282.船に近づいてみた
予想外だった。
狙いの船が沈まないようにゆっくり乗ると同時に周囲から向けられる切先。なんか知らないけど兵士が沢山乗ってた。
誰もいないと思ってたのでちょい困惑しつつ一旦再度飛翔。コイツら誰?とか、何で人乗ってるの?とか、よく見れば何でこの船だけ動いてるんだ?とか考えるのは後回しだ。
とりあえず殲滅。
まずは目に付く甲板の乗組員を尻尾で薙ぎ払う。船にダメージが入らないように威力などの調整が難しい。船を壊さないように攻撃して来た人人から順に退船させる。まるで植えている植物についた虫をとるようなちまちました作業でつまらない。楽ではあるが。
ちっ、船が攻撃で傷付かない設定なら気にせず『火炎』をぶち撒けられるのにな・・・。
内心そんなことを思いつつ甲板に見えていた最後の1人を咥えてその辺の海へと落とす。乗組員とはいえ、きっちり武装しているので鎧が重たいのだろう。海に落とすとそのまま沈んでいった。
・・・落とす前の顔が絶望そのものだったのでちょっと罪悪感が出る。
「まぁいいや。取り敢えず甲板掃除は完了っと」
『---!!』
気を取り直して、再度甲板へと乗る。ちょっと横着した所為か、乗った瞬間船が大きく揺れた。
「おっとと・・」
『ーーー!!』
揺れが収まるのを待ち、船の後部にある室内に目を向ける。そこから声がずっと聞こえてるからだ。
となるとまだ誰かいることになるが・・・しかし、ずいぶんでかい声で怒鳴っているな。
3本あるマストを避けつつ近寄ってみると、怒鳴り声はさらに大きくなった。
『来たぞ!! さっさと排除しろ!! ワシに何かあったらどうする気だ!!!』
『し、しかし! 兵士は全て海へ落ちました! 戦えるものは降りません!』
『黙れ黙れ黙れぇええ!! 誰でもいいから早くあいつを何とかしろぉおお!! ワシに逆らう気かぁ!!』
うーわっ・・・。
聞こえてきたクズのお偉いさんが良く使う、死亡フラグ馬鹿発言。自分が助かればどうなってもいいという内心がよく分かる。姿は見えないがでぶでぶ太った、宝石ゴテゴテの悪顔親父で、典型的な成金と勝手に妄想。もちろん偏見・・・あ、誰か出てきた。見た目的に執事さんかな。
『ド、ドラゴン・・!?』
「あ、どうも~」
びくびくしながら出てきた老執事は、僕の姿を見てすぐさま腰を抜かした。そして軽く会釈しただけで気絶。少し顔が近くなったからびっくりしたかな。
と、そこへ、中から若い執事やメイドが出てくる。が、数は倒れた老執事を入れて合計4人。さっき落とした護衛用の乗組員でもあの程度だ。一般人である彼らが僕に敵う訳が・・・。
ん? 一般人?
『ハンセンさん!! しっかり!!』
『ヤベェ、とうとう逝っちまったか?!?』
『馬鹿なこと言うな!』
執事たちを見るとどこか緊張感のないやりとりが聞こえてくる。
前の村を思い出す。あの時一般人は一目散に逃げた。なのに目の前の人たちは逃げない。まだ客室にいるクソ主人の所為か? いや、それならもっと必死になるはず。馬鹿な事は言わない。
「!?」
そこまで考えた時、彼らから嫌な感じがした。なんというか、「無防備な自分達にもっと寄ってこい」という誘うような雰囲気が彼らからした。
だから僕は『スケイルショット』を放ちながら彼らから距離を取った。牽制ではない。確実に彼らを客室にいる主人諸共吹き飛ばすつもりで撃った。
しかし、『スケイルショット』は全て彼らの前で弾かれた。よく見ると何やら薄い半透明の壁が彼らを守っている。
『『障壁結界』です』
スキルを使用したのはメイドさん。さっきまで老執事を抱き起していたはずだが、いつの間か柄の長いモーニングスターを手に持って立っていた。
一つ聞きたい、
身長に近い長さの武器、どこから出したの?
『ふーん。あれ見破るなんて、あのドラゴンやるねぇ』
『お前が大根だからだろ。あの状態で冗談言うんじゃねぇ』
『はぁ!? ボートーよりは演技できてたぞ!』
『馬鹿どもが、喧嘩はアレにを倒してからにせい!』
薙刀に、直剣、短剣・・・。
やはり全員戦闘員だったか。4人・・・僕1人で行けるかな?
次回更新は明々後日の予定です




