270.ログアウトしてみた
「まさか地下だったとはな」
「こりゃ上からは見つからないわけだ。はあぁ・・・無駄な飛行だったよ」
彼らの位置を頼りに合流すると、そこには洞穴のような穴が地面に空いており、奥へと進めるようになっている。一生消えることないであろう松明が洞穴内を照らしているので、案外明るい。
「何で洞穴に松明ついてんだと思うけど、奥に祠あるならまぁ納得できるか。こんな辺鄙なところにポツンとあるのは明らかにおかしいけど」
「あの村のじゃない? でも暗いのは嫌だしあってくれるのは助かるわ」
「まぁ俺らには歩く松明が居るから照らす必要ないんだがな。居るだけで数倍明るい」
「・・・まぁ否定はできないわね。実際そうだし」
ユウさんは自身の所々燃えている体を見てため息を吐いた。役割を理解してくれているので、率先して先頭を歩いてくれている。おかげでずいぶん歩きやすい。
といってもログイン時にスタートする為の祠があるまでの道だ。そんなに距離は無くすぐに開けた場所に出た。円形に広がったそのエリアの中心に祠がポツンと建っており、周辺にはこれからログアウトする、それとも今ログインしてきた他のプレイヤーがそれなりに居た。
ピコンッ
広がったところに足を踏み入れると、インフォメーションにログアウトとログイン時の説明が簡潔に表示される。どうやらここでログアウトすれば次回ログイン時にこの場所をログイン場所として選択できるみたいだ。
それを読んだであろうなまけものが気を引くために手を叩く。
「よしっ、じゃあ今日は解散な! 明日は朝からやるか?」
「すまん。明日実家帰るわ。3日ぐらいあっち」
「私も。ゴールデンウィーク終わるまでには帰るわ」
「あたしもー。パパ帰って来いって煩いから」
「!? おいおいマジかよ。じゃあゴールデンウィークの間どうすんだ!? 嫌だぞ、折角プレイできるようになったのにゴールデンウィーク中お預けなんてよ!」
「じゃあなまけも帰ったら?」
「帰ったら弟たちから金くれ連呼されるから嫌なんだよな。働いてたって生活費で殆ど無くなるし、こっちだって金ないんだよ!」
「私たちに言われても困るんだけど・・・」
憤慨するなまけもの。その後も愚痴りが止まらない。どうやら帰ると面倒ごとが多いようだ。
「大変だな」
「同情するなら金をくれ」
「お前もか!? 弟たちと同類じゃんか! 取り敢えずそんなわけだから次ログインするのは数日先かな。出来そうなら連絡する」
「私もそうするわ」
「あたしも!」
「・・・まぁしょうがねぇわな。了解。じゃあ気つけて帰れよ」
「「「了解」」」
なまけものはそう言うと手を振りつつログアウトしていった。顔や態度には殆ど出していなかったが彼も眠いし疲れていたのだろう。いつもなら僕らよりもログアウト遅いのだが今日早かった。
去り際の顔がやたら寂しそうだったが、あいつゴールデンウィーク中大丈夫だろうか?
「・・・取り敢えずお土産買って帰ってやるか」
「そうね」
なんか可哀そうな感じがしたので土産でも用意してやろうと決めた。
取り敢えず今日はもう寝たいので、何にするかは明日決めよう。
次回更新は明々後日の予定です