってのはゲームとしてどうなのと思うので、確かに自動運転があってもおかしくない。
そのなまけものは現在魚にエサやり中。何故かなまけものだけ、エサを簡単にとられる。その度にユウさんがなまけものの釣り針にミミズを刺していた。
「何であんたたちは触れないのよ」
「いやだってキモイじゃん」
「慣れたら大したことないでしょ! 大体これゲームなんだしこれも本物じゃないじゃない」
「うっ、まぁそうだが・・・。何と言うか見た目てきに・・・ほら、なぁ?」
「なぁ? じゃないでしょ、もう! ・・・はぁ、ほら出来たわよ」
「お、サンキュー」
なまけものは受け取ると嬉々として竿を振る。僕同様なまけものも初心者なので、取り敢えず遠くに針を飛ばせば何か連れると思っているのだろう。着水地点をみて「よっしゃ。結構飛んだぜ」と1人騒いでいる。
「もうとられないでね。つけるの面倒だから」
「おー! 任せろ」
「その任せろはもう4回聞いた」
「はぁ・・・ならまたすぐとられそうね」
因みに餌をとられるのはなまけものだけ。僕とユウさんはとられるどころか魚が寄ってきている気配すらない。魚が食いついてしなるなまけものの竿と違い、こちらは微動だにしない。波で少し揺れる程度だ。
何が言いたいかと言うと・・・ぶっちゃけ面白くない!!
はぁ・・・とため息を吐く時、なまけものと目が合った。直後鼻で笑われた。
「ふっ、ポンタは釣り全然駄目だな」
「今日初めて竿持つような初心者が何言ってんだか。大体僕はそっちと違いまだエサとられてないぞ」
「そりゃ魚が食いついていないからな。とられる以前の問題だろ?」
「エサの無駄遣いするへたくそよりよりはマシだ」
「言うじゃねぇか。そこまで言うのなら俺よりもデカいの釣れるんだよなぁ?」
「おうよ」
ニヤリと笑うなまけものに対して立ち上がる。
「なら・・・」
呼応しなまけものも立ち上がった。そして何故かユウさんも立ち上がる。ユウさんも僕らの顔をチラッと見つつニヤリと笑う。
こちらもニヤリ笑いを返す。
「「「誰が一番デカいの釣れるか勝負だ(よ)!!!」」」
まぁ茶番だ。
よくある釣り勝負をするためだけのやりとり。まさかユウさんまで加わるとは思ってなかったけどね。
ただやると決まれば参加してくるだろうとは思ってたが。
「俺船尾」
「私反対側にするわ」
「じゃあ僕ここでいいや」
そうと決まれば各自の行動は早い。2人はすぐさま各々の釣りポイントへと移動する。
「エサとられたら脱落。一番デカいの釣った奴が勝利な!」
「了解」
「いいわよ」
そして始まった暇つぶしの釣り大会(参加者計三名)。さっきまでのワイワイした雰囲気は消え、各自ひたすら自分の竿の先を注視する時間が続く。
「釣れないなぁ・・・」
僕は定期的にそう呟きつつ竿を持っている首を動かしもう一つの首でリールを巻く。そして引き上げ、再度投げる。
ユウ :どお? 釣れてる?
なまけもの :無言の時点で察しろ
ポンタ :上に同z
チャットを返している時だった。竿の先がピクンと動く。びっくりしてチャットが中途半端になったが関係ない。掛かったと思い、おもいっきり竿を上にあげた。
すると途端にに竿がしなる。
「あ、来た!」
後で思い出したが、これは餌を突いている状態でまだ食いついていないので普通は引き上げない。しかし今回は偶然上げた時に針が引っかかってくれたようだ。
しかし思った以上に引きが弱いな。テレビだと大変そうに見えるのに、実際はこんなものだろうか? あ、ゲームだからかな?
「来たのか!?」
「来たの!?」
冷静になり、思った以上に軽いリールを巻いていると寄ってくる2人。僕の様子を見てすぐさまユウさんが指示を出す。
「なまけ、タモ用意して!」
「おっしゃ! タモだな!」
今日初ヒットだからか、無駄にテンション高い2人。
ユウさんの指示に従い、なまけものが船室へと突撃。少しして飛び出してきた。
「・・・タモって何だ?」
「タモはタモでしょ!」
「だから何だよタモって!」
「すくうやつ!」
「すくうやつ! ・・・これか!?」
「それ漁する時の網じゃない! もっと小さいの!」
「でもあとすくえるのは樽しかねぇぞ!?」
「はぁ? 嘘でしょ!? ちょっと待って私も探すわ!」
どうやらタモが見つからないらしい。ユウさんも船室へと突撃していく。どうでもいいけど2人とも自分の竿は大丈夫なのだろうか? あと、タモって何だろう。
「タモ無いじゃない!」
「だからタモって何だよ!」
「だからすくうやつ! こう、柄があって、先に魚を入れる網がついてるーー」
「虫網みたいなのか?」
「そうそれ! それの魚版!」
あ~・・・あれね。釣り番組でよく出てくるあれか。
タモを頭に思い浮かべていると、すぐ近くまで迫ってきていた魚がついに海面から姿を現した。竿を振り甲板へと引き上げる。
「釣れた・・・けど・・・」
甲板には全長10cmあるかどうかの小さい虹色の魚が助けてと言わんばかりに跳ねていた。
次回更新は明々後日の予定です