192・草原エリアで入口を探してみた
「なんで草原エリアなんですかー・・・」
半ば強引に連れられてきた草原エリア。
相変わらず広々としており、周囲には新規プレイヤーが沢山いる。逆にレベルの高い僕らが浮いてしまっているくらいプレイヤーが多いし、当分の間はこのゲームが過疎ることはないだろう。
「イベントまで時間無いからな。隠しエリア周りでもしようぜ」
「何処にあるか知ってるんですか?」
「草原エリアと荒野エリアだけだが。まぁ両方とも聞いただけでまだ行ってないんだけどさ。どうだ?」
「行きまーす」
断る理由はない。
まぁ後でもう一回みんなと行く事になるだろうけど、実際行ってみておいた方がいいだろうしさ。
「で、何処にあるんですか?」
「草原エリアのちょっと盛り上がったところに入口があるらしんだが・・・」
カイザーさんも正確な場所までは知らないらしい。
キョロキョロしながら周囲を見渡している。僕も真似して見てみるが平面と言いたくなるほど周りに盛り上がった場所はない。見渡す限り限り傾斜0°だ。
「取り敢えずこのエリアの反対側まで行ってみるか」
「そうですね。この辺はなさそうですし」
周囲の冒険者をスルーしながら走って移動する。途中ロイゼンがこっちを認識したが、レベル差から攻めてくることは無かった。最初はあいつ1人に何度もボコボコにされ、4人で苦戦したのが懐かしい。
「あ、アレですかね?」
目の前の2メートル程の高さに盛り上がった場所が見えてくる。花畑のようで、色とりどりの花が咲いて綺麗なところだ。
・・・これがそうなら目印を「盛り上がった場所」じゃなくて「花畑」にしたほうがいい気がする。
「あ、それ違う。花がない盛り上がった場所がそうなんだ」
「あ、そうなんですね」
「けどこの辺か。周囲に花畑ではない盛り上がった場所はないか?」
カイザーさんにそう言われて周りを見渡すと、遠くに同じような花畑が見える。なるほど、この中で盛り上がっているだけのものを探せばいいのか。
時間も惜しいので、二手に分かれて周辺を捜索。同じような花畑が等間隔でちらほらあるが中々目当てのものが見つからない。カイザーさんからも連絡が無いし、向こうも見つからないらしい。
「結構回ったはずけど無いなぁ・・・。ここじゃ無いのかな?」
見える範囲をあらかた回ったが見つからない。見えない範囲はカイザーさんが回っているはずなので、これで無いのならここじゃ無いのかも。しかし他に地面が盛り上がっている場所なんてあるのかな?
いや、自分が知る限りは無い。草原エリアを全部歩いたことはないけど、それでも結構いろんな場所には行ったつもりだ。
もしかして何か仕掛けが・・・
カイザー :おーい、見つけたぞー
ポンタ :了解です。そっち行きます
無かったか。
チャットを返し、カイザーさんの方向を確認して直ぐ様向かう。見えない位置にカイザーさんは居たがそれほど遠くも無かったので、直ぐに合流出来た。
カイザーさんの側には確かに花の咲いていない盛り上がりがある。
「これですか?」
「多分な」
「入口は?」
「まだ見つけてない。ぱっと見は分からん」
「入り方は?」
「知らん」
「・・・・・」
どうやら次は入口を探さないといけないようだ。
まずは盛り上がりの周囲を確認・・・何も無い。
次に盛り上がりの途中を確認・・・何も無い。
最後に盛り上がりのてっぺんを確認・・・何も無い。
調査結果・・・ここじゃ無い!
「ちゃんと探せ! ここにあるだろ」
「え? 本当ですか?」
カイザーが「ここだ」と自分の足元を嘴で示す。恐らく目印なのだろう、そこは草原の草が他よりも倍長く、引っ張れと言わんばかりに結んで取ってのようになっている。
おかしいな。さっきまでそんなの無かったぞ。
「探し方が悪いだけだろ。ほら引いてくれ、俺無理だし」
「・・・分かりましたよ」
カイザーさんの力では引けないらしいので代わりに咥えて草を引く。するとガコンッと音がし、カイザーさんの真下に穴が開く。
「あ」
「おわっ!?」
そして目の前でカイザーさんが落ちていった。中は急な坂になっているようで、ゴロゴロとカイザーさんが転がっていくのが見える。
「・・・地獄に堕ちたか。では」
もう一度草を引くと入口が閉まっていく。ふぅ、これでよーー
「閉めんな!!」
「ダメか・・・」
閉まりきる前にカイザーさんが飛んで出てきた。
残念、あとちょっとだったのに。
次回更新は明後日の予定です。