278.のんびり飛び回ってみた②
「あ、それでログインしてない表示になってたんだ」
「多分ね。それ以外考えられないし」
取り敢えず昨日の内容をユウさんと共有しつつ、世間話をしながら一直線に飛び続ける。定期的に高度を上げて風景を楽しむのも忘れない。
「あ! ユウさん海見えてきた!」
「何処何処!?」
「前! まだちょい遠いけど」
「あ、見えた! ポンタ、全速力よ!!」
「よっしゃぁあ!」
その他景色を無視し、目いっぱい飛ばして陸の端まで到着。
潮の匂いがし、視界いっぱいに青い海が広がっている。内陸から移動してきたためか、アプデ前よりも海に来た感じがしてテンションが上がるな。
「これゲームなのよね? なんか実際に海に来た気分になるわ・・・」
「そうだね」
そしてしみじみと2人して気分を堪能し、その周辺を探索。折角来たんだ。オアシスを見つけていつでも来れるようにしたい。
「あ、あそこは?」
「あれか。了解!」
沢山の他のプレイヤーが来る方角を確認し、オアシスがありそうな方角に辺りをつける。そして2人してオアシスを探し続けること10分。ようやくオアシスらしき湖のような地形を発見。
速攻降りて、転移できるようにした。
「ポンタ。お疲れ様」
直後、ユウさんがそう言いつつ撫でてくる。
「ありがと。でもそれ普通降りて言うものじゃない?」
「どうせまた乗るから良いでしょ」
「良くないけど?」
もう今更だから降りろとは言わないけど。
さて、これからどうするかな。一旦時間と現在地を確認する。現実時間は朝の8時ごろ。場所は最初のオアシスから丁度真南だ。このまま真南に移動し続ければアフリカ大陸に行けそう。
だが時間的にはそろそろ止めないと、蓮華か母が部屋に乱入してきそうな気がする。
「ん? 途中に島があるな」
マップを拡大すると、ぽつぽつと島が存在する。大きさはさまざまだが、どれもそれなりに大きい。これは行くしかない。
直感で、一番近く一番小さい島に目標を決めた。
「次どこ?」
「この島に行ってくる」
「それよりもここに町っぽいの見つけたんだけど」
ユウさんはどうやら違うところをマップで見てたようで、自身が見ていたマップを見せてくる。そこには何もないが、ユウさんはその辺で港町っぽいのを見たらしい。
「港町・・・くっ、そっちも行きたい!」
ただ町なので前の村などと同じ乱戦エリアだろう。今日は戦闘する気分じゃないのでできればパスしたい。
ただ、港町といえば船だ。船には乗れるのか、操縦できるのか、そっちは凄い興味がある。
「ねぇこっち行ってみない?」
「いいよ、と言いたいけど、乱戦してる程時間無いかもだし、今日の夜でどうかな? 今はとりあえずこの島行って一旦終わろうかと思ってた」
「あ、そう? じゃあそれでいいわよ。あ~もう8時なのね」
ユウさんの了解を得たので、移動を始める。すぐ海なので、1~2分も飛べば下は海一色となった。
移動しつつ、
「一応聞くけどユウさんって時間大丈夫なの?」
「大丈夫よ。朝からゲームしてたっていちいち親は口出ししないから。というか私の部屋に入ってこないし」
「羨ましい・・・。こっちは関係なしに入ってくるよ。特に母さん」
今は蓮華もだが。
「へー。入られると困るの?」
「困るね。特に今みたいに朝からゲームしてたら、昔はコンセントをよく引っこ抜かれてた」
「あはは、何それ。そんなことしたらゲーム壊れない?」
「壊れるよ。ウチは幸いデータ飛ぶだけで済んだけどね」
致命傷で済んだと言ったところか。
「それもどうかと思うけど・・・」
「まぁ壊れるよりマシだしね。実は前にもこのゲーム中にーー」
ブチィ!
「!?」
耳元で何かを引きちぎったような音とともに、いきなり視界が真っ暗になった。びくっとしつつ、何事かと呆然としていると、聞こえてくるのは外でなく雀の鳴き声。そして、
「いつまで寝てるの!? さっさと起きなさい!!」
「起きろー!」
嫌な予感しかない煩い2人の声。
慌ててヘッドギアを外して、2人を見る。すると母さんの手にはコンセントが・・・。
「あー!! またやりやがったな!」
「煩い! さっさとご飯食べなさい!!」
ちょっとした口論にはなったが、口では親に勝てなかった。
幸い機器、データは無事だったが・・・。
「ユウさんどうなったんだろ?」
僕に乗っていたユウさんの安否が気になる。
ただおよそ予想がつくので、怖くて連絡できなかった。
次回更新は明々後日の予定です