220・なまけもの達と戦ってみた③
「じゃあポンタ、援護よろしく!」
「ええ~・・・」
「相手が回復する? ならそれ以上の力で殴ればいいんでしょ」作戦をユウさんが強行する。ユウさんいつの間にそんな脳筋になったんだと思ったが、ユウさん曰く確認したいことがあるからだそうだ。
「なまけ~。ユウちゃん突っ込んでくる」
「見りゃ分かるけど、攻撃したら『蜃気楼』で後ろ取られそうだしなぁ。真正面から突撃とか何考えてんだ?」
何も考えてませんよ。
おっと、とりあえず援護しておこうか。なまけものがユウさんに向かって魔法を放つので、『火炎』による炎の球で相殺し、合わせて『スケイルショット』や『溶解液』を上から撃ち込み、なまけものの行動を制限する。
今回の作戦、なまけものが逃げ回ると困るからね。念入りに邪魔しておかないと。
出来れば今のうちに『縮地』を使っておいてくれると助かるが、なまけものの回避の切り札なのでこの程度では使わない。『晶壁』や氷体を利用して最小限の移動で回避する。
しかしその間にユウさんが剣の届く範囲まで近づいていた。
「行くわよ。『狂炎舞』、『炎化』!」
一気にユウさんの頭の炎が赤く大きく燃え上がり、ユウさんを呑み込む。次の瞬間、ユウさんの全身が燃えた状態となり、速度を上げ一気になまけものとの距離を詰める。
そしてなまけものへと剣を振るった。
「・・・たしか攻撃と素早さUP、『炎化』は物理無効だったよな。なるほど、攻撃力を上げ一気に倒す算段だったか」
しかしなまけものはまだ冷静だ。軽いステップで後退し振るわれた剣を躱す。
とはいえユウさんも一撃躱された程度で終わるつもりはないようだ。再度距離を詰めて攻撃を続ける。流石にスピードが違うので連続攻撃はなまけものも躱しきれないようで、ココアと2人『晶壁』を使用してしのいでいる。
見た感じユウさんの有利に見えるが、今いる場所はココアの『凍土』範囲内だ。徐々に動きが鈍くなり始める。流石に不味いと感じたユウさんは一度距離を取ろうとするが、いつの間にかココアの氷体が足先を包んでいた。
「離しなさい!」
「ダメ。離さないよ!」
「ナイスだ、ココア」
ユウさんが氷体を溶かす間になまけものがユウさんの腕をつかむ。どうやらこのまま抑え込んで動けなくするつもりらしい。
「いいの? 『炎陣』と『炎化』であなたたちのHP物凄い速さで減ってるけど」
「構わん。ココアが要れば問題ないからな」
「回復するよー」
「じゃあもう一つ。回復する時間ある? 一人忘れてるんじゃない?」
「「? ・・・あ!」」
何のことだ? と2人が一旦顔を見合わせた後、数秒して気付いて上を見る。しかし遅い、次の瞬間2人は『縮地』で急降下した僕に押しつぶされた。衝撃で、地面が少し陥没する。
ありゃ、ユウさんに当たらないようにしたからちょっと位置ずれたかな。なまけものの頭を前足で押しつぶそうかと思ってたんだが、少しずれてしまった。
「痛ってぇ!!」
なので元々頑丈だったなまけものは踏みつけ程度では死ななかった。だが踏みつけられた時点でもう負けけは確定している。あとは乗ってるだけで猛毒による死だからな。
「ナイスタイミングよ。でももうちょっとゆっくり下りてきてもいいんじゃない? 衝撃がこっちにも来たんだけど」
「だって踏みつける予定なんてなかったし」
元々はユウさんがやられそうになった時、拾うために近くに居ただけだ。ユウさんが捕まった時に丁度いい位置に居たので咄嗟に行っただけだったがうまくいってよかったよ。
しかしこの『縮地』踏みつけはかなり使える。『縮地』踏みつけからの猛毒コンボ・・・うん使える。仮に相手が猛毒にならなくても、追撃すればいいだけだし。
よし、今度からは多用していこう。
「私も今後は『狂炎舞』使っていこうかしら。動かしやすさが全然違う」
「一応言っておくけど防御力減るから気を付けてね」
「大丈夫よ。当たらなければいいんでしょ?」
ユウさんが言うと本当に当たらなさそうだが、絶対はない。一応『狂炎舞』を使ったときはフォローするようにしよう。
「なぁなぁ? 俺も一個試したいことあるんだけど?」
「ん? 試したいこと?」
なまけものが足の下で藻掻くので少し力を緩める。
ココアは踏みつけ時に死んでしまったようなので、もうなまけものが回復する術はない。その上残り少ないHPも猛毒で直ぐになくなりそうだから、今から逆転されることは無いだろう。
「で? 試したいことって?」
「これ、『ダークx8』」
「え!? あ、お前!!」
慌ててなまけものを止めようと思ったが遅かった。なまけものの手から放たれた黒い塊が一気に広がり目の前を覆った。
次回更新は明後日の予定です。