249・どうでも良くなってみた③
技を試すため一気に上空へと飛翔する。よしっ! カイザーは追ってこない。
周囲を確認し、頭を斜め上に向けた。
「『溶解液』」
そして『溶解液』を二つの口から吐き出す。斜め上に発射された『溶解液』は曲線を描きつつ落下。ちなみカイザーのいる場所とは全然違うところにそれぞれ落下する。
しかしそれでいい。僕はそのまま『溶解液』を出しつつ、体を回転させる。するとどうでしょう。『溶解液』があたりに満遍なくシャワーのように降り注ぐじゃありませんか。
これぞポンタスプリンクラー。これを使用するだけで周囲一帯はドロドロに溶解した一面に早変わり。しかしやはり首二つではばら撒き力が弱い。やはり3首あってこその技だな。
『溶解液』は回転の遠心力で広い範囲に飛び散り降り注いでいる。これでリコさんはこの範囲内のどこに居てもダメージを負う筈。これなら姿が見えなくても確実にダメージを与えられるぞ。
ちょっと下衆技すぎたかな。
「わははははっゲホッゲホッ!」
「あちっ! あのヤロー。汚物ばら撒きやがって。リコちゃん大丈夫か?」
カイザーは躱しているもののちょこちょこ当たっているようだ。そして今の言葉。リコさんの様子が分かっていないところを見ると背中に乗っていないっぽい? いや、あれも演技な可能性が・・・。
「ざんね〜ん。私ここよ~」
「!?」
気付いたら尻尾にリコさんがぶら下がっていた。
「なんっ!?」
「この技の弱点。真下は安全地帯だからもうちょっと工夫したほうがいいと思う、よ!」
「のうっ!?」
リコさんはそのまま僕の尻尾を引きちぎる。そしてそのまま落ちていくのかと思いきやまた消えた。僕はすぐさまポンタスプリンクラーを止め、周囲を警戒する。
しかしあかん。尻尾超痛い。
リコさんあそこに居たってことは、空中を移動するスキルを持っているってことだ。となると止まっているのはまずい。
僕はそう思いすぐさま動く。リコさんは下に落ちた。となると上に行けば直ぐには追いつかれないだろう。
『縮地』を使って一気に上昇する。眼下を見ると海面が遠い。しかも周りは雲で視界が悪くなる。ちょっと高く来すぎたか?
雲をかき分けるように飛びつつ相手の位置を探る。カイザーはあそこ、リコさんはまだ見えない。恐らく何かしら位置を確認できる方法がある筈なんだがこの戦闘で見極めるのは難しいか・・・。
そう思いつつカイザーがこちらを狙っていることに気付く。
「ーーー」
「おっと」
フォン! と風がビルの隙間を通り抜けるような音がし僕の横を通り抜けた。意外と速い魔法だな。『渦風』は威力重視。さっきのは速度重視って感じか。後は補助系と広範囲系の構成と勝手に予測。補助系は内容にもよるが、広範囲系はこの距離だとさほど驚異ではない。
だが・・・いい加減遠くからネチネチ攻撃されるのは面倒だ。リコさんの位置を探してる最中の攻撃は流石に邪魔すぎる。
「となるとカイザーから消すべ・・!? 『蜃気楼』!」
僕の体を2つの『渦風』が突き抜ける。咄嗟の『蜃気楼』が間に合い何とか回避できたが・・・。今後ろから飛んできたぞ。
転移後の位置から飛んできた方向を見ると、そこにはカイザーが居る。『ウィンディ』を使ったのか少し離れたところにもう一体居る。
どうやったか知らないが回り込まれた。その上今ので『蜃気楼』も使ってしまった。嫌がらせもここまでかな。
「うーん・・・カイザー1人でも邪魔なのになぁ。どうするか・・・」
しかし態度には出さない。
最後まで嫌がらせは諦めないぞ。せめてカイザーだけでも殴り飛ばさないとな。
「ははは、流石にもう終わりだろ。さて最後にとびきりのやつを出して消してやるよ」
「・・・・・」
「いい加減会話してくれよ、俺変なやつみたいじゃん!」
最初から変ですよ。自覚しろ。あといちいち大袈裟なんだよ。
とはいえ流石にそろそろ会話してやってもいいかーー
「ん?」
雲が真っ白だから気付いた。
自身の右側。雲の一点が薄黒い。まるで何やら動いているように見えるが、雲も動いているので目の錯覚か?
でも雲のは遠ざかってるのに薄黒いそれは近付いて・・・
「!? 『猛毒弾』!」
正確には猛毒液になるのかな。薄黒い部分に降りかかるように猛毒の液体をばら撒く。僕の直感が正しければ・・・。
動いた!
薄黒いそれは『猛毒弾』を放った直後、ものすごい速度で当たらない位置へと移動する。あれリコさんだ。正確にはリコさんの影だな。姿を消しても影は残る仕様か。
位置がバレたと気付いたリコさんが姿を現す。そのまま空を蹴るように飛びカイザーと反対側の位置に移動。
「チッ! バレたか!」
直後カイザーが猛スピードで突っ込んでくる。なるほどね。カイザーが無駄にはしゃいで気を逸らしていたと言うわけか。
で、バレたからこのまま挟み撃ちにするつもりだろう。
さてどうするか・・・。そろそろ詰みそうだな。そう思いつつリコさんを見ると、まだ余裕そうな顔で笑っていた。
「2回目で気付くなんてね。でももう終わりかしら?」
「そうっすね」
直後『ウィンディ』を含めた3方向からの攻撃が僕を襲った。
次回更新は明後日の予定です