245 ・引き続き占拠戦を続けてみた⑦
「まぁいい、居ないなら丁度いい。俺はお前にもイラついてたところだからな」
「仕事の話ですか? カイザーさんよりはまじめに仕事してますよ」
「違うわ!」
違うのか。じゃああれかな。この前部長にカイザーさんの仕事ぶりはどうかと聞かれた際に、「いつも通りです」と、いつも通りサボってることを言ったからかな? まぁあの程度みんな言ってるだろうし違うか。
何のことだろうと考える僕に、カイザーさんは目を大きく見開いて告げた。
「テメェ! 何俺に無断でユウを背中に乗せてんだよぉおおおお!!」
「はぁ?」
何言ってんだこの人と思うと同時に、そっちかと思ってしまう。よくよく考えたらこの人絶対突いてくると分かる事だ。
そんなこと言われてもユウさんが乗ってくるから・・・としか言えない。
「そんなこと言われてもユウさんが乗ってくるから・・・」
だからそのまま言った。
同時にカイザーさんの目が更に開く。もう目が飛び出してきそうだ。
変顔も出来るのか・・・、今度飲み会の席でやってくれないかなぁ。
「それは何か!? ユウが自分からくっついて来てくれるとの自慢か!?」
「いやただ乗ってるだけですが・・・」
「それでもっ!! ユウとゼロ距離でくっついてるのは変わらないだろうがぁあ!!」
煩い・・・
まぁそう言われればそうだけど・・・。
「あれだろ! 跨って貰ったり、落ちそうになって抱きついて貰ったり、戦闘時は足で踏んでもらったりするんだろ? クソがぁあああ!!」
空中で地団駄を踏むという器用なことをするカイザーさん。パントマイムもいけるだと!?
と、それはそれとして、
「いや実際そうですけど、別にやましいことないですよ。大体跨ってもらっても、ユウさん落ちないように締め付けるし、抱きついて貰っても力強いから苦しいですし、攻撃時の踏み込み結構痛いし・・・」
その上、剣で刺されたり、指示に従わない場合はしばかれたりーー
「ああああああぁぁああああああぁ!!」
「きゃあ!?」
とうとうカイザーさんが奇声を上げてしまった。そして泣き出す。
どうやら悔しいらしい。「ご褒美じゃねぇか・・」とぶつぶつ言っているが、それは変態のアンタだけだ。まぁくっつかれるの男として嬉しいが・・・あれアバターだし。
しかしまさかここまでのシスコンだったとは・・・。もしかしてさっきのまでの変態行動は演技じゃ無かったのか?
「ううん。一応演技。ユウちゃんに喜んで貰おうとユーモアある兄を演じてたみたい・・・」
「逆効果なのでやめさせたほうがいいです。ユウさんかなりドン引きしてます」
「でしょうね。でも言って聞かないのよね。全く・・・妹が関わらなければすごく良い人なのに・・・。はぁ、さっさとユウちゃんには結婚してもらってこの人を妹離れさせなきゃいけないわね。あ、ポンタくんどう? ユウちゃん」
「・・・・・」
聞かなかったことにした。
そういうこと言わないでほしい。意識してしまうじゃないか。
そうなったらさっきのカイザーさんの言葉もあり、ユウさんを乗せるのもままならなくなる。
しかし面倒なことに、結婚のワードにシスコンが反応した。
「結婚だぁ? テメェ! まさかユウと・・・」
「いや話ちゃんと聞ーー」
「許さねぇえ! 今ここでお前を消してやる!」
直後カイザーさんが襲いかかって来た。
ーーーーーーーーーーー
「こちら、海岸へ疾走中の俺! 誰か返事してくれー!!」
チャットで連絡したのに誰からも返事こねぇ・・・。思わず口に出てしまった。
誰一人あのあと死んではいないようだがどうなったのか分からねぇ。戦闘に参加はできないがとにかく合流する為に向かう。
しかしミスったぜ。まさかリコさん不可視化スキル持ちだとは思わなかった。カイザーさんに気を取られて存在を忘れてたのもあるが、あっさり奇襲されてしまった。
しかもカイザーさんもあれだけ魔法撃ったのに死んでねぇし、何かカラクリがあるかもしれん。急いであいつらに伝えねえと。
一応チャットには書いておいたが連絡無いからちゃんと見てくれてるか怪しいからな。
「にしても遠ー!!」
さっきたこ焼きぃ達から奪った所で復活し移動を開始したが、あいつらは海の上、砂浜であるここからは全く見えん。というか海すらまだ遠い。ポンタに乗ってるとそれほどではなかったのに自分で歩くとこうも遠いとは・・・。
こんな時、無駄についている飛ぶことの出来ない翼に腹が立つ。飛べない翼はただの・・・何だろな。ただの飾り? いやそれだと説明文そのまんまだ。
って、そんなことよりもっと早く進む方法を考えなくては。今はまだ走ってるだけですむが、これから泳ぎもある。泳げはするが、疲労度を考えると泳ぎたくない。
「くそぅ、飛べる組み合わせとか無いのか? ・・・いや、流石にそれすると万能過ぎろぉあああ!?」
ボォオン!
間近で砂が爆ぜる。びっくりして咄嗟に転がりつつその場から離れる。明らかな攻撃なので起き上がりすぐ様周囲を見渡すが・・・誰もいない。
「ーーー」
「!?」
何か聞こえた。
直感でヤバいと感じ、すぐ様その場から離れる。すると直後にその場所が爆ぜた。それにより確実に狙われているのを確信する。まぁ1人ぼっちだし狙われて当然だろう。
「戦うか・・・? だが相手見えんし・・・」
「ーーー」
「!? また来る!」
とにかく走るしかない。よく分からんが砂浜の上はまずい。
「チックショー!」
叫びながら俺は『縮地』を使いつつ海を目指した。
次回更新は明後日の予定です