198・また出会ってみた
「つまり・・・その適正(適性)値があれば特殊な進化ができるってことか?」
「特殊な進化っていうよりは派生を飛び越えて大きく変質させることが出来るらしいの。意味は私も良く分かってないわ」
派生を飛び越える・・・
つまり今の種族から進化できる複数の種類以外を選べるということだろう。突然変異みたいなものかな。
良く分からないところもあるが、進化先の候補が増えるのは有りだ。試してみる価値はありそう。
問題は・・・その適正(適性)値を手に入れられるのが隠しエリアしかないということだ。
「結局隠しエリアに行かないといけないのか・・・。しかも火山エリア・・・」
「しょうがないでしょ。適正(適性)値を手に入れるの第3オアシス以降のエリアだけらしいし。ココア大丈夫?」
「何とか~・・・。暑くて死にそう」
なまけものの上でぐったりとしているココア。
適正(適性)値を手に入れられる第3オアシス以降の隠しエリアで現在場所が分かっているのが火山エリアしかなかった。入口は火口にあるそうで全員で火山を上っている最中だが、徐々に気温が暑くなり火に弱いココアが弱体化している。
「他の場所は知らないのか?」
「探したけど載ってなかったんだよ。ここは入口が目で見える場所にあるから載ってたけど、他は沼地エリアみたいに仕掛けで隠されてるから知ってる奴少ないんだろうな」
「流石に手がかりも無しに探すのはきついしなぁ。冒険者尾行して情報収集するのが一番手っ取り早いけど時間かかるし」
そもそも尾行した所で必要な情報を落としてくれるかどうか分からない。何十分も尾行して何の手がかりも無しなんて良くある話だ。それなら道中が辛いけど、すでに分かっている隠しエリアに行ったほうが早い。
「あ・・・」
「あ!?」
ひーひー言いながら火山を上っていると、目の前に無駄にデカい魔物を確認。こっちが声を漏らすと、向こうも気付いた。
「あ! てめぇ!」
「うーわ・・・また出た」
居たのはさっき蹴落としたサイクロプス。ゴーレムと赤い虎もセットだ。さすがに人形は抜けたのか一緒ではない。
「誰だ? ポンタの知り合いか?」
「ほら、さっき言ってた絡んできたアレ」
「ああ、あいつらがアレか。因みに土下座したのは?」
「流石に抜けてるな。しかし何でここに居るんだ?」
あそこでレベル上げしてるんじゃなかったのか?
3人は僕を認識するとまた通路を塞いだ。明らかにこちらをロックオンしている。どうやら根に持たれたようだ。もしかして僕が火山の方に行ったと思って登ってきたのかな。
「また通せんぼか? 懲りないな」
「うるせぇ。せこい勝ち方しやがって。今度はマグマもねぇし同じ手は食わねぇぞ」
せこいって・・・、お前らの方が卑怯なクズ戦法してきた癖によく言う。子供か?
溜息をついて首を振るとなまけものが「どうする?」と聞いてきた。
「ポンタ1人で勝てるってことは強くないんだろ? さっさと消すか?」
「その言い方だと、僕が弱いように聞こえるんだが?」
実際弱いけど。サポートメインのココアを抜いたらこのパーティ内で最弱だ。最強は・・・言う必要ないな。
「まぁ倒した方が早いかな。遠距離攻撃持ってなさそうだから、遠くから攻めたら終わると思う。ちょっとゴーレムが硬いから手こずるかも」
「ならゴーレムから消すかな。真中だし下からだと簡単に当たるだろ」
「じゃあ私はあのデカいのをやるわね。正面だから狙いやすそう」
「なら僕は虎か、届くかな?」
「あたしは休憩してるー・・・」
相手を決め、戦闘を開始。
マーキングした所、相手のレベルは45程で同じくらいだ。こちらから攻めた上、人数も多いので、さっきと反対でこちらが若干不利な状態でのスタートだ。
だが・・・
「『ダークランス』」
「『火球』」
「・・・『風切』」
「「「うわぁあああ」」」
相手にならなかった。
また同じように固まって居たので、なまけものが『ダークランス』で下から、僕が『火球』を山なりに撃って上から、ユウさんが『風切』を正面から撃って攻撃した所、相手は対処しきれずHPがどんどん減っていく。
途中で相手は陣形を解いて突進してきたが、こちらは後ろに下がって同じことを繰り返す。相手のスピードは思った以上に遅いので、面白いように当たる。
「うっぜぇえええ!」
「またクソ戦法使いやがって!」
「いやこれが最適だから」
「何かつまんない」
ユウさんからも不満が出てるが無視だ。最初は意気揚々と『風切』を使っていたが、想像以上に相手が弱かったせいでつまらないらしい。
まぁ仕方ないだろう遠距離攻撃を持っていない相手が悪い。そう思いながら『火球』を撃ち続けると、HPが一番低いのであろう虎が真っ先に消滅した。
「一人終わり」
「!? クソがっ!」
「あっ!!」
虎が死んだことで相手はイラつきが限界に達したのか、サイクロプスが一瞬のうちに消えた。それに続くようにゴーレムも消える。
どうやら回線切断をしたらしい。ネットゲームではよくある光景だがこのゲームでは初めて見た。
「えっ、何? なんで消えたの?」
「あーあ、もう少しだったのに・・・」
なまけものも理解して溜息を吐いているが、よく分かっていないユウさんだけは周囲をキョロキョロして混乱していた。
僕は取り敢えず通報ボタンを押した。
次回更新は明後日になります