169・プライベートビーチで休憩してみた
「ふぅ・・・落ち着く・・・」
「だよねぇ・・・」
ユウさんを本調子に戻すべく、一度確認も兼ねてプライベートビーチへと赴く。プライベートビーチはまだAIが死守してくれていたようで奪われていなかった。
それにちょうどタイミングが良かったのか、転移時は戦闘中でなく、転移後も誰も来ない。おかげでユウさんは海を見ながらココアと一緒にリラックスしている。
しかし僕としては戦闘でストレス発散してもらおうと思ってたので、出来れば誰か来て欲しいところだ。
何でこう・・・来て欲しい時に限って来ないかなぁ・・・
まぁユウさんのんびりしてるしいいか。
「これからどうする?」
「うーん・・・どうしようか」
まだ墓場エリア入ったばっかりなので出来れば戻るつもりだが、ユウさんがいいよと言うかどうか・・・
やはり機嫌を取るために火山エリアに変更すべきか・・・
・・・そういえばココアが変なこと言ってたな。
「変なこと?」
「ほら、海の底に穴空いてるとかなんとか」
「・・・・・言ってたな。そういや」
取り敢えずココアに聞いてみた。
「あ、それー? あの岩の下辺りにね、穴があるんだよー」
ココアはにゅーんと体を伸ばして砂浜から少し離れた場所にある海面から飛び出した岩を指す。泳いでいけそうな距離ではあるが、あの辺だとそこそこ深そうなので僕には潜れなさそうだ。
「行ってみる? まだ中調べてないけど」
「いや無理そうだしやめとくよ。2人は・・・」
なまけものとユウさんを見るとそれぞれ「俺も無理」「私にそれ聞く?」返される。まぁ骨だけのなまけものが泳げるわけないし、水がダメなユウさんに至っては論外だ。
「そう? 『アクアウォール』で包めば行けるんじゃない?」
「行けるか?」
ココアによると『アクアウォール』で海水を防げば球体の『アクアウォール』内に空気の空間ができるとのこと。
相変わらず汎用性が高いな。
『アクアウォール』については前スキル集が登場した時に調べたことがある。
半分程おさらいだが説明によると、このウォール系の魔法は普通の壁のように完全に防げるわけではなく、攻撃の威力を抑えられる程度で貫通はする。そのため威力の弱い攻撃なら防げるが、高威力だと貫通してダメージを受ける事がある。
だから今回の場合だと海水は入って来る筈だが・・・
「でも海水は水だから受け流せるの」
「・・・あ、そうなんだ」
よく分からないがどうやら大丈夫らしい。
「いやいや、中に入ったって俺らも突き抜けるだろ? 『アクアウォール』には乗れないんだからさ」
「ふっふーん。それもあたしにかかれば大丈夫! 見てて!」
ココアは「とうっ!」の掛け声とともにジャンプし空中で変形、舟の形になり着水。
「どお!?」
「「「おお〜」」」
拍手している間もココアはぷかぷかと海に浮かんでいる。これなら『アクアウォール』内でも舟になったココアに乗ればずっと中に居られる。
「よしっ、止めようか」
「そうね」
「まぁそうなるわな」
「あ、やっぱり?」
ただ残念ながら小さ過ぎる。
舟になったココアは僕とユウさんなら1人がやっとの大きさで、なまけものは絶対無理だ。そもそも僕らも重量的には無理な気がする。なんか乗った瞬間沈みそう。
「・・・でも浮くだけならポンタもできそうじゃない? ちょっとごめんね」
「・・・え? わっ!?」
急に言われ反応が遅れた。ユウさんに持ち上げられココアの横へ放り投げられる。いきなりに混乱が浅かったこともあり溺れることは無かった。
ただ浅かったせいで腹に地味なダメージ。
「・・・ふむ、・・・いけるかもな」
「いや無理だろ!!」
脱力し浮いている僕を見てなまけものが頷く。馬鹿野郎、乗ったら沈むだろうが!
大体僕に乗れるのココアだけだし。
「いやサーフィン的な感じで」
「絶対沈むわ! ・・・ん?」
海から上がる時に気付いた。
プライベートビーチ中心の反対側に誰かが4人立っている。姿的には人っぽいが・・・たまたま来ただけなのだろうか知らないが、用がありますと言わんばかりに全員こっちを凝視している。
ただ、プライベートビーチ内に入ろうとはしない。
「どした?」
「いやアレ。誰かいる」
「んん? あ、確かに」
こっちもなまけもの達と一緒に凝視する。しかし相手に動きはない。雰囲気からプレイヤーではなさそうだ。こちらの反応に対し全く動かないところから恐らくAI・・・冒険者だろう。
「どうする?」
「冒険者だったら負けてもプライベートビーチが取られることはないぞ」
「じゃあやるか」
僕らは戦うために彼らへと近付いた。
次回更新は明後日の予定です