165・プライベートビーチを攻められてみた②
魔法使いが倒されたことにより、4対3と有利になる。
「じゃあ次はそいつか」
「だな」
なまけものが狙いを定め、僕は目の前に居る双頭の犬にじりじりと近寄る。相手はどう攻めていいのか分からないのか、僕が近付いた分だけ後ずさりする。
「う、後ろから攻撃されても知らないぞ!」
「大丈夫。後ろには味方しかいないし」
「あれぇ・・・」
「いや、今それ言っても引っかかる奴居ないぞ・・・」
双頭の犬がさっきの僕と同じことをしてきた。恐らくよそ見した瞬間に攻撃でもするつもりだったのか・・・
どちらにせよそんな嘘に引っかかる奴なんて居ない。だって視界に君含めて3匹とも入っているんだから。
「? 誰も居ないじゃん」
「・・・ごめん。居たわ」
僕の真後ろに。
なまけものはキョロキョロしながら後ろを警戒している。恐らく有利になって緊張が解けてきているのだろう、戦ってる雰囲気ではない。
「もうちょっとやる気だせ」
「あ、すまん」
あっちでココアの援護があるとはいえ、2匹相手に一方的な戦闘をしているユウさん(AI)がいるんだからもうちょっと戦闘感をだな・・・
というかユウさん(AI)の戦闘ヤバい。普段のユウさんは武器を振るうだけだが、AIは足技や投げなども使用し相手の間合いに合わせて攻撃を繰り出しており、2匹に攻撃の隙を与えていない。援護のココア(AI)がすることなく、暇している程だ。
相手は頑張って躱してはいるものの『火舞台』でじわじわとHPを削られており、やられるのは時間の問題だろう。
下手したら僕らがこの双頭の犬を倒す前に終わるかもしれない。
「『咆哮砲』」
「あだっ!」
よそ見してたら攻撃された。軽く吹き飛びなまけものの前で着地する。
「やる気だせ」
「すみません・・・」
ジト目のなまけものに謝る。
緊張感が無くなっているのは僕も同じか。あっちはもう大丈夫そうなので、この犬を確実に倒そう。
「さっきと同じ?」
「でいいと思う」
「分かった」
なまけものが頷いたのを見て、僕は『縮地』を使用。双頭の犬には魔法使いと同じ道を辿ってもらった。
その頃にはユウさん(AI)側も相手を蹴り飛ばしてKOし戦闘終了。
AIの2人は戦闘終了と共に消えた。
僕となまけものはその場に座り込んでふぅ・・・とため息を吐く。
「焦ったわぁ」
「それな。今後は戦闘してると想定して転移が必要か・・・あいつらにも言っとかないとな。しかし今回は相手が弱くて助かったわ。あれが対人勢だったらやばかった」
「そうだな。弱いというかPvP慣れてない感じだったよな」
この海エリアまで来れているので初心者ではないはずだが、何処か慣れてない感じがした。弱いと言うのは彼らに悪いが、今回はおかげで助かった。
もし強い人だった場合、あっさりやられてたかもしれない。
さて、さっきの人達はどれくらいの経験値なのだろう。
確か経験値にボーナスつくんだったよな、レベル1くらい上がってないかな?
そう思い、自身のレベルを確認したところ、レベルは2も上がっていた。
「レベル2上がった」
「マジで!? ・・・あ、俺3も上がってるわ」
「マジで!?」
思った以上に上がっている。さっきの戦闘のみで・・・な訳ない。そもそも40過ぎからはレベルが上がりにくくなり、50からはほぼ上がらないと聞いている。なので上がって欲しい願望はあったが正直1も上がらないだろうと思っていた。
が予想を通り越して2も上がっている。慌てて2人してプライベートビーチの戦闘ログを調べた。そこには画面いっぱいにログが残されており、既に古いのから消されているようだ。
「「・・・何で?」」
僕となまけものは互いに顔を見合わせる。
当然だが、なまけものの顔を見ても分からなかった。
取り敢えず、適当な戦闘ログを一つ選び、内容を再生。このログではオフライン時の戦闘内容が記録され、見れるようになっているようなので見てみた。
記録ではドローンで撮ったようなカメラワークの中、戦闘が行われる。相手は誰か知らない4匹パーティで僕らに対しそれぞれ1対1で戦っている。
「それ記録されてたやつ?」
「そう」
なまけものが画面を覗き込んでくる。既に記録ではユウさん(AI)が相手を戦闘不能にし、続いてココア(AI)、なまけもの(AI)が相手を倒し、最後は苦戦していたポンタ(AI)の相手を4匹でフルボッコにして終わる。
何で僕だけ苦戦するんだと内心で悲しくなる。
他にも数回違うログを見てみても、結果は大体同じだった。
どうやらレベルが2も上がったのは、この調子でかなりの回数の戦闘をしていたからのようだった。
次回更新は明後日の予定です