266.彼らは取り巻きを取り合ってみた
「はいっ!」
ゴルーグの取り巻きの1人をあっさり倒す。
やっぱりこの程度ならスキルは要らない、この炎の剣が強すぎるので普通に斬るだけで十分だった。楽でいいが、これじゃあスキルを使った戦闘が出来ない。
やっぱりゴルーグとやればよかった。
ポンタがすごく戦いたそうだったので、ワザとジャンケンに負けて譲ったが間違いだったかしら。
まぁ本人嬉しそうだったし、獲物はもう一人いるし良いかな。
そう思うことにして、意識を最後の取り巻きへと切り替える。彼はさっき倒した仲間の様子を見て明らかにビビっている。これじゃあ今回もスキルは要らない。
「さっさと片付けますか」
炎の剣を構えて近付く。あと数歩も歩けば攻撃範囲内、すぐに終わるだろう。
そう思いつつ歩き出そうとした時、そいつは現れた。
「おっと、こいつは俺が貰うぞ。こっちの方が早く終わったからな」
「嘘言わないでよね。こっちは終わってもうほぼ攻撃範囲内まで移動してるよ。そっちはまだ遠いじゃない」
「残念。こっちはこの位置からでも攻撃範囲内だ」
ニヤリと笑うそいつ。なまけもの。最後の取り巻きを挟んだ向こう側で魔法を撃つ準備を始めている。
早い者勝ちだから勝てないとか言ってたけど、どうやら魔法一発で倒せたようね。
私たちに挟まれオロオロする取り巻きを無視し互いに長時間睨み合う。この戦闘で1番時間を使っただろう。しかしなまけものは折れない、引く気は無いようだ。
「はぁ・・・」
見てるのはつまらないし戦闘したいけど・・・、なんか阿呆らしくなって来た。まぁ今回はなまけもの達が勝手に始めた戦闘なので譲ってもいいかな。
そう思い、ため息混じりに譲ろうとした時、
『わぁああああ!!』
オロオロして頭がパンクしたのであろう取り巻きが、大声を上げ、剣を振り回しながらこっちへと向かって来た。完全に意識外だったので距離を取るように剣を躱す。
「あ!」
が、それは判断ミスだった。
取り巻きはこっちが離れたと見るや、そのままゴルーグの元へと走っていく。どうやら合流して助けを求めるつもりだろう。
多分助けては貰えないだろうが、ポンタの邪魔になるのは確実だ。
それに、
「おいおい、逃すなよな」
「何やってんだよ~」と言いたげな顔のなまけもの。「アンタの所為でしょ!」と睨み返すが、本人に伝わらない。睨むだけ時間の無駄だった。
後でなまけものは蹴り飛ばすとして、先に取り巻きを消さないとと思い私は走り出す。相手は遅い、今からでも走ればゴルーグに辿り着く前に倒せる。
しかしここでなまけものから待ったがかかった。
「まぁまぁ待てよ。ここは俺が一撃で決めてやんよ」
「・・・・・」
まぁやりたいなら勝手にしたらいい。元々譲る気になってたし、なまけものに譲り、射線に入らないように彼の後ろに回る。
「外したら・・・分かってるんでしょうね?」
「当たり前だ。ポンタに「取り巻き逃すとか何してたの?」みたいな目では見られたくねぇし」
その時は全部なまけものの所為にしよう。
ところで、
「何でココア乗ってるの?」
「知らんわ。いつもの気まぐれだろ」
剣を納めて傍観に移りながらポンタの状況を確認すると、善戦しているポンタの背中でロデオみたいに乗って遊んでいるココアが目に入る。明らかに遊んでいるようにしか見えないが、なまけものの言う通りただの気まぐれなんだろう。
「よっしゃ! 『アクアx3』発射ぁ!」
「!? ちょっと何そんな強いの撃ってるのよ!」
単発でも倒せる筈なのに・・・、相変わらずトドメを派手にしたがるわね。ちょっとは節約というもの・・・。
まぁ本人のSGだし別にいいんだけどね。
「あっ」
そう思った矢先、なまけものが素っ頓狂な声を上げた。慌ててなまけものの目線の先を見る。そこには魔法の射線上に転がり込んでくるゴルーグの姿が・・・。
「あっ」
私も素っ頓狂な声を上げた。
次回更新は明々後日の予定です。