290.使用人と戦ってみた⑧
「SG無くなった」
「了解。私ももうあまり無いわ。本体も残ってるし、もう分身に使う余裕はないわね」
「じゃあ逃げる?」
「やるに決まってるでしょ。あ、言っておくけど死んじゃだめだからね」
「了解」
そう言って最後の分身へと突っ込む。相手はこっちの行動を見た瞬間スキルの短剣を僕向けて飛ばしてくる。軽々と躱し『スケイルショット』をお返しする。当然ながら簡単に躱された。
だが、それは囮だ。
回避した方向へすぐさまユウさんが跳ぶ。そして横薙ぎで分身を上下真っ二つにした。きっちりと依り代の短剣も真っ二つになっている。
これは僕らが普段よくやる戦法だ。冒険者は連続回避を基本しない。なので適当に撃った『スケイルショット』を躱した直後を狙って倒す技。相手の回避方向や方法で直後の対応が変わる為、瞬時の判断力が必要になるが、ユウさんであれば問題ない。今のようにすぐさま最適な対応をしてくれる。
「あと本体っ!」
空中のユウさんを回収すると、すぐさま本体へ行けとの指示。すぐさま本体が居た方向を見ると、さっきまで動かず傍観していた本体が、構えて攻撃に備えている。手にはまた短剣。ほんと何処に隠し持っているのやら。
正直今からまた本体との戦闘は正直厳しいが、ハンセンもHPを『ライフインクルード』で分け与えているため、残りは少ない。恐らく1~2撃で勝てるだろう。
とはいうもののこちらは2人とも1撃で死ぬけどね。
それを知ってかは知らないが、ハンセンは少し腰を落とすとそのまま突っ込んできた。さっきみたいにちまちま短剣を投げてくるのかと思ってたけど残りHPのから長期戦は不利と判断したのかな。
なら、
「こっちも突っ込むわよ!」
「おおっ」
こっちも突っ込んでカウンターを狙う。
一気にハンセンとの距離が縮まり、ユウさんが最後の一撃の為に振りかぶる。狙いはハンセンが短剣を振りぬいた後だ。僕は短剣がどう振られるかに集中しつつ、攻撃に備える。
しかし、ハンセンは持っている短剣の1本を振らずに投げた。
「!?」
予想外だったが、動きに集中していた為何とか躱す。しかし躱した直後の僕の目の前に新たな短剣が飛んで来た。
『ス、『スケイルショット』ォ!』
咄嗟に出した『スケイルショット』でその短剣を弾く。勢いを失った短剣はスキルで作った短剣だった。どうやらさっきの僕らをまねて回避直後を狙ったようだが、甘かったな。
「ユウさん!」
「『炎撃』!」
ユウさんのSG的に最後の『炎撃』。外せばもうスキルは使用出来ないが、タイミング、攻撃直後の相手の態勢からユウさんなら確実に当てれる距離だ。
だが、
『甘いっ!』
「ああっ!」
『炎撃』が当たる直前、ハンセンが消えた。同時に空ぶったユウさんが声を上げ、ハンセンがさっき投げた短剣の方へと顔を向けた。その行動で僕もハンセンが転移したと気付き、同じ方向を見る。
すると遠くに何事もなかったかのように空中を跳ぶハンセンの姿が見えた。
「やられたっ」
「しまった。あれ回避用かぁ」
咄嗟に避けずに受け止めればよかったと思うが、受けたら死ぬので仕方ない。それに今は後悔どころではない、すぐさま次の攻撃に向けて態勢を変えーー
ドォン!!
『な・・・ん、じゃと?』
た僕らの目の前で、ハンセンが何かに貫かれた。ぱっと見、雷の矢のような魔法がハンセンを斜め下から貫いて上空へと消える。あの技に見覚えは無いが、出来そうなやつは知ってる。
そいつを頭に浮かべながら、飛んで来た方向を見るとやはり居た。
「っしゃあ。当ててやったぜ!」
そう言いつつこちらが気付いたことに気付いたなまけものが、ぐっと親指を立てた。
次回更新は明々後日の予定です