216・冒険者で練習してみた
「なんかヤバいの飛んでる!」
「乗ってるやつもヤバそう」
「ヤベェこっち来んぞ!」
なんか下が煩い。まぁ珍しい種族になったから目立つのは分かるが・・・
ただ通りたいだけだから騒がないでほしい。
「やっぱり三つ首の竜って目立つのね」
「いやユウさんも十分目立ってるから。寧ろユウさんの方が目立ってるから!」
「ちょっと待って! 私の方が悪いみたいな言い方やめてよ」
「ええ~・・・」
「だってユウさん髪、燃え上がって物凄く目立つし・・・、そもそも最初に僕のせいにしたのはユウさんじゃん!」と言いたいが、ユウさんの目が怖いので口から出すのはやめた。
言った瞬間、絶対殺られる。
「そんなつもりはないけど・・・。仕方ないあっちの人気の無さそうなところに行こうか」
まぁこれに関しては周りに慣れてもらうしかない。
この辺に降りると騒がしくなりそうなので、プレイヤーがいない方向へと方向転換する。なまけもの達はどうしたんだろうか。一応このエリア内にいればレーダーを頼りに追ってきてくれるか。
「あ、あの辺は? ちょうど冒険者も居るし」
「了解、降りるよ」
「あ、せっかくだしこのまま戦闘しない?」
「いいけど何で?」
「騎乗したまま戦うって一度やってみたかったのよね。前に一回他のプレイヤーがそういうことをしてるの見てて面白そうだったの」
「確かに面白そうだけど・・・」
僕のスキルは中・遠距離寄りになっている。近距離特化のユウさんからすればあまり試し斬り出来ないと思うけど・・・。
まぁ本人がしたいというのならしようか。
「じゃあこのまま先制攻撃するよ」
「私もやるわ。『火炎』なら届くでしょ」
「了解」
『火炎』を攻撃が届く範囲になるまで溜めて、2人で冒険者一行に向けて放つ。火炎放射器のように炎が彼らに襲いかかり燃やす。
僕は勿論口からだが、ユウさんは手から出るようだ。そして威力は若干ユウさんの方が強い、やはり炎属性特化の影響だろう。
しかし3つ首全てから撃った『火炎』が威力負けするのはちょっとショック。
『ぎゃあああああ』
「今よ、一気に近付いて!」
「・・・了解」
そしていつに間にかユウさんの乗り物化してる。
とりあえず言う通りに動き、低空飛行でいきなり降りかかった炎に慌てている冒険者へ突っ込む。それぞれの首で冒険者を跳ね上げ、空中へと打ち上げられた冒険者はユウさんがまとめて『炎撃』で薙ぎ払った。
3人の冒険者が一撃で灰と化す。
「『ヒィイイイ!?』」
「あ、1人取りこぼしてた。『火柱』」
そして僕と一緒に驚いていた冒険者は、地面から吹き出した炎に飲み込まれた。そして炎が治まったそこには誰もいない。
あっけなく終わりユウさんが不満そうな顔をする。
「あれ? もう終わり?」
「進化の影響もあるけど、レベル差のせいかもね」
「あ、そうか。じゃあどんどん行きましょ。ほら次!」
「・・・へーい」
ペシペシ叩くユウさんが楽しそうなので今日は乗り物に徹すると決めた。ユウさんは最初こそ乗っての戦闘を繰り返していたが、その内降りて戦ったり、乗ったりと戦況に合わせて攻撃を切り替え出す。僕はとりあえず『猛毒弾』や『溶解液』を試しつつユウさんの攻撃のフォローに回り続けた。
ユウさんの立ち回りが上手いおかげか意外と騎乗しながら戦う戦法は強かった。
ちなみに僕のお手軽戦法は相手の上に乗るだけである。そうするだけで勝手に猛毒状態になり倒せるのだ。今までは出来たが体重が軽すぎたので無理だったが今回の進化でそれが可能になったのだ。ただ奇襲しないとほとんど乗れないのがネックだが。
「ふぅ・・・。暴れた暴れた。スキルも扱いやすいし悪くないわね」
「じゃあ変化はもういいの?」
「要らないかな。『雷斬』使えないのは痛いけど、『風切』なら『火炎』で代用できそうだし」
ユウさんの場合『火炎』は剣を振って出すことも出来るらしい。その場合弾としてしか出ないが、手から射出するよりも弾速が速い上、『風切』と同じ感じで使える為ユウさん的には此方の方が使いやすいらしい。
「ポンタの他の首ってどうなってるの? 何かコロコロ喋る首が変わるのだけど・・・」
「あ、これ? 実は意識することでどの首を操作出来るか切り替えるんだ。だから」
「こんな風に」
「切り替えたり」
「「「合わせたり」」」
「出来るんだ」
「へ、へぇ・・・」
これは他の首を操作できないのかとああだこうだしてる際に出来るようになった。一応全ての首を同時に動かすことが出来るけど、それぞれを別々に動かすなんて器用な事は出来ないし、合わせて喋るとただ煩いだけなので基本は真ん中にしておくけどね。
「そういえばなまけ達来ないわね」
「まだ争ってるんじゃない? 戻ってみようか」
一度プライベートビーチまで戻る。しかし2人は居なかった。レーダーを見ると遠くにいるようだが・・・。
何処行ったんだろう。
次回更新は明後日の予定です。