1・買ってみた
ガサガサと家電量販店の袋から箱を取り出す。
最近出たばかりのゲームをやる事になったので、会社帰りにゲーム機本体とセットで買ってきた。
やってみたかったとはいえ、新入社員にこの出費はデカい。春休みにバイトしまくっていて良かった。
プルルルル!
おっと電話。柳さんからか。
『もしもし、竹君。今大丈夫?』
「もしもし、大丈夫だよ。どうかした?」
『買ったのは良いんだけど・・・。これどうしたら良いの? 箱開けてもよく分かんないんだけど』
「あー・・・えっと。どの辺が分からない?」
『全部』
どうやらゲーム機の配線が分からないようだ。ゲームなんてしないって言ってたから知らなくて当然だよな。
「僕も今からセッティングするから一緒にする?」
『お願い』
「じゃあまず箱から全部出そうか。接続の説明書があるからそれに沿ってやっていくから」
箱から取り出した説明書を見る。スタートアップ資料が別にありかなり丁寧に書かれている。
こういうのあっても説明書読まない人って全く見ないよな。その上、あれどうするの?とかコレどうするの?とか聞いてくるから嫌になる。
柳さんの事じゃなくて、僕の母の事だけどね。
ゲームにしてもチュートリアルすっ飛ばして「これどうするの?」って言ってくるくらいだし。
「んで、その線はコンセントにね。もう一つが」
『もう一つがこのヘッドセットに繋げれば良いのね。説明書に書いてあるわ』
柳さんが読んでくれる人で良かった。
ヘッドセットに繋いだら一通り完了かな。
「後は被って起動するだけで出来るはず。あ、ゲームは本体に挿しておいてね」
『大丈夫、今挿したわ。ありがと、じゃあ今から始めてみるわね』
「待って。その前に他の2人の状況を確認しといた方がいいかも。ゲーム内で合流する場所も決めないと行けないし」
『そ、そうね! ちょっと待って、今他の2人にもグループ電話繋ぐわ』
柳さんが他の2人・・榊と柊さんに連絡する。僕を含めたこの4人は今年入社した同期だ。
数回のコールの後、繋がった。
『もしもーし、さっきぶりー。柳さんどしたのー』
『ちょっと状況確認と今後の集合場所について話したいんだけど・・・。榊君は・・繋がらないわね』
「もしかしたらもう始めてるんじゃ・・・」
『あ、竹くんも居たんだ!』
「柊さんはゲーム機の接続大丈夫? 分からない事ある?」
『無いよー。あんなの説明書見たら分かるし、誰でも出来るじゃん』
『そう・・ね。そうよね・・・』
『もしもし! すまん! バイブにしてて気付かんかった。どうかしたのか?』
「榊は接続終わった?」
『終わったぞ。ちょっと起動して確認してたんだけど、初期設定多すぎて面倒くせぇ。まだゲームまでたどり着けてねぇわ』
『早いわね。私なんてまだ繋いだところよ』
『私も』
『初期設定多いし、今日はそれで終わる気がする。一応全員終わったらフレンド登録しておきたいしID教えてくれ』
『了解、じゃあ終わったらかけ直すね』
『あ、ID?』
「それは後で教えるから。取り敢えず初期設定しようか・・・」
柳さんだけついて行けてないな。大丈夫だろうか?