196・攻撃されてみた②
「うーん、どいつから攻めようか」
とりあえず『スケイルショット』でちまちま攻撃しようかな。でも確実に躱せる距離だし、ただ手の内を見せるだけになりそう。『火球』も同様だ。
「仕方ない。こちらから行くか」
「はっ、ようやくかよ」
こちらが動き出すと向こうもすぐさま反応した。先頭に居たサイクロプスが通路の一番細い所まで移動し、そこで仁王立ちをし始めた。無駄に巨体な所為で、こいつ1人が立つだけでもう通れない。
で、これからどうするんだろうか? サイクロプスは通せんぼするだけで、特にないもしてこない。他の3人も攻撃をしてくる様子はないし。
「で?」
「はっはぁ、ここは通さねぇぜ」
「『火球』」
「『岩壁』」
「『ヒーリス』」
邪魔なのでサイクロプスの頭に『火球』を放ったが、サイクロプスのすぐ後ろにいたゴーレムが岩の壁を作り防ぐ。
気付いたら、人形を除く残り2人がサイクロプスのすぐ後ろに移動していた。恐らくだが、これ位近くないとさっきの『岩壁』でサイクロプスを守れないのだろう。
そして火球の爆発で受けた小さいダメージは遠くにいる人形が回復する。
「はっはぁ! 『バスターハンマー』」
「うおっ!?」
そしてサイクロプスからの高威力のパンチ。パンチ自体は回避したが、拳圧に巻き込まれ吹き飛ばされる。何とか着地したが、想像以上にダメージがデカい。
同レベルならまともに受けただけで瀕死状態になりそうだ。
しかしなるほど、そういう戦法か。
つまり通せんぼに特化して徹底的に嫌がらせするタイプか。で、不用意に近づくと攻撃を受ける。今はまだ何もしていない虎はそうだな・・・赤い虎だから見た目的に炎属性だとして、ユウさんと同じ『火舞台』でも持っているのだろうか? 近付いたところをスリップダメージで削る役目かもしれないな。
「めんどく・・ん? おっと!」
溜息をつこうとして気付く。足元近くまでマグマが来ていた。咄嗟に離れ周囲を確認する。
知らぬ間に自分の周囲の通路がかなり狭くなっていた。
「気付いたか。もう少ししたらそこの部分はマグマで消えるぞ」
「へー・・・」
マジか・・・道理であいつらこっちに来ないわけだ。
だがここで焦ると奴らの思い通りになる。それにそもそも脱出は簡単だ。『縮地』で跳んで奴らを飛び越えればいいだけだ。
ただそれをすると奴らの待つ中に飛び込むことになるので、着地と同時に袋叩きされる恐れがある。
できれば今いる場所が無くなる前に2人程消しておきたいところだが・・・どうするか。
手っ取り早いのはあのくっついている3人の後ろに回って溶岩に落とせばいいのだが、後ろに回るには『蜃気楼』を使う必要がある。『縮地』では移動は出来るものの奴らのすぐ後ろには移動できないからな。しかし『蜃気楼』を使うにはダメージを受ける必要、つまり攻撃を受けないといけない。
・・・ん? いやダメージなら何でもいいのか。
すぐ傍のマグマを見る。それを見たサイクロプスはこっちが困っていると思っているのだろう、笑いながら問いかけてきた。
「さあどうする? さっさと死んだ方が時間を無駄にしないぞ」
「じゃあぎりぎりまで居座ってお前らの時間を無駄にしてやろう」
「やれるもんならやーー」
「『蜃気楼』」
相手の言葉を聞く必要は無い。
会話に意識が向いた瞬間『蜃気楼』を使用して片足をマグマに突っ込む。そして瞬時に固まった3人の後方に瞬間移動した。
やはりダメージなら何でもいいようだ。これは意外と使えるかもしれない。
「は?」
「おい何処行った!?」
「後ろだ。『毒双斬』」
「ぬぁああ!?」
困惑する虎の胴体を真後ろから尻尾で薙ぎ払ってマグマの中へ落とす。ジュワッと音がして虎はそのまま消失した。
分かってたけど落ちたらヤバい。
「クソッ、瞬間移どおっ!?」
「はい二人目」
「あっ、馬鹿!? 押すな」
『縮地』タックルでゴーレムも突き落とす。流石ゴーレムといったところか、いつもより反動ダメージがデカい上、吹き飛ばすことも出来ずその場に倒すことしか出来なかった。ただそのおかげで、倒れこんだゴーレムに押されるようにサイクロプスも倒れる。
ゴーレムはマグマの中に消え、サイクロプスは咄嗟に着いた手がマグマで消える。
「ぐぁああ」
「おい、転がると落ちるぞ?」
痛みを我慢するためにサイクロプスが狭い場所で転がる。僕はその間に巻き込まれないよう少し下がり、『スケイルショット』を当てて毒状態にしておいた。人形が回復するかもしれないが、あとは放置でよさそうだ。
「さて、あと一人」
「・・・・・」
1人離れた場所にいる人形に向き合う。相手もこちらを向き持っていた杖を構える。サイクロプスを助ける気は無さそうだ。
見た感じは魔法使いで回復持ち。ココアタイプだったら魔法攻撃力は大したことないと思うが・・・、さてどう攻撃してくるのだろうか。
そう思いながら構える僕に対し、人形は予想外の行動に出た。
杖を地面に突き刺しジャンプする。空中で体を胎児のように丸めて着地した。
同時に、
「すみませんでしたー!!」
大きな声で謝罪。
それは土下座以外の何物でもなかった。
次回更新は明後日の予定です。