184・天照と戦ってみた
『『晶弾』』
杖の先に水晶が生成され、思ったよりも遅いスピードで飛んでくる。追尾性能は無いようで簡単に躱せた。しかし着弾した途端あの硬い岩盤のような地面を抉る。HPが既に半分ほどしか無いので当たるのは不味そうだ。
うーん・・・。初期エリアの一つである森エリアだから、ボスがあったとしてももっとレベル低いと思ってたから気楽にしてたのに・・・。こりゃ無理かも。
『『晶弾』、『晶弾』』
ゴォン! ゴォン!!
躱した場所が水晶で削り飛ばされる。相手は『晶弾』が届く一定の距離まで近付いた後、その場から動かずに遠距離攻撃を撃ち続けてくる。負けじと『スケイルショット』で撃ち返すが滑るように躱してまた繰り返す。
相手の攻撃は簡単に躱せるのでこのまま倒したいところだが、相手も当たってくれないので終わらない。むしろ撃つたびに『スケイルショット』の残弾数が減るのでこっちが不利だ。『火球』は今の距離だと届かないし、相手の魔力なんて無限だろうし。
となると攻めるしか無いか・・・
しかしまだ『晶弾』しか見ていない。恐らく近接用の技もあるだろうから出来れば見てから突っ込みたい。何て言っても意味ないな、やり直し前提で突撃すっか。どうせ1人だから誰にも迷惑が関わらない。
『『晶弾』』
「『縮地』」
ゴォン!
『晶弾』と入れ替わるように僕は天照へと突撃する。すれ違う際に『晶弾』が掠ったが一瞬にして天照の後ろに移動し『毒双斬』を当てる。
『ッ!?』
しかし一撃は入ったが2撃目は持っていた長杖で防がれる。天照はそのまま『毒双斬』の反動で吹き飛んで距離を取る。
どうやら天照は浮いているせいか踏ん張ることが出来ないようだ。衝撃を加えれば天照の得意な間合いまで距離を空けられてしまう。
くそぅ・・・。
『縮地』のクールダウンはまだかかるし、そもそも何度も使うとしんどいし・・・、あと『毒双斬』のダメージ少ないし!!
一撃だけとは言え、何だよ!! 1割程しか効かないって! 勝つには後9回も『縮地』使わないといけないのか?
仕方ない、走って近付こう。そうすれば相手の新しいスキルも何か分かるだろう。そう思い再度突撃を開始。しかし天照は相変わらず距離を取りつつ『晶弾』を撃ってくる。天照の移動速度は僕とほぼ同等、このままでは追いつけず撃たれ続けるだけなので、相手を戦闘フィールド端に追い込むように移動しつつ距離を詰める。
難しそうだが、適度に『火球』で誘導すると簡単に思ったところへと移動してくれる。
『『晶弾』』
そして『毒双斬』の当たる間合いまで近付いた。相手はまだ『晶弾』を撃ってくるがもう慣れたので楽に回避して『毒双斬』を放つ。
『『蜃気楼』』
しかし攻撃が当たった瞬間天照の姿が歪んで消えた。何処だと見渡す間に後ろから声が聞こえた。天照は無駄口を言わない。声が聞こえたということは攻撃だ。すぐさま動きその場から離れる。
予想した通り離れた直後に『晶弾』が地面を抉った。
『蜃気楼』か・・・
どうやら回避スキルのようで、攻撃を受けた瞬間転移できるスキルのようだ。性能的に次回使用までの時間は長いだろうから、連続使用は出来ないだろうけど・・・転移先を自分の好きな場所に出来るのならかなり使えそうな技だな。遠距離をわざと受けて相手の後ろに転移とか出来たらヤバすぎる。
それはそれとしてこれも勝ったら貰えるのだろうか? もしそうだとしたら何としても手に入れなければ。
「よし、やるぞ」
こうなったら勝つまでとことんやってやろう。とはいえ前から突っ込んでも『蜃気楼』で躱される。長めのクールタイムはあるだろうが、追い込むのに時間が掛かるのでダメだ。
なのでさっきと同じように『晶弾』を躱しつつ『縮地』で相手の後ろに回ってからの攻撃。相手は反応こそ早いものの、『縮地』直後に攻撃すれば初撃は当たる。
『縮地』を行うたびに受けるGの負荷を我慢しながら、これを繰り返し何とか半分までHPを削った。
「あと半分・・・」
まだ半分とは考えないようにする。
既に『縮地』の連続使用で気持ち悪い。そろそろ限界かも。
『・・・水よ』
内心へばっている僕の前で、天照が長杖で地面を軽く叩く。すると叩いたところから大きな水玉が出てきた。それはすぐさま天照と同じようなシルエットに変化して、同じように長杖を構える。
なんか先輩の『ウィンディ』と似てるな・・・まさか・・・
『『晶弾』』
「ほらぁ!!」
ゴゴォン!
二つの水晶が同時に僕を襲う。やはり『ウィンディ』と同じであれは分身のようだ。スキルを使ってはいないが、まんま『ウィンディ』の水版である。恐らくスキルにすると勝ったときに取得できてしまうから固有技にしたのだろうかと勝手に考える。
しかしそれはそれとしてこれは不味い。
分身追加で天照の行動が変わった。遠距離からの攻撃は変わらないが挟み撃ちをするように動き回り、2人を視界にとらえながら戦うのが難しい。
『『晶撃』』
その上、分身は適度に近接攻撃もしてくる。長杖の先端に大きな水晶を纏わせて殴ってくるのだ。威力は『晶弾』よりも高いが、その分隙も大きい。しかしその隙をカバーするかのように本体が『晶弾』を放つので攻撃するタイミングを失う。
「ああ、もう!」
しかしそれだと永遠に戦闘が終わらないので『晶弾』を無視して攻撃を強行。この分身が『ウィンディ』のスキルと同系統なら、恐らく一撃入れるだけで消えるはずだ。スキル集で確認したが、この系統の分身のHPは本体HPの1%とかなり低く設定されている。だからよほど攻撃力が低い場合を除けば一撃で倒せるのだ。
「『毒そ・・・ごふっ!?」
『晶撃』のからぶったタイミングに合わせて『毒双斬』を当てようとする。しかし分身に当てる前に『晶弾』をくらって失敗した。
その場に転がった僕の目の前で分身が長杖を振り上げる。
「はは・・・、もう無理」
避けることは出来たが、HPもさっきので大分減った。休憩挟んで一旦仕切りなおそう。
そう思った矢先、『晶撃』によりHPが消し飛んだ。
次回更新は明後日の予定です