230・占拠戦を続けてみた①
「ココア! とにかくなんとしても消すの! 良いわね!?」
「大体お前らの言ってる事、需要ねーからなぁ!! 分かってんのか企画部!!?」
ユウさんとなまけもののテンションが次元を超えて戻って来ない。奪った占拠ポイントで何故か僕もココアの横に座らされ、なまけものの説教を受ける。
どうしてこうなった?
「なまけどうしちゃったの?」
「知らん」
「「そこしゃべってんじゃねー(ないわよ)!!」」
ちょっとココアと言葉を交わすと2人の怒声がデカくなる。マジで面倒くさくなって来た。
これはイベント所ではないな。別に目標がある訳じゃないが、このままだとずっとこのままっぽい。流石にそれは面倒だ。
しかし、なまけものもストレス溜まってんだなぁ。あと言い訳じゃないが、僕はなまけものの開発企画担当じゃないから、そんなこと言われても知らん。
というか! ゲーム内で現実の愚痴言うな!
「「いい加減ウザい!」」
流石にイラついたので2人を『縮地』タックルで吹き飛ばす。狙いはなまけだが、頭を冷やすという意味でユウさんにも当てる。僕はそのまま足場のない所まで2人を押し出し、首で薙ぎ払って吹き飛ばした。
「ポンタぁ!」
「今はイベント中だ。ちょっと反省しろ」
即死レベルの高さからの落下なら、走馬灯が良い感じに働いてくれるだろう。僕は落ちていく2人を確認した後、占拠ポイントに戻り、氷体を纏ったココアとハイタッチ。そして土下座態勢へと移行する。
「何してるの?」
「いやユウさんが・・・」
落ち着いて欲しいつもりでやったが、余計にブチ切れてたらまずい。ここは意表をつくという意味も込めて復活ブチ切れ用のカウンター土下座をするべきだ。
と言ってもこの体躯なので見た目土下座というかただ座ってるだけだけどね。
そして待つこと十数秒後、土下座を敢行した僕は影から様子を窺っていたココアともども蹴り飛ばされた。
まぁ飛べるから落ちないんだけどね。
・・・
・・・・
・・・・・
「はぁ・・・始まったばっかってのになんか疲れた。ポンタ! お前のせいだぞ?」
「いやいや、不機嫌になったユウさんが第一の原因でしょ!」
「ココアがあんなことするからでしょ! 第一ポンタも被害者なのに気にならないの?」
「この体目立つから、ぶっちゃけ時間の問題かと。ネットで話題になればコンテスト云々関係なしに広まるから」
「それはそうかもしれないけど・・・納得出来ない」
「じゃあもう全部なまけのせいということでー」
「何でだよ!?」
とりあえず全員何とか落ち着いた。結構な時間ロスをしたので出遅れた感があるけど、ギスギスしながらやるよりは全然良い。正直あのまま解散とかなりそうだったし、そうなればイベントを捨てないといけない。
流石にそれは嫌だったから、ほぼ今まで通りに戻ってよかった。
「さて、気を取り直してこれからどうしよっか?」
「とりま当初の予定通り山エリアをぐるっと回ろうぜ。見つけたら手当たり次第奪う方向で」
「良いわね。さっきのでストレス溜まったし発散したいわ」
「俺も・・・ってそういや魔力まだ回復してねぇな。ちょっと待機すっか」
「じゃあすぐそこの占拠ポイントでいい?」
「いいよ」
丁度、真下に占拠ポイントが見える。既に誰かが占拠済みなのか、占拠ポイントが薄く黒く発光している。他のプレイヤーが奪ったのなら赤のはずだが・・・
「ん? ありゃ冒険者が奪ったな」
「そうなの?」
「おう。誰も奪ってなけりゃ白、冒険者なら黒、俺ら自分のなら青、他のプレイヤーなら赤だ」
「へー」
まぁ冒険者なら気楽に行ける。プレイヤーなら相手の種族次第でAIでも手間取るからね。ユウさんの種族みたいにAIが使った瞬間手に負えない種族もあるし。
降り立つとプライベートビーチのように、占拠ポイントの中心に冒険者が姿を現す。何かロイゼンっぽいのが混じってるけど気のせいだろうか?
「じゃあお先」
『フン、『紋切』』
「!?」
ああ、あの技はロイゼンだわ。こんな山まで出張してくるなよ。
しかもユウさんあの技全部受けきってるし。
「いける、いけるわ! 悪いけどこいつは私が貰うわね」
『ほほう、やるな! なら次はこれじゃ』
そして勝手に2人の世界へと突入。取り残される僕らと他の冒険者。
「戦闘狂め」
「まぁロイゼンは僕らだとちょいキツイからいいんじゃない。それよか先に周りを倒そうよ」
「だな。サクッとやるか」
とりあえず周りの冒険者を遠距離攻撃の雨でサラッと倒す。ユウさんの方はいい勝負をしてるので邪魔はしないでおこう。
「どうやらロイゼンは草原エリアよりもレベルが高いみたいだな」
「だな。じゃないと今のユウじゃ相手にならないだろうし」
「ところでお前があれほどストレス溜めてるとは知らなかったよ」
「ん? ああ、あれな。言っとくけどあれ開発部の総意だからな?」
「マジか・・・。因みに誰?」
「浜焼さん。マジで何とかして」
「ああ、あの人。殆ど話したことないな・・・」
担当が違うからなぁ。しかし何とかしてと言われても、あの人結構キャリア長いし言える訳がない。柳先輩なら言えるけど。
「がんばれとしか言えんわ」
「そうか・・・。俺が発狂したら40%あの人のせいだから」
「また微妙な・・・」
残りはなんだろうかねぇ。
まぁ恐らく他部署ではありそうだが・・・。聞かないでおこう。
世間話をしつつのほほんとしている間、目の前でユウさんがロイゼンを消しとばしていた。
次回更新は明後日の予定です