247・どうでも良くなってみた①
「『火炎』!」
三口から吐き出した炎が目の前で爆発する。カイザーが放った『ツイン・サイクロン』を相殺したからだ。いや相殺は出来てないか・・・。僕は威力が弱くなり小さくなった『ツイン・サイクロン』を横に移動して躱す。
と、そこへ、
「『縮地』」
「『ウサナックル』」
「ぶへっ!?」
「今何かが通り過ぎた?」と疑問を浮かべるような速度で繰り出される『ウサナックル』。頭の一つがまともに当たりそのまま消し飛ぶ。HPも半分まで消えた。
咄嗟に「嘘ぉ!!」と心の中で叫ぶ。口には出さない。悲鳴でその余裕はない。
「おおおおぉぉ・・・痛ってぇ・・・」
「まず一つ・・・」
頭吹っ飛んで「痛ってぇ」で済むだけマシか。しかしこれで視界が狭まり、口から吐く系の攻撃力も下がる。リコさんはこっちの攻撃力を削ぎつつ倒すつもりらしい。
というか、この二人無駄に連携良過ぎる。夫婦だからか?
あれだけ怒り狂ってたカイザーもリコさんが一言言うだけで冷静になるし・・・。それならさっさとなだめてほしかった。
あとカイザー。僕やユウさんの話は全く聞かなかったり変な解釈する癖に何でリコさんの言うことはちゃんと聞くんだ? それもあれか? 逆らえないからか?
しかし、いい加減にして欲しい。敵同士とはいえ、何でここまで嫌がらせのようなことをされないといけないんだ? 知り合いだからか? いや限度あるだろ!
あーもー・・・なんか無性に腹が立ってきた。
カイザーは勿論だが、あることないこと言ってカイザーを操るリコさんにもだ。
というかそろそろ僕・・・怒ってもいいと思う。ユウさんたちはもう逃げられただろうし、僕の目的は達した。もう好きにしていい筈。
丁度誰も居ないし。
「・・・・・」
「あれ~? どうしたの~?」
「痛みで気絶したか? いや違うな。戦闘放棄か」
「まぁあの状態ではねぇ。回復スキルあるみたいだけど、回数制限あるみたいだからこの状況じゃ使わないだろうし」
「じゃあサクッとやって、ユウたち追うか」
あれこれ考えてると、相手はこっちが動かないからか何やら考えてる。
色々考えるのは勝手だが、戦闘放棄は馬鹿じゃねぇのと思う。ここまで逃げてて戦闘放棄なんてするわけ無いだろう。大体相手にそれされると一気に冷めるから僕はしないようにしてる。放棄する時は、それっぽく突撃して負けるのだ。
まぁ今回はしないけどね。今回は徹底的に嫌がらせしてやろう。
さて、ブラックポンタさんの始まりですよ。
さてどうしてやろうかなぁ~・・・ん?
「じゃあー、『ウサラッシュ』でー・・・」
カイザーたちが無警戒で近付いて来た。警戒していないのは完全に戦闘放棄したと思ってるからか、警戒せずともこっちの反撃に対処できるからか?
まだ何するか決めてないけど、カイザーがウザいのであっち行ってもらおう。
「へぶぅ!?」
「あなた!」
ドンッ!!
とりあえずカイザーの顔面に『縮地』で思いっきりタックルをかましてやった。衝撃でカイザーは乗ってるリコさん共々吹き飛ぶ。
カイザーはリコさんに回復してもらいつつこちらを睨む。
「やりやがったな?」
「だから何? さっさとかかって来いよ。カイザーウザいし」
「へっ?」
ほれほれと、挑発しつつ『火炎』による火炎弾を放つ。しかしカイザーは僕の言葉や仕草に戸惑いつつも躱す。ちょっと急変し過ぎたか?
そう思い、すぐどうでもいいかと考えを戻して追加で火炎弾を撃ち続けつつ接近する。
「ちょぉ!? 待っ! 待て待てポンタ。どした?」
「もしかして怒っちゃった?」
慌てるカイザーを前足で殴る。しかしカイザーは躱してくる。僕はそのまま体を回転させ、尻尾で追撃。しかし掠る程度でクリーンヒットしない。
やはりこんな単調な攻撃じゃ当たらんか・・・。
というかカイザーよ。今更「どした?」とかないわ。回答する必要もない程に理由分かるだろう。簡単すぎでクイズにすらならん。
なので相手の問いは無視する。そもそももう会話する気もあまりない。
「『猛毒・・、『縮地』」
「話聞けよっ! 『渦風』」
『猛毒弾』をぶっかけてやろうかと思ったが攻撃が来そうな気配で止め、回避する。
カイザーが直線状の何かを発射した。螺旋状の風? それは的である僕が回避したため、その先にある海に当たり穴を開ける。まるで削り取られるように一瞬だけ海に穴が空いた。
おおぅ・・・。意外と威力あるな。だが風魔法ではかなり遅い。威力の代わりにスピードを犠牲にした技っぽいな。
さてと、『縮地』回避でちょっと距離が空いてしまった。今のうちにマーキングでもして相手の切り札探索とでもしますかね。なまけがいうにはリコさん消えるみたいだから、出来れば対処法が分かればいいなっと。
名前:カイザー
種族:八咫烏(6)
レベル:48
八咫烏:3本足の黒い巨大な怪鳥。ふらりと現れては風のように消えることから、風が実体化したと言い伝えられているところもある。風を起こすことに長け、怒らせると暴風により更地と化す力があるとされる。時折人の前に現れては正しい道を示すと言われており、その者を成功へと導く。
名前:リコ
種族:月明兎神(6)
レベル:48
月明兎神:月の明かりに照らされた時にだけ見える美しい兎人。その言い伝えから兎神と呼ばれているが、どういう存在か不明。ただそう言った状況でしか目視できないため戦闘力どころかどのような能力を持っているかすら定かでは無い。ひとつだけ言えるのはその美貌に惹かれた者は生きて帰ってこない。
・・・・・
よくわかりませんでしたチクショー!
・・・って言ってもしょうがないか。とにかく分かることを確認しないと。
次回更新は明後日の予定です