285. 使用人と戦ってみた③
ひゅん! ひゅん! ひゅん!
「ああ、もうっ!」
また短剣が飛んで来た。今度は上、右、下と全く違う方向から同時に飛んでくる。投げているのはハンセンだろうが、移動しながら投げてるのか姿は見えない。
だがこちらも徐々に短剣への目が慣れてきたので、はたきおとしたりと尻尾で弾いたりして回避する。
ただこの状況はまずい。のんびり長期戦をする訳にはいかないからだ。ボードーも振り払っただけだし、ガレオンも海に落ちたとはいえまだ死んでいない。このままだといずれ復活してまた襲われる。
襲われるまでにハンセンを倒せればいいが、恐らく無理だろう。だったらせめて今のうちにでもハンセンのHPを減らせておきたい。
だから必死で探すがどこにーー
「ん?」
居た。ボードーが。何故かマストに胴を貫かれてて、遠目には既に瀕死状態。持っている武器も落としている所を見るにもう戦えないだろう。
しかし何でああなったんだ? 振り払ったときにそのまま刺さったのだろうか? なんにせよ知らないうちに1人脱落で助かる。
しかもちょうどいいところに、その場にハンセンも現れた。
彼はあきれ顔でボードーの傷の様子を確認しつつ、
『何でこうなったんじゃ?』
『ひ・・・『飛翔脚』つかっ、使ったら・・・、ほう・・こう間違えて・・・』
『馬鹿じゃの』
「馬鹿だなー」
どうやら自分から刺さったようだ。たまにいるよね、自分からバックステップして落ちてく奴とかさ。まぁ自分もやるけど・・・。
『あ、あ・・の、助け、呼んで・・・』
『わしは無理じゃ。介錯ならしてやるが、どうする?』
『・・カヌウは?』
『知っとるじゃろ。あ奴は防御専門、ワシらの戦闘が終わらん限りあの結界は解除せんし、あの場から絶対動かん。ワシはあのドラゴンの相手をせんならんし、助けるとなるとガレオンにして貰うしかないの。じゃがあいつは海へと落とされたし絶望的じゃの』
『あいつ・・・泳げませんしね・・・』
『お前もじゃろ。ワシもじゃが』
ガレオン泳げないんだ・・・。海ポチャしてなんか申し訳ない。
というか全員泳げないとか何なの? 出現場所間違ってない?
『うっ!? ちくしょう・・・風で船が揺れーー』
『おお、すまんすまん! すぐに介錯したる』
『え!? い、いや! まだ死にっ!!』
嫌がるボードー
しかしハンセンはそんなボードーの首をあっさりと短剣で切断した。迷い無く切断したところに若干の恐怖を感じる。見た目穏やかな老人なのに・・・人は見た目で判断してはいけない典型だな。あれAIだけど。
まぁいいや。せっかく見つけたんだし、よそ見してる間に倒そう。そう思い『火炎』を放つ。『スケイルショット』にしたかったが、さっきの全方位発射で弾数はもう無い。全方位やめとけばよかったよ。
『ふっ、愚かな』
しかしハンセンには気付かれていたようだ。『火炎』が着弾する直前に躱される。しかも着弾時に広がった炎が目眩しとなり、またハンセンを見失った。
だが躱した方向は見てたぞ。すぐさまその方向へ首を向け、重点的に探す。しかしハンセンは居ない。
「!?」
と、その時また短剣が飛んでくる。探していた方向とは真逆だ。避けてそちらを見るがやはり居ない。そこへまた反対から短剣。
・・・いい加減腹が立って来た。
「あーもー! イライラする!!」
『ほほう、短気だの。まぁドラゴンと言えど所詮は魔物か』
「!?」
いつの間にか背中にハンセン。
言葉は彼らに通じないはずだが、怒っていると認識しているって事は、彼らからすると怒って咆哮を上げているように見えるのだろう。
だが今はそんな事どうでもいい。
「勝手に乗んな! どいつもコイツも!」
『ほっほ、『ーー』』
体を一回転させ振り落としたつもりだったが、ハンセンは落ちる前に消えた。全く避ける素振りすら見せずに消えた、あれは完全にスキルによる瞬間移動だ。
「移動スキル持ちか・・・」
何のスキルか聞き取れなかったのはミスったな。
次回更新は明々後日の予定です。