286.使用人と戦ってみた④
「さて、どうするか・・・」
とりあえずハンセンの移動スキルの解明と対策が必要だと分かった。ああも簡単に消えられると、対策しないとまともに攻撃を当てられん。
対策せずとも移動直後に攻撃を当てられれば良いのだが、確実に運任せになる。その場合多分一生終わらないだろう。
消えたところを見るにあの移動は完全に転移系だ。転移系は『蜃気楼』以外で見たのはは初めてだ。
「まずどういったスキルか知ることか・・・」
とは呟いたものの、知る手がかりはゼロ。いきなり背中に乗られているところを考えると、好き勝手転移出来ると考えるのが普通だ。とはいえこれはゲームだ。好き勝手転移できるなんて強すぎるスキルには何かしらの制限が付くとか何かしらある筈。なかったらクソゲーと叫んでやるわ。
僕が持つ『蜃気楼』であれば、連続使用できない、一定時間内に攻撃を受けなければ転移出来ない2点が制限になる。しかしハンセンは攻撃を受けずに転移した。その時点で『蜃気楼』のような攻撃を受けないといけないという制限は無い。
連続使用不可の制限はありそうだが、こうもすぐ見失うところを見るにその制限もないのでは無いかと思う。明らかに連続使用してるようにしか思えないし。
となると他の制限か・・・。
すぐ考えつくのは転移範囲の制限、と転移先の制限かな。後は使用により何かしらステータスに影響が出るタイプか。
いや影響出てそうに見えないな。となると範囲か転移先の制限のどちらかかな。
「!? おっとと」
考え中も短剣は止まずに飛んでくる。適当に飛び回りつつマストなどを盾に回避する。ふふふ、もうそのような短剣で僕のHPを削ることなどできはしなあたっ!
嘘つきました、慢心ダメ絶対。
「にしても・・・この短剣、本当にハンセンが投げてるのか?」
結構海面スレスレ飛んでたはずなのに真下から飛んでくる短剣。普通に考えると海面に立って投げることになるので、ハンセンがそこから投げているとは考えにくい。さっきの転移もあり、てっきり転移しつつ八方から投げているものだと思ってたが・・・。
ちょっと確認するか。
「ほっ! いてっ」
そう思い飛んできた短剣を前足で白刃取り。・・・失敗し左前脚に刺さるがまぁ仕方ない。見たかったのは短剣だ。ぱっと見装飾が何もない黒色の短剣、刃渡りは短剣よりもちょっと長い程度で片刃。鍔とかつければ小刀といっても通じそうな見た目だ。
しかしただそれだけ。それ以外はいたって普通。特におかしなところはない。
「ん~。違ったかな?」
「何が? その短剣? ちょっと見せて」
「え? あ、ユウさん!」
各船のマストを足場に港から跳んできたようだ。短剣が気になるようなので渡しつつ、
「そっち終わったの?」
「終わったわよ。ボス戦したいのにポンタこんなとこで何かしてるし移動できないじゃない」
「ごめん。ちょっとあの船乗って遊ぼうかと思ってたんだけど・・・」
「ど?」
「なんか変な4人組に絡まれまして、その対処中です」
「手助けは?」
「あると助かるかなぁ」
正直一人で倒せるならそれに越したことないのだけどね。
ここで「いらない」とか言ったら待たせることになるし、あとで何か言われそうだ。それに下手したら負けそうだし。
「わかったわ。で誰倒したらいいのかしら?」
「一応これマーキングしたの。あとはあそこで結界張ってるカヌウとハンセンだけ。カヌウは放置でよさそうだから実質ハンセンだけかな」
「ランクAじゃない。楽しめそうね」
そういうけど、ユウさんも数十秒後にはイライラしてると思う。
「あっ」
「どしたの?」
「短剣消えちゃった。なんで?」
「そういうことね」
一般的に冒険者が持っている武器は、冒険者が死んで消えるときに一緒に消える。なのでハンセンが死んでいないのに短剣が消えたということは・・・。
「多分それ、スキルで出した短剣だからだと思うよ」
つまりハンセンは短剣を自身の一定範囲内に具現化して飛ばすスキル持ちということだ。
面倒さが上がったね。
次回更新は明々後日の予定です。