164・プライベートビーチを攻められてみた①
~日曜日 昼~
「お!」
「ん? あ、よっす」
「おー」
ログインがなまけものと被った。
「今日は何するんだ?」
今日は一緒に行動する約束は無い。なまけものは「うーん」と悩んでから・・・
「特に何か予定ってのは無いな。プライベートビーチ行ってから取り敢えず墓場でも行くわ」
「プライベートビーチ? ああ、どうなってるか確認にか」
なまけものは一日放置したプライベートビーチがどうなっているのかが気になるのだろう。
昨日ログイン中は誰も来なかったらしいので、あれから半日ちょっと経った程度で何か変わっているとは思えないが・・・
「あっそうだ、その後墓場エリア一緒に行かね?」
「行かない」
「何だよ・・・まぁ良いや、あの場所的に奪われてはいないと思うけどなぁ・・・」
「そうだろうけど、あの龍馬のパーティが来てるかもよ」
「えぇ・・・。じゃあ奪われたらまたあれと戦わなきゃならんのか・・・」
なまけものは嫌そうだ。
まぁもう対処方法は分かってるんだから昨日のようなことにはならないと思うし、そこまで嫌がらなくても大丈夫だろう。
というか奪われたら奪い返さないといけないのか?
「そうなるだろうな。ココアが気に入ってるから取られてると怒りだすかもしれん」
「最近ココアに甘くね?」
「そうかな?」
「そんな感じはする」
「マジかぁ?」とぽりぽり頭を掻きながらなまけものは首を傾げる。どうやら本人に自覚はないらしい。
まぁ奪い返すのは別にいいけどね。
プライベートビーチ持ってて損はないし、メリットもあると言えばある。あそこは人が来ないのであまり意味ないが。
「あ、奪われては無いな」
「え? そう?」
「ああ。転移できるぞ」
「お、マジだ」
海エリアの一角にある転移装置。そこに入ると転移先が表示された。という事は転移先であるプライベートビーチが無事だという事だ。
もし奪い返すとなると2人で挑む必要があるのでちょっと不安だったが、ひとまず安心だ。
「んじゃ、先行くな」
「おい、待てよ!」
「わははは・・・」
笑うなまけものを追ってすぐさま転移。
同エリアだからか一瞬で転移が完了し・・・
「『デスファング』!」
「うぉおおお!?」
変わった視界いっぱいに大きな口を開けた魔物が映った。
慌てて『縮地』で回避。何も考えていなかったので上空十数mまで跳び上がり何が起こったのをかを確認。
複数の知らない魔物を見たことで状況を理解する。
どうやら戦闘中に転移したらしい。
元々AIが代わりに行動してくれてたらしいが、僕となまけものが転移してきたことでAIが消えて戦闘に参加しているようだ。
眼下ではAIのユウさんとココア、そして同じく戦闘に参加したなまけものが見える。敵は4匹、ユウさんに近接攻撃をする2匹、なまけものに魔法使い1匹、さっき僕が避けた双頭の魔物が1匹だ。ココアはユウさんの上で回復に専念・・・いや攻撃してるな。
全体の状態を確認してなまけものの側に着地。なまけものは転移直後に魔法をくらったせいで既に3割ほど削れている。
「タイミングミスったな」
「ああ。というかこういう時って転移できないようにしとけよな。ビビったわ」
「そういう割には『縮地』で避けてたな」
「殆ど反射的に使っただけなんだけどね・・・」
当たらなかったのは運が良かっただけだろう。
僕は跳んで見た内容を伝え方針を決める。
「とりま魔法使い潰そう。そうすればなまけものはユウさん達の援護に回れるし」
「あの双頭犬はどうする?」
「一旦放置。魔法使い速攻倒したら僕が相手する。『縮地』で隙作るから、魔法頼む」
「りょ」
魔法使いは既にダメージを受けているようでHPがそこそこ減っている。恐らくなまけものの魔法一撃で倒せるかもしれない。もしダメでも一撃加えれば確実だろう。
それに比べ、双頭の犬のHPはほぼ満タン。動きも速いのでちょこちょこ避けられると無駄に時間がかかりそうだ。一旦放置してなまけものの2人係で倒した方がいいかもしれない。
とにかく早く倒してユウさん達の援護に向かわなければ。
「『咆哮砲』」
双頭の犬は僕を狙って再度攻撃してくる。
恐らく相手の魔法使いがなまけものを倒すまで僕を牽制するつもりなのだろう。攻撃を当てようとしてるというより、攻撃を見せて気を引いてる感じがする。
「どうでもいいけどさ、僕ばっかり見てると後ろから攻撃されるぞ?」
「!?」
相手の後ろを見るように問いかける。
信じやすいタイプなのか、相手はあっさりと引っかかり後ろを向いた。
目を離したその間に僕は『縮地』を使いなまけものを狙っている魔法使いへ体当たりする。魔法使いは急な衝撃で悲鳴と共に大きく転がる。
「きゃあっ!?」
あ、女性なのか。
なんか子供っぽい声だけど何歳だろう。あ、そんなことより追撃・・・は間に合わないか。
転がった魔法使いが立ち上がる前に地面が光る。『サンダー』が来ると分かった僕は『火球』を溜めつつその場から離れる。直後『サンダー』が魔法使いへと落ちた。
「きゃあああ!」
「マキちゃん!!」
双頭の犬が魔法使いを呼ぶ。こっちの声も子供っぽい。
魔法使いのマキちゃんは『サンダー』をくらっても生きていたので、『火球』を放り込んでご退場頂いた。
「さて、残り3匹」
転移直後は焦ったが、思ったよりも相手が弱い。
何とかなりそうだ。
次回更新は明後日の予定です