228・ターミガンと戦ってみた
こちらが突っ込んでくる様子を見たあちらさんは、少し慌てつつも迎撃態勢を取り始める。
「うわっ! 速攻攻めてきた!?」
「血の気多いなぁ」
「1人来ないし、あの2人なら行けるかな」
「いや、だから勝てる気しないんだけど」
それぞれ感想を言いあいながら散開する。どうやら四方から攻撃する気のようだ。2匹は僕らの後ろに回り込むように移動し、前の2匹はこっちの注意を逸らすためだろう、常にどちらかが視界に入るように飛んでいる。全員が鳥系の魔物だが、やはり種族によってスピードに違いがあるのだろう。後ろに回った2匹はかなりの速さだが、前の2匹は頑張れば僕でも追いつけるかもしれない。
「さて何処から攻めようかな?」
「先手必勝じゃなかったの?」
「ごめんなさい。スピード的に無理でした」
「そうね。じゃあ近付いて攻撃ってのは難しいかしら?」
「かも。『縮地』や『蜃気楼』使えばいけると思うけど。中距離攻撃は・・ここからじゃ当たらないかな」
目の前で常に動き回っている相手達。鳥系の知り合いはカイザーさんだけなので、鳥系は魔法主体のイメージしかない。彼らがそうとは限らないけど、中・遠距離をキープし近付いて来ないと考えると同じかな。
しかし、囲んでいるだけで攻撃して来なーー
「『ファイアアロー』!」
そう思ったら来た。撃ったのは後方に位置していた1匹。後方の2匹はそれぞれ2本の首でそれぞれマークしてたので回避は問題ない。少し上昇して躱す。
しかし『ファイアアロー』を合図に他の3匹も攻めてくる。タイミングを合わせて攻撃が途切れないように連続で魔法を撃ってきた。
「『ドリルペネトレーション』と『縮地』!」
「!? 『破剣』!」
「おわっ!?」
ギャイン!
魔法を躱していると、ユウさんが急に『破剣』を使って剣で僕の目の前を覆う。「何だ?」と思う前に大きな音を立てて何かがぶつかった。
「『縮地』使ったのに防がれた?」
「直進するだけでしょ? 使う前の向き見ればどこ来るかくらい分かるわ。『炎撃』」
「おわっと!」
剣の大きさがもとに戻ったら目の前に黒い鳥がいた。ユウさんの反撃を何とか回避し、味方の援護で再び距離をとる。闇属性かなと思ってたが、近くで見ると鈍い光沢があるのでメタル的な方かな。どうやら彼は魔法より物理寄りなのだろう。
マーキングしてみるとガンメタル・ターミガンと出た。因みに他はフレア・ターミガン、テンペスト・ターミガン、フロード・ターミガン・・・。進化階層は全員5だ。僕らより一段階低い。
しかしターミガンで合わせるとは、仲いいなあんたら!
そんな中、誰かが叫んだ。
「やっぱりゆずポン酢じゃんか!」
何故調味料? さっきも言ってたよね?
まぁ考えても分からないし、このままだと時間がかかりそうだ。反撃させてもらおう。
「ユウさん、ガンメタルをやるよ」
「了解」
相手は離れるためこちらに背を向けている。『縮地』が使えるみたいだが、クールタイム的にまだ再使用は出来ない。倒すなら今だ。
こちらを向いた今、『縮地』で距離を詰めーー
「『アクアランス』!!」
「おっ、丁度いいや。『蜃気楼』」
「「「あれ?」」」
目の前で消える僕らに彼らは面食らう。
その隙に僕はガンメタルの後ろに移動。一つの首で噛みつき動きを止める。
「なっ!? お前今何した!?」
「『蜃気楼』。詳細は自分で調べてくれ、『火炎』」
「じゃあね。『炎撃』」
そしてそのまま消えて貰った。やはり鳥系の魔物、HPはそれほど高くないらしい。レベル差もあるだろうが僕らの攻撃であっさり消えてくれた。
さて、あと3にーー
「「「撤収!」」」
振り向くと残りの3匹は一目散に飛んでいった。ありゃ追えん。
しかし撤退タイミングも一緒とか、本当に仲良いな。
「逃げられたな」
「まぁいいんじゃない。頂上の方向じゃないし、こうやって強さ見せておいたら狙われないでしょ」
「ああ、それで戦闘したんだ」
「他に理由ある?」
てっきり戦闘がしたいだけかと思ってたよ。ユウさん進化するにつれて戦闘狂に拍車がかかってるからなぁ。多分強くなるのが楽しいのだろうけど・・・。
とりあえず黙っとこ。
誰も居なくなったのでソリを再度引いて先へと進む。あれ? そういやさっきなまけの援護無かったな。まぁいいや、それよりも気になる事がある。
「なぁ、さっきの人ら僕らのことゆずポン酢って言ったたんだけど知ってる?」
「人違いでしょ。違うプレイヤーと勘違いしてるんじゃない? ゲームなんだから私たちと同じ種族の別のーー」
「でもユウさんも僕も同じ種族のプレイヤー居ないけど?」
今はどうか知らないけど、進化した時はオンリーワンだった。あれからまだ数日、今まで居なかったのに同時期に2人3人と増えるだろうか? 実装直後だと知らないが、新たな種族が実装されたなんて聞いた事がない。
「・・・そういえばそうね。なまけ、どうなの?」
「それな・・・」
なまけものはどうやら知っているようだ。だが、何やら言いたくなさそうな顔をしている。いや、言って良いのかどうか迷っているようだ。そして何故かソリがぶるぶる震えている。
ココアも知ってるのか?
「言いなさい」
「分かった・・・これだ」
「「ん?」」
見せられたのは僕らの写真。僕の上に乗ったユウさんが『破剣』を使って巨大化させた剣を振り上げている迫力ある状態で撮られていた。いつ誰が撮ったんだ?
「この前のタッグマッチでやった時にココアが撮ってたんだが・・・」
「勝手に撮ったのはココアだし分からないでもないけど・・・。それがゆずポン酢とどう関係あるのよ」
「写真の下側を見ろ」
なまけものに言われ、僕とユウさんは同時に首を動かす。すると下側にはゆずポン酢の文字が・・・
ついでにベストショットのハンコも付いていた。
それを見た途端、色んな衝撃が僕を襲った。
次回更新は明後日の予定です