233・占拠戦を続けてみた④
チキンと店チョーは『蜃気楼』で消えた。
しかし僕は相手はどこだと探しはしない。こういう時、相手は一度上手く行った方法を使う筈。つまり彼らはさっき攻撃を当てたあの時と同じように、僕らの後ろに転移したはずだ。
そう思った直後、僕の後ろで声がした。
「『バードストライク』ぅ!」
「『蜃気楼』」
待ってましたと内心呟いて、『蜃気楼』を使う。そして攻撃直後のチキンの後ろに転移。相手は予想してなかったのか、驚愕の表情をしていたのがちらっと見えた。
そしてそのまま店チョーとチキンを拘束するため噛みつき攻撃を行う。仮に振りほどかれても猛毒状態にさえしてしまえば終わりだ。
しかし、僕の噛みつき攻撃は外れた。いや当たったのは当たったが、当たった瞬間2人は影になり霧散して消えたのだ。今度は僕が驚愕する。
「なっ!?」
「『影分身』、まぁよくある分身スキルだな。1日に出せる数が限られてるけど」
後ろを見ると少し離れたところから店チョーとチキンがこっちを見ている。どうやら僕が攻撃したのは分身だったようだ。恐らく咄嗟に分身を作って入れ替わったのだろう。
「『火炎』」
「おおっと」
びっくりする僕をよそにユウさんが追撃する。しかし距離が離れたのもあり当たらない。
だがまだだ、まだ『蜃気楼』は再使用できないはず。僕もユウさん同様に『火炎』や『猛毒弾』で追撃。
しかしチキンは器用に避ける。ユウさんの『火炎』に当てて『猛毒弾』を爆発させるコンボすら初見で躱された。
「ははは、当たらな゛ぁああ!!」
「当たるじゃん」
だが、回避して一瞬違う方向を向いた時を狙って『縮地』タックルを当てる。直撃と同時に噛みつき、チキンの動きを止めた。このまま『溶解液』で噛んだ場所から溶かしてやろう。
「『溶かーー」
「させるか! 『シャドウインパクト』」
「!? 『強再生』」
『シャドウインパクト』がメイン頭に直撃するが、減りきる前に『強再生』が間に合い全回復。そして『シャドウインパクト』後の店チョーにも噛みついて拘束する。
「回復!?」
「そのなりでか!?」
「どーど、だいっだが」
「「痛ぇ! 噛みながら喋るな!!」」
しかし暴れる2人を抑えきれない。何とか猛毒状態にしたので離した。噛んでる間も店チョーが剣でビシビシ叩いてきたから一旦離れて回復しないと。
「逃がすか。『ポイズンフェザー』!」
しかし『ポイズンフェザー』内に取り込まれる。慌てて抜け出したが身体中にビッシリと羽毛がまとわりつく。毒耐性のおかげで毒にはならなかったが、スピードダウンが酷い。体感で半減したくらいまで遅くなった。
そして逃げられずチキンの脚に捕まった。
「ちょぉ! 爪刺さってる!」
「刺してんだよ。お前牙刺した・・・ん?」
そこでチキンが気付いた。僕の背中に乗っているのが羽毛だけだということに。
「おい! もう1人は?」
「ちょっと外出中」
まぁもうすぐ戻るけど。そう思い相手の背中越しに落ちてくるユウさんを見る。相手は僕の目線で気付いたようだが遅かった。
「『炎撃』」
「「ぐはぁ!!」」
直後ユウさんの燃える剣が僕もろともチキンに突き刺さる。だが店チョーは直前でギリギリ躱した。
「フルパワー『シャドウインパクト』!」
「『蜃気楼』」
店チョー渾身の『シャドウインパクト』はユウさんの『蜃気楼』の前に空振る。剣が突き刺さった僕も同時に近い場所へと転移するが予想外だったのはチキンだ。何故か一緒に転移してきた。僕とユウさんに挟まれたからかな。
全員が何故?と思う中、慌てるプレイヤーが1人。1人空中に取り残される形で放り出されている。顔は無いが、店チョーの全身から「嘘だろ」の雰囲気が溢れ出ていた。
「うわぁああああ!」
そして当然のように落ちていく。あの高さじゃ助からない。これで店チョーは終わりだな。
後は・・・チキンだがその前に。
「ユウさん・・・そろそろ剣抜いてくれない?」
「あ、ごめん。えいっ!」
「「のぁあああ!!」」
非道なユウさん。
思いっきり引き抜いた所為で、余計に痛くなった。チキンと一緒に痛みを堪える。
「お・・・、お前の相方酷すぎね? あれヤバいぞ」
「ぼ、僕もそう思う。ヤバいよね」
最近ユウさんの横暴が増えた気がする。いや、遠慮が無くなったというべきか?
どちらにせよ、振り回されることが多くなった。ただ悪い気は全くしないからいいけど。
2人で「やべーよ、やべーよ」と言ってると、目の前に燃える剣を見せられる。
「もう一回刺されとく?」
「「やめてください」」
先ほどの内容に一つだけ付け加えたい。
最近ユウさんがちょっと怖い。
次回更新は明後日の予定です