279.謝ってみた
「何してるの?」
「土下座、のつもり」
「恥ずかしいからやめて」
「はい」
夜になり、ユウさんと合流。なまけものは1人で会うのは怖いからと呼んでいる最中。こちらの場所を教えておいたので、今頃今ダッシュで向かっている筈だ。迎えには行かない。行こうと思って早めにログインしたつもりだったのに、ログイン直後にユウさんとエンカウント。
まさかユウさんも早めに来てるとは・・・。
漏れ出てる圧が「機嫌悪いですよ」と僕に伝えてくる。
「すみませんでした。親がコンセントを抜いたので強制的にログアウトになりました。ログアウト直後は喧嘩したり、データの確認したり、朝ごはん食べたりしたり、部屋のかたずけしたりしてそちらの状態を確認するのを忘れておりました」
「そう。で? いつ気付いたの?」
「お昼前・・・です」
「そう・・・。でも連絡くれたの夕飯後ぐらいだと思うのだけど?」
「・・・それは・・・」
「んん?」
「えと、買い物したり、夕飯手伝わされたり、遊び相手させられたり、怖かったから後回しにしたり、掃除したり、テレビ見たり・・・」
「さらっと怖かった混ぜたわよね? そんなに私怖いかしら」
「怖いです。今特に」
そのニコニコ顔は駄目だ。圧が仮面をかぶっているようにしか見えない。
「そう・・・」
「あ・・・ごめん」
目の前でしょんぼりするユウさん。正直に言ったつもりだったが、傷つけてしまったようだ。そこから気まずく無言の時間が過ぎる。
どうすればいいか考えてると、救世主が乱入して来た。
「そこかぁ!! はぁはぁ・・・間に合ったか!?」
息を切らしながら駆け込んできたなまけもの。彼は僕らの様子を見て、少し考え、何か結論を出した。
「面白イベント終わってんじゃねぇかよ!! くそぉ! せっかくポンタの土下座見れると思ったのによぉ!」
「お前!? その為にそんなに息切らして来たのか!?」
「それ以外に急いで来る理由なんかあるかぁ!」
こっちはビクビクしてたってのに面白半分で参加する気だったらしい。ユウさんと先に会えてよかった。謝りたいだけなのに、なまけものへのただの見せ物になるところだった。
「ということでもう一回最初からやって下さい。ユウはさっきより攻撃増し増しで」
「「やるかぁ!!」」
「どぇふ!?」
咄嗟に頭突きが出てしまった。ユウさんの蹴りとセットでなまけものを吹き飛ばす。
吹き飛ぶなまけものを見て、ユウさんがため息を吐いた。
「はぁ・・・。なんかどうでもよくなっちゃった。謝ってももらったしね。じゃあ行こっか」
「え? あ、うん」
「じゃあなまけ連れて来てくれる?」
「りょ、了解」
取り敢えずなまけもののお陰で気まずい空気は消えた。慌ててなまけものを迎えに行くと、彼は思った以上に遠くまで飛ばされていた。
「ごめん大丈夫か?」
「ダメはないからな。で? あの空気は消えたか?」
「え? ・・・ああ、うん消えた。そういう事か」
なまけものはニッと笑う。
どうやらさっきのはワザとだったらしい。9割本音だった気がするけど・・・結果的に良くなったので助かったのは事実だ。
「今度食堂のうどん奢るよ」
「せめてラーメンにしてくれ。隣市にある俺オススメラーメン店の1番高級スペシャル増し盛りラーメンを・・・」
「ここぞとばかりに高そうなやつ言ってくんな!」
ちゃっかりしてやがる。
取り敢えず保留にした。
次回更新は明々後日の予定です。