193・草原エリアの隠しエリアを歩いてみた
「ったくよー。おまえ最近俺に対して態度悪いぞ。最初はあんなにいい奴だったのに・・・」
「そりゃあれだけ絡まれたらそうなりますよ。まぁ打ち解けてきたということで。というかカイザーさんが開ければあんなことにはならなかったんですよ?」
「俺の力じゃ無理なの! あれ、新規プレイヤーが入れないように一定の力がいるようになってるんだが俺のステでは足りなかったんだ。足りてたら一人で先行ってる」
再度開けた隠しエリアの入口より先へと進む。といってもほぼ垂直に近い急な坂なので、滑り落ちていると言った方が正しいが。そもそも道なのかも怪しく大きなモグラなど、何かが通ってできた穴のような感じで、入口が普通に開いていたら隠しエリアへの道なんて思わない。
というかいい加減隠しエリア=地下というのはやめてほしいな。飽きる。
「お前が行く場所が地下なだけだろ。空に行くパターンだってあるらしいぞ」
「マジですか? どこのエリアです?」
「知らん。そこまで詳しく載ってなかった」
残念。
とはいえいい情報だ、今度それっぽい所を探してみよう。丘エリアとか怪しそうな気がするな。
「・・・見つけたら教えてくれよ?」
「それは、はい、了解です」
隠す理由は無いので了解しておく。
丁度、急な下り坂が終わり、大きな空洞部分に到着した。ただ土を掘っただけの空間で穴だらけになっており、今にも何かが飛び出してきそうだ。
広さ的にボス戦なのは間違いないので、自分のHPを確認しつつ周囲を警戒する。しかしそんな僕に対しカイザーさんは無警戒のまま先へと進んでいく。
「カイザーさん?」
「ここボス居ないんだよ。あの迷路抜けるだけだそうだ」
「えー・・・」
なんか一気にやる気がなくなった。
最初から分かっていたカイザーさんは迷路の順路も知っているらしく、「早く来い」と言いつつ一つの穴へと入っていく。そこ知っているのであれば、この隠しエリアの入口の場所も知っておいて欲しかった。
「まぁ最初のエリアだから戦闘とかは無しにしたんだろうな。ちょっとつまらないがこれで報酬貰えるから楽でいいが」
「でもスキルは無さそうですね。いきなり適正(適性)値くれるって言ってもよく分からないしステUPだけですかね?」
「多分そうだろうな」
「というかここの情報・・・誰に聞いたんですか?」
「うん? ああネットだよ。誰かがSNSでこんな所あったって言って話題になってたから知ってるだけ」
「それならなまけも知ってそうですが・・・」
「リリース当初だったからなまけものも知らないんじゃないか?」
「なるほど」
カイザーさんが言うには、たくさんのプレイヤーが調査して隠しエリアであろうとの結論にはなったそうだが、何にも無いので飽きられるのも早かったらしい。だが隠しエリアの存在がこれを機にプレイヤー達に周知されたそうだ。
「これがその時のだな」
「あ、ちょっと失礼しますね」
その時のネット情報をカイザーさんが見せてくれる。書いてあるのは今カイザーさんが言ったこととほぼ同じだった。ちょっと違う・・・というか引っかかる事と言えば、
「これ、何にもないってのがありますね。もしかして報酬無しですか?」
「ああ、それな。有る人と無い人が居るんだよな。一応そのあるって場所に向かっているが、同じ場所でも有ったり無かったりしてる」
「なんか仕掛けでもあるんですかね?」
「さぁな。まぁこんな迷路だから無い人は間違って違う場所に行っているって可能性もあるけどな」
「そうですね」
2人して笑いあう。まぁ僕らも間違ってたら笑ってくれ。
「ん?」
「どうしました?」
「・・いや、ここって分岐あったっけ? 記憶だとあとは一本道だった筈なんだが」
カイザーさんに言われ前を見ると右に穴が開いており先へと続いている。奥で曲がり角にでもなっているのか先は見えない。カイザーさんが言うにはあと真っ直ぐ行けば終わりらしいのだが・・・
「知らないですよ。間違えたんじゃないですか?」
「いや、記憶上は合ってる」
「じゃあ記憶が間違ってるんじゃないんですか?」
「ははは、それは否定できん。まぁいいやこっち行こうぜ」
笑いながらカイザーさんは真っ直ぐではなく右側へと移動する。普通記憶通りに行くのであれば真っ直ぐなのだが、何となくこっちが気になるらしい。僕としてはどっちでもいいので何も言わずついていく。
すると・・・
「あれ? 外に出ちまったな。・・・間違ったか」
「どの辺ですかね?」
何もなく外へと出てしまった。
明るい光に少し目を細めつつ周囲を確認する。見た感じ草原エリアで合っているようだが場所が分からない。それに何故かレーダーにノイズが掛っている。
「あ、でも社はありますよ」
「ん? お、本当だな。なら当たりだったか」
目の前に他の隠しエリアと同じような社を発見。どうやらこっちが正解だったようだ。
ボスも居ないので社に近づいて報酬をもらう。内容を見ると予想通りステータスUPだけだった。
「・・・・・」
「どうした? 取らないのか?」
「どれ取ったらいいかが分からないんですよね。それになまけが言うにはそろそろ進化も打ち止めなので先に進化してステータスが分かってから決めた方がいい気がして・・・」
「それはあるが、余程の方向転換しない限りステータスの得意不得意が変わることは無いだろ?」
「そうですけど、今パワー不足だから上げても、進化で上げる必要なかったーってなった時どうします? 他の取った方が良くないですか?」
もうステータスが変わらないのであれば個人的には短所を伸ばしたいところだが、まだ進化で変わるかもしれない。そう思うと決められなかった。
「それもそうだな」とカイザーさんは頷き、今回はパスすることにした。
回れ右したところでカイザーさんがジト目でこっちを見る。
「ところでさ・・・」
「はい?」
「それ言うの入る前に言ってくれないか?」
「そう言われても・・・」
気付いたの今だし・・・
次回更新は明後日の予定です。