254.昼食
連載再開いたします。
お待ち頂いていた方お待たせしました。
今まで通り・・とはいかないかもですが、のんびり続けていきたいと思います。
よろしくお願いします。
冬が過ぎ、暖かくなって仕事中の睡魔が猛威を振るう日々。気付けばもうそろそろ5月になろうとしている。
午前の仕事を終えた僕は、いつも通り食堂へ行き、いつもの席に座る。
「よっす・・・」
「! お疲れ。・・・まだそのテンション?」
弁当箱を開けていると、向かいの席に榊が座る。手には当然のようにラーメン。毎度毎度目の前でいい匂い漂わせないで欲しい。
まぁそれは置いといて、榊は最近テンションが低い。当然仕事のせいではない。現在進行形で行われているMWRの長期メンテナンスの所為だ。4月初めからゴールデンウィークまでの約1か月間、超大型アップデートを含めたメンテナンスにより僕らはゲームが出来ない状態が続いている。榊は出来ないのが辛いのか日に日にテンションが下がってきていた。
正直、仕事がちゃんと出来ているのかどうか気になる位に低い。
「それはそれ、大丈夫だ。ちょっとミス増えるくらいで済んでるぞ」
「ダメじゃん」
榊はローテンションのまま、ポケットから取り出したふりかけをラーメンにかける。味変だそうだ。最近のブームらしい。
「お前は相変わらず弁当なのな」
「まぁね。倹約の為だし」
相変わらず柳さんとの弁当当番制度は続いている。1週間置きに交代で2人分作り、コストダウンを行っているのだ。ただし効果が出ているかはよく分からない。
因みに今週は僕の番。
「なかなかちゃんと作ってるよな」
「そりゃ柳さんの分もあるし、適当には出来ん」
柳さん、最近どんどん上達して、僕が作った場合との差が広がりつつある。なので何とか追いつこうと最近ゲームしていない時は料理の勉強をしている。
榊は、僕の弁当を少し見て、
「成程、胃袋を掴みつつ自主的に練習もさせるか・・・」
「? 何が?」
「いや、何でもない」
「?」
榊はなにやら考え込みだしたので、それ以上聞くのは止めた。
と、その時同じテーブルに置いてあった椅子が二つ引かれる。そちらを見ると、柳さんと柊さん。いつもは違うテーブルでリコさ・・・じゃなかった柳夫人と食べているが、今日はこっちに来たようだ。
2人は座るなり、榊を見て、嫌な顔をする。
「お疲れ」
「やっほー」
「おっす」
「あれ? 今日はこっち?」
「うん。ちょっと連絡あるから」
「連絡?」
榊も同じことを思ったのか、麺を飲み込んで怪訝な顔をする。
「んぐっ。それ誰から?」
「総務部長から。さっきここ来る前に言われたの」
「・・・内容は? 面倒なこと?」
「面倒といえば面倒かな・・・。ほらアレ。去年やった実習の発表をもう一回して欲しいんだって。今年の新人の実習の参考にって」
「・・・・・」
面倒ごとだった。僕は大きなため息をつきつつ「マジで?」と返す。柳さんと柊さんが大きくうなずいた。
「そういや俺らも実習前に昨年の発表見たな・・・」
「何で僕らなの?」
「知らない。部長もそう言われたんだって」
そう言われ、ため息がさらに大きくなる。
「え~・・・、じゃあアレまた発表するの? 嫌なんだけど」
「まぁ発表するだけだし」
「だよね。資料あるから作り直しとかも無いし~」
「偉いさんの評価も無いしな」
嫌がる僕に対して、他の三人はそれほど苦じゃない。
何で? なんて疑問は浮かばない。どうせみんな僕が話すから自分らはどうでもいいと思っているんだろう。
「で? 誰が発表するの?」
「そりゃあ・・・」
「そうねぇ・・・」
「ねー」
全員こっち見た。やっぱりな!!
しかし嫌だといっても無駄だろう。何かと理由をつけて押し付けられるに決まってる。ここは仕方なくできないよ断り術を使うか・・・。因みに別名称は「その日有給だから無理だわごめーん」作戦だ。
まずは嫌々了解しつつ日時を確認。
「発表ってそれ何時?」
「明後日だってー」
明後日・・・GW前の金曜日ね。
丁度いいな。明日と言われたらちょい説明が面倒だったが、金曜日なら休む理由も簡単に説明できる。
「あ~・・・明後日か・・・」
「どうしたの竹君?」
次に、日にちを聞いたら明らかに困った表情を見せる。注意するべきは、この時に多少困った表情をすること。困り顔過ぎてもダメだ。バレる。特に柳さんに。
「いや、・・・その日有給だから」
「「「!!?」」」
そして休みだと伝える。
直後、彼らは衝撃が走ったように表情を変えた。
「おいおいマジかよ!?」
「マジ。用事もあるし取るのやめるのは無理かな・・・」
実際金曜日は本当に休みにしている。当日はアプデ明けのゲームをするというちゃんとした用事があるのだ。まぁ大した用では無いので取り止めは可能だ。ただそう言うと絶対出てこいと言われるので言わない。
彼らが発表している間、1人アプデ後のMWRを楽しむとしよう。
慌てる彼らを見ながら内心フフンと笑ってると、柳さんと目が合った。合ったのは1秒にも満たない。僕がすぐ逸らしたからだ。逸らしてしまった。
結果、バレた。
柳さんの口角が少し上がる。
「・・・ねぇ竹君」
「何?」
手遅れだがいつも通りを装う。
「当日、来てくれない?」
「無理」
分かってるわよと言いたげな表情で聞いてくる柳さん。
僕は頑張った。
結果は言うまでも無い。
次回更新は明後日を予定しております